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» 2021年09月13日 14時00分 公開

他社比50倍の高速通信を実現、東芝グループが持つ量子暗号通信技術の強み量子コンピュータ(1/2 ページ)

東芝デジタルソリューションズは2021年8月19日、量子コンピュータ関連技術をテーマとした「東芝オンラインカンファレンス2021 TOSHIBA OPEN SESSIONS」を開催した。本稿では特に、東芝グループが保有する量子暗号通信技術に焦点を当てた講演の内容を抜粋して紹介する。

[池谷翼,MONOist]

 東芝デジタルソリューションズ(TDSL)は2021年8月19日、量子コンピュータ関連技術をテーマとした「東芝オンラインカンファレンス2021 TOSHIBA OPEN SESSIONS」を開催した。本稿では特に、東芝グループが保有する量子暗号通信(QKD)技術に焦点を当てた講演の内容を抜粋して紹介する。

光子の性質を利用し高安全性実現

 QKDは現在、一般的な暗号鍵を用いた暗号化通信と比較して、第三者による盗聴のリスクを抑えられると期待されている。

 通常のネットワーク通信では、送信者が受信者に情報を送る際、暗号鍵を掛けてメッセージの暗号化を行う。この際に送信者は受信者にエンコードに使ったものと同じ暗号鍵を送信して、受信者はそれを用いて文章をデコードし、解読する。この暗号鍵自体に暗号アルゴリズムを適用することで、鍵を安全に受け渡すことが可能となる。第三者が暗号鍵を盗むには膨大な計算を行う必要があり、そのため現時点では、こうした暗号化の手法は実質的に安全性が高いとされている。

 ただしこの手法では、将来的に量子コンピュータが実用化された場合、計算量の問題がクリアされてしまい、暗号アルゴリズムが簡単に解かれるリスクがある。これに対してQKDは量子力学の原理を用いて送受信間で暗号鍵の受け渡しを行うことで問題を解決しようとする。

現在の暗号通信方式との比較※出典:TDSL[クリックして拡大]

 QKDで受け渡しを行う暗号鍵(量子暗号鍵)の抜き出しは非常に困難であることが理論的に証明されている。QKDでは通信において光の再訪単位である光子を用いるが、光子には「それ以上分割できない」「光子状態は完全にコピーできない」という2つの性質があり、これらを利用することで高い安全性を実現している。

 「それ以上分割できない」という性質は盗聴行為自体の防止につながる。第三者が光子に乗せた暗号鍵情報を盗むと、通信に用いられていた光子の数は減少する。このため、光子の数から盗聴が行われていることが判定できる。

 ただ、第三者が暗号鍵を盗むと光子は減少するものの、それと同数の光子を追加で送信することで盗聴の痕跡を隠すケースも考えられる。しかし光子には「光子状態は完全にコピーできない」という性質がある。このため、減少した光子と同じ状態の光子を用意することはできず、光子の状態をモニタリングすることで盗聴を検出できることになる。

QKDでは光子の性質から盗聴が難しい※出典:TDSL[クリックして拡大]

 TDSLが採用する量子暗号通信方式の「BB84プロトコル」では、光子の偏光種類(基底)によってエンコードを行う。これは、光子に縦横あるいは斜めの偏光種類を与えて、それぞれに0か1のビット値を割り当てるというものである。ポイントとなるのが、送受信時に基底がランダムに決定される点だ。受信者は送信者と基底が一致した場合のみ正しいビット値を受信し、それらを量子暗号鍵として採用する。しかし、送受信の途中で光子を盗聴した第三者は、送信時点での基底が分からない。仮にランダムに選択した基底が偶然送信時のものと一致しても、ビット誤りが発生するため、誤り率の変化から高確率で盗聴を検出できる。このため、全体として高い安全性を持つQKDが実現可能だ。

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