2021年7月の新車生産は前年割れ、半導体不足と東南アジアからの部品供給難で自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

半導体など世界的な部品供給の混乱による自動車生産への影響が月を追うごとに広がっている。日系乗用車メーカー8社が発表した2021年7月のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で生産活動が停滞した2020年7月に比べても減少傾向を示すなど、深刻な状況を物語っている。

» 2021年09月24日 06時00分 公開
[MONOist]

 半導体など世界的な部品供給の混乱による自動車生産への影響が月を追うごとに広がっている。日系乗用車メーカー8社が発表した2021年7月のグローバル生産実績は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で生産活動が停滞した2020年7月に比べても減少傾向を示すなど、深刻な状況を物語っている。

 半導体不足の他、東南アジアでCOVID-19の感染が再拡大したことによるサプライチェーンへの影響も大きい。これを受けて自動車メーカー各社は相次いで稼働調整を実施し、足元の8月、9月では減産規模が拡大している。一方でコロナ禍からの経済回復で北米をはじめとした主要市場では軒並み自動車需要が高まっており、いかに供給台数を確保できるかが喫緊の課題となっている。

 7月の8社合計のグローバル生産台数は前年同月比2.6%減の195万4899台と、6カ月ぶりに前年実績を下回った。ここ数カ月はコロナ禍で生産調整を余儀なくされた前年から大幅なプラスが続いていたものの、半導体不足と東南アジアからの部品供給難というダブルパンチにより、稼働調整していた2020年7月を割り込む事態となった。国内生産は同2.2%増と5カ月連続のプラスだったが、海外生産は同5.0%減と6カ月ぶりに減少した。前年ですでに生産の回復が始まっていた主力市場の北米や中国で、減少幅が目立った。

 また、7月はメーカーによって温度差が大きいことも特徴だ。海外での稼働調整を余儀なくされているホンダや日産自動車などは大幅に台数を落とした半面、半導体不足の影響を抑制したトヨタ自動車や、インド市場で生産拡大を図るスズキ、東南アジアで回復している三菱自動車は、前年実績を上回った。

2021年7月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 309,138 463,997 145,867 159,538 773,135
21.8 6.1 ▲ 2.4 2.9 11.9
ホンダ 63,302 260,815 111,974 98,436 324,117
9.1 ▲ 28.7 ▲ 22.8 ▲ 45.0 ▲ 23.5
日産 37,411 222,925 60,753 97,192 260,336
20.0 ▲ 20.9 ▲ 37.3 ▲ 24.7 ▲ 16.8
スズキ 66,070 198,082 - - 264,152
▲ 31.6 50.1 - - 15.6
ダイハツ 82,119 28,201 - - 110,320
▲ 4.4 ▲ 2.6 - - ▲ 4.0
マツダ 55,741 24,779 12,511 9,406 80,520
▲ 19.3 ▲ 23.6 14.4 ▲ 48.2 ▲ 20.7
三菱 27,476 45,095 - 3,632 72,571
53.1 50.1 - ▲ 48.3 51.2
スバル 47,514 22,234 22,234 - 69,748
▲ 22.7 ▲ 8.0 ▲ 8.0 - ▲ 18.5
合計 688,771 1,266,128 353,339 368,204 1,954,899
2.2 ▲ 5.0 ▲ 17.2 ▲ 24.6 ▲ 2.6
※上段は台数、下段は前年比増減率。単位:台、%
※北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

トヨタ

 メーカー別に見ると、トヨタの7月のグローバル生産台数は、前年同月比11.9%増の77万3135台と11カ月連続で増加した。販売も好調で、海外販売が7月として過去最高を更新し、グローバル販売も過去最高となった。

 海外生産は前年同月比6.1%増の46万3997台と11カ月連続のプラス。2019年7月との比較でも4.4%増と好調だ。地域別では、主力市場の北米は「ハイランダー」などライトトラックの他、「カムリ」などのセダンも需要は堅調に推移しているものの、半導体不足の影響により同2.4%減と5カ月ぶりに前年実績を下回った。アジアは、COVID-19の感染再拡大によりロックダウンが行われたマレーシアやベトナムで稼働停止を余儀なくされたが、インドネシアやタイ、フィリピン、インドなどが大きく伸長。北米に並ぶ規模の中国も同2.9%増と4カ月ぶりに増加し、日本メーカーで唯一プラスを確保した。

 その結果、アジアトータルでは同9.1%増と11カ月連続の増加となった。欧州も半導体不足の影響で減産した一方、フランスが前年同月に新型「ヤリス」への切り替えを実施したことの反動で約2倍となり、欧州トータルでは同0.4%増だった。

 国内生産も伸びを見せた。同21.8%増の30万9138台と5カ月連続のプラスだった。国内市場向け「ハリアー」「ヤリス」といった新型車の販売好調に加えて、前年7月に生産調整を実施したことも増加要因となった。ただ、2019年7月比では5.3%減にとどまった。

ホンダ

 ホンダの7月のグローバル生産台数は、前年同月比23.5%減の32万4117台と2カ月連続のマイナスとなった。8社のグローバル生産では最もマイナス幅が大きい。中でも海外生産が不調で、同28.7%減の26万815台と2カ月連続で減少。東南アジアでの感染拡大による部品供給難や半導体不足が響いた格好だ。内訳は、主力市場の北米が同22.8%減と2カ月連続のマイナス。中国は半導体不足の影響が大きく同45.0%減と3カ月連続で減少し、北米の生産台数を下回った。その結果、中国を含むアジアトータルでも同34.3%減と低迷し、2カ月連続のマイナスとなった。

 一方、国内生産は、同9.1%増の6万3302台と2カ月連続でプラスを確保した。半導体不足の緩和により6月から稼働率を高めたことが増加につながっている。ただ、2019年7月との比較では2割減少しており、厳しい状況は脱していない。なお、国内生産も東南アジアからの部品供給不足を理由に、8月から稼働停止を余儀なくされており、ホンダは8月と9月合計で当初計画より6割減らすことを公表している。その結果、受注が好調な新型「ヴェゼル」では、人気のハイブリッドモデルなど一部グレードの納期が1年以上に長期化するなど、国内販売に深刻な影響をもたらしている。

日産

 日産の7月のグローバル生産は、前年同月比16.8%減の26万336台と8カ月ぶりに前年実績を下回った。このうち海外生産が同20.9%減の22万2925台と8カ月ぶりのマイナス。半導体不足の他、米国や中国で新型車への切り替えを実施したことが減少につながった。国別では米国が同59.3%減、英国が同46.3%減、中国が同24.7%減だった。

 国内生産は同20.0%増の3万7411台と6カ月連続のプラス。国内市場向けの新型車「ノートオーラ」の受注好調に加えて、「ローグ」や「パトロール」など輸出も伸長した。ただ、半導体不足も深刻で、コロナ禍前の2019年7月との比較では半数にとどまった。

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