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» 2021年10月04日 06時00分 公開

トヨタ系、日産系、ホンダ系……「ケイレツ」の今とこれからいまさら聞けない自動車業界用語(17)(1/3 ページ)

今回は日本自動車業界の特徴の1つ、「ケイレツ」について解説します。

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今回は日本自動車業界の特徴の1つ、「ケイレツ」について解説します。


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 日本自動車業界の発展を支えてきた自動車メーカーと部品メーカーの関係「ケイレツ」は、100年に1度の変革期、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の中で新しい局面を迎えています。これからも変わらずにケイレツを維持していくのか。将来像を含めて、説明します。

「ケイレツ」とは何か

 ケイレツとは自動車業界における自動車メーカーを頂点にした垂直統合型の企業間関係です。みなさんも自動車の部品メーカーで「トヨタ系」「日産系」「ホンダ系」といった区分を聞いたことがあるのではないでしょうか。自動車メーカーと部品メーカーが緊密な関係を保ち、特定の部品については系列内の企業に長期で継続的に発注し、新規開発についても共同で進めてきました。このように、日本の自動車業界は長年ケイレツを重視し、発展を遂げてきました。

 一方、欧州では「ボッシュ」「ZF」「コンチネンタル」などのメガサプライヤーが力を持っています。彼らが自動車メーカーに対して車両やプロジェクト、部品単位で提案を行い、受注を得ていく「水平分業モデル」での自動車製造プロセスが主流になっています。

ケイレツの強みとは何か

 ケイレツでは自動車メーカーが部品/システムの仕様を決定し、系列内の部品メーカーに割り当て、開発/生産を進めます。部品メーカーからすると、中長期で安定した受注が確約されるため、見通しが立てやすい中で研究開発できるメリットがあります。部品メーカーがリスクをいとわずに、早い段階から参画し、開発を進めることで、部品/車両の品質を高め、結果、日本の自動車が持つ高い競争力の源泉となってきました。

 また自動車は安全が求められる製品です。部品単体だけでなく、車両に組み付けた際に部品同士で異常が発生しないかが重要になります。自動車メーカーが主導的な立場となり、ケイレツでつながる部品メーカー間で調整し、「すり合わせ」型の開発/検証を行うことで、製品の品質を向上させてきました。

 ケイレツの関係はこうした製品開発の場だけではありません。系列内では「ゲストエンジニアとして人員を派遣し、それぞれの知見を共有する」「生産の現場ベースで、交流を深め、カイゼンを進め生産性を高めていく」といった交流なども行われており、大きなメリットです。

 例えば、トヨタ自動車では「自主研」という活動があります。工場の現場で多様な部門の人が参画し、テーマや期限を決めてカイゼンに取り組みます。この活動はトヨタだけでなく、仕入れ先の系列部品メーカーも対象にして行われます。トヨタ生産方式の導入や現場での細かな作業改善ノウハウの共有をすることで、部品メーカーの生産性向上に役立っています。

ケイレツが持つ弱点とは

 一方でケイレツは問題点や限界を指摘されています。ケイレツでは部品の発注先がほぼ決まっているため、競争が発生しにくく、結果として価格が下がらずに、商品全体の競争力も低下してしまいます。また、部品メーカーの経営が系列先の自動車メーカーに依存するといった課題もあります。

 CASEの技術革新が進む中で部品構成が大きく変わります。また現在も車両のプラットフォームの共通化が進み、これに合わせて部品の共通化が進められています。電動化によって部品そのものがなくなってしまったり、共通部品の採用が見送られたり……といった事態が起これば、部品メーカーの経営が一気に傾く危うさがあります。

 また、自動車部品メーカーは、補給も含めると長期間にわたって部品を供給し続ける義務があります。部品メーカーが廃業してしまうと、自動車メーカーも部品を調達できません。自動車メーカーも部品単体での収益性で仕入れ先を決定するのでなく、部品メーカーの経営状況も考慮して、継続的に納入可能な仕入れ先を選定する必要があります。このように、自動車メーカーは構造上ケイレツのピラミッドの頂点として、仕入先の経営状況、そしてそこで働く人の雇用全体に対して責任を負うことになります。仕入先の雇用を守ることを優先した結果として、変革が遅れ、電動化を含めた世界の変化のスピードについていけなくなるのではないかという批判もあります。

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