特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
インタビュー
» 2021年09月28日 10時00分 公開

新CEOはユーザー企業出身、日立の産業・流通BUは「際」を乗り越えられるか製造業×IoT キーマンインタビュー(1/3 ページ)

デジタルソリューション群「Lumada」が好調な日立製作所だが、製造業に向けたLumadaの事業展開と最も関わりが深いのがインダストリーセクター傘下の産業・流通BUである。この産業・流通BUのCEOに就任した森田和信氏に、今後の事業展開の構想などについて聞いた。

[朴尚洙,MONOist]

 2020年春から続くコロナ禍による社会への影響が長引く中で、国内製造業各社は業績回復に向けた取り組みを急ピッチで進めている。中でも日立製作所(以下、日立)は、これまで展開してきたデジタルソリューション群「Lumada」が好調で、コロナ禍を機に求められているDX(デジタルトランスフォーメーション)のニーズに応えることでさらに業績を伸ばす勢いだ。

 日立の中でも、製造業に向けたLumadaの事業展開と最も関わりが深いのがインダストリーセクター傘下の産業・流通BU(ビジネスユニット)である。2021年4月、この産業・流通BUの新たなCEOに執行役常務の森田和信氏が就任した。これまで、インダストリーセクター内を横串で通すための組織であるインダストリー事業統括本部でCSO(Chief Strategy Officer)を務めてきた森田氏だが、これから産業・流通BUのトップとしてどのような事業展開を構想しているのか。これまでのキャリアなどを含めて聞いた。

本連載の趣旨

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ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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ユーザーだったからこそ日立に期待されていることが分かる

MONOist まずお聞きしたいのがこれまでの経歴です。大学卒業後に三菱油化に入社してから、2004年3月に日立に中途入社しています。2004年当時となると、大手製造業から大手製造業への転職というのはあまり一般的ではなかったと思うのですが、なぜ日立に入社しようと考えたのでしょうか。

日立 執行役常務 産業・流通BU CEOの森田和信氏 日立 執行役常務 産業・流通BU CEOの森田和信氏

森田氏 三菱油化(1994年に三菱化成と合併して三菱化学となり、現在の三菱ケミカルに至る)では、プラントの計測制御エンジニアとして、DCS(分散制御システム)やプロコン(プロセスコンピュータ)を使って、現場でのプラント最適化に従事していた。その当時の立場としては、日立の製品やサービスを使うユーザーだった。

 現在もそうだと思うが、国内化学メーカーのプラント制御技術は自動化を中心として最先端を進んでいる。当時も、多変数モデルをはじめとするモデル予測制御を導入するだけでなく、今やAI(人工知能)技術として当たり前になっている機械学習の活用も検討していたほどだ。しかし、化学品という上流素材を製造するプラントで行うPA(プロセスオートメーション)で接する技術の範囲はある程度限られてしまう。裾野にはさまざまな技術の広がりがあり、エンジニアとしてはそれらに取り組んでみたいという気持ちが強かった。そこで、ユーザー側とは異なる幅と深さで技術に取り組めるであろうメーカーへの転職を考え、日立に転職することを決めた。日立に入社した際には、情報制御システム事業部に配属され、今や日立のスマート工場のフラグシップといえる大みか事業所(茨城県日立市)に勤めることになった。

MONOist そこからは産業制御システム関連をはじめ現在の産業・流通BUに関わる事業に従事していますが、2019年4月〜2021年3月はインダストリーセクター内での連携を推進するための組織であるインダストリー事業統括本部のCSOを務めました。このCSO職ではどのようなことを手掛けてきたのでしょうか。また、産業・流通BUのCEOになってどのように業務内容が変わるのでしょうか。

森田氏 インダストリー事業統括本部のCSOとしてやるべきことは、インダストリーセクター全体としての方向性の打ち出しになる。2020年度末までの数年間、インダストリーセクタートップの青木(編注:日立 代表執行役 執行役副社長 インダストリー事業統括本部長の青木優和氏)とともに「際(きわ)を乗り越えるトータルシームレスソリューション」というコンセプトで事業展開を進めており、この方向性には手応えを感じている。

 これまでつながっていなかった分野がつながろうとするとき、そのはざまとなる「際」で必ず問題が発生する。日立は、この「際」で発生する問題について、顧客との協創で生み出したLumadaをはじめとするデジタル技術によって解決できる。そして、この「際」のつなぎ方についても、現場と経営の「際」をタテにつなぐ、サプライチェーン上の業務、企業の「際」をヨコにつなぐ、オープンイノベーションで「つながる場」(協創の場)を提供し、異業種の「際」をつなぐという3つを推進し、これらを基にトータルシームレスソリューションを提供している。

「際」を乗り越えるトータルシームレスソリューションのイメージ 「際」を乗り越えるトータルシームレスソリューションのイメージ[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 このコンセプトの基になっているのは、私自身がかつて日立のユーザーとして感じていた、日立が提供している製品やサービスとユーザーの期待感のギャップにある。日立は、縦割り組織の中で個別に事業を最適化しながら製品やサービスを提供しているが、実はユーザーの期待としてはそこからさらに広がりがあるのではないか、というところにあった。事業と事業の壁、日立の中の「際」をどう乗り越えてつなげていくかが重要であり、これができればユーザーの期待に応えられる、そこにポテンシャルがあると考えた。

 現在は、トータルシームレスソリューションに関連する実績も増えており、営業サイドも手応えをつかみつつある。顧客の要望は変化しており、内輪の理屈を前提とするような従来の体制ではダメなことが分かった。そしてこれからは、産業・流通BUのCEOとして事業目標を掲げて、CSOのときに策定したこのコンセプトが正しいことを証明する立場になる。

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