特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

製造現場に広がる「画像」や「映像」の活用、何に生かすべきかいまさら聞けないスマートファクトリー(12)(1/4 ページ)

成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第12回では、スマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころについて紹介します。

» 2021年09月15日 11時50分 公開
[三島一孝MONOist]

 スマートファクトリー化は製造業にとって大きな関心事であるにもかかわらず、なかなか成果が出ない課題を抱えています。本連載では、スマートファクトリーでなかなか成果が出ないために活動を縮小する動きに危機感を持ち、より多くの製造業が成果を得られるように、考え方を整理し分かりやすく紹介しています。第12回となる今回は、スマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころについて紹介します。

本連載の趣旨

 本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」とし、スマートファクトリーで成果がなかなか出ない要因を解き明かし、少しでも多くの製造業がスマートファクトリー化で成果が出せるように、考え方や情報を整理してお伝えする場としたいと考えています。単純に解説するだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じてご紹介します。

架空企業の背景

 従業員300人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「第4次産業革命を進める」と指示され途方に暮れます。そこで、第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに訪問し、さまざまな課題に立ち向かいます。


本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

前回のあらすじ

 さて、前回のおさらいです。第11回の「スマート工場化を進めるのは現場の専門家? それともデジタル技術の専門家?」では、スマートファクトリー化を進める中で多くの製造現場が頭を悩ませる現場の人員面での体制作りについてお伝えしました。

 「デジタル技術への知見」と「製造技術への知見」を併せ持つ人材が非常に少ない中で、スマートファクトリー化を進める上で、多くの製造現場が頭を悩ませているのがこの点だといえます。現場側の生産技術の専門家は、先進デジタル技術への知見がなく、一方でデジタル技術の専門家は、製造現場に対する理解がありません。そのため、デジタル技術を正しく活用し、製造現場での成果を生み出すことが難しい状況が生まれています。

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現場の専門家は先進デジタル技術のことが分からない、デジタル技術の専門家はモノづくりの基本や製造技術のことが分からないということで、それぞれの考え方や言葉まで違って、話が通じないんです


 これをクリアするためには、両方が分かる人材を育成する必要があります。実際にこうした人材育成を進める動きは、企業内や大学、または企業連携などさまざまな形で生まれてきつつあります。しかし、こうした人材育成で十分な数の人材を確保できるようになるまではしばらく時間がかかります。そこですぐに始められる座組みとして印出さんは“三位一体”を訴えていましたね。

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現場の専門家とデジタル技術の専門家に加えて、これらを交通整理する推進役の人を加えて、3つの役割の人を組み合わせて進めるということよ。


 製造現場とデジタル技術、それぞれの専門家同士が対等の形で組み合わせても、それぞれの主張がぶつかり合う場合がどうしても多くなってしまいます。そこでこれらを円滑に進めるために、両者の考え方をすり合わせ、言葉などを翻訳しながら推進する調整役としての役割を設置するところが、成功企業の中では増えてきています。企業としては、組織としてこうした仕組みを作り、そしてスマートファクトリー化を積極的に進める「推進役」を積極的にサポートするということも、スマートファクトリーの価値を定着させるのに必要だということでした。


 さて、今回は、スマートファクトリー化を進める中で活用が広がっている「映像」「画像」の使いどころについて紹介します。

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