米国の医療DXを支えるブロックチェーンと分散台帳はオバマ政権時代からの積み重ね海外医療技術トレンド(75)(3/5 ページ)

» 2021年09月17日 10時00分 公開
[笹原英司MONOist]

FDAが主導する医薬品サプライチェーン管理の効率化・自動化

 HHSの部局レベルで、ブロックチェーン適用に向けた独自の取り組みを行ってきたのが食品医薬品局(FDA)である。その起点となったのが、偽造医薬品対策を目的として、2013年11月27日に制定された医薬品サプライチェーン安全保障法(DSCSA)だ。同法に基づいてFDAは、医療用医薬品に商品コード、ロット番号、有効期限、ランダム番号を含む2次元バーコードを表示し、医薬品製造業者から、再包装業者、卸売業者/サードパーティーロジスティクス・プロバイダー、医療機関・薬局に至るまでのサプライチェーンの各段階で、トレーサビリティーを電子的に管理するための取り組みを行っている。

 同法が適用される取引パートナー(Trading Partner)は、以下の通りである。

  • 製造業者(Manufacturers)
  • 再包装業者(Repackagers)
  • 卸売業者(Wholesale Distributors(WDDs))
  • 調剤者(Dispensers)
  • サードパーティーロジスティクス・プロバイダー(Third-party logistics providers (3PLs))

 DSCSAでは、医薬品の受け渡しで所有権が移転するごとに、以下のようなデータを次の所有者に提供することが求められる。

  • 取引情報(TI):製品名、規格用量、商品コード、ロット番号、取引日、取引に関わった両者の名称と住所など
  • 取引履歴(TH):製造業者から現在までの各取引情報の記録(紙または電子媒体)
  • 取引明細(TS): 所有権を譲渡する事業主体の記述(例.DSCSAで認証された事業体であること、製品を認証済事業主体より受領したことなど)

 なお、データ保存期間は6年となっている。

 次に図2は、DSCSAのパスを示したものである。

図2 図2 医薬品サプライチェーン安全保障法(DSCSA)のパス(クリックで拡大) 出典:Food and Drug Administration (FDA) 「FDA Drug Topics: Enhanced Drug Distribution Security 2023 and Beyond」(2021年6月1日)

 2014〜2015年までに、医薬品卸売業者と3PLを対象としたFDAへの報告制度をスタートさせ、2015年までに、認定取引パートナーを対象とする製品トレーサビリティーおよび認証の仕組みを導入し、2017〜2018年までに、製品識別(シリアライゼーション)の仕組みを導入し、2019年以降、製品認証(包装単位まで下げる)の仕組みを導入し、2023年までに、電子的で相互運用性のあるシステム(製品トレーサビリティーを包装単位まで下げる)の導入を義務化する計画を提示している。また、FDAは、医薬品卸売業者および3PL のライセンスの連邦基準を作成するとしている。

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