「人口減による経済停滞」は本当か? 自己実現型停滞から脱するために必要なもの「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(8)(1/5 ページ)

苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第8回は、日本の製造業にとっての大きな課題とされている「人口減少」について、ファクトを共有していきます。

» 2021年10月04日 11時00分 公開

 統計データという事実(ファクト)から、中小製造業の生きる道を探っていく本連載ですが、今回は第8回となります。この連載では、われわれ中小製造業がこの先も生き残っていくために何が必要かを見定めていくために、以下の流れで記事を進めています。

  1. 日本経済の現状を知る
  2. その中で起きている変化と課題を把握する
  3. あるべき企業の姿を見定める
  4. 今後考えていくべき方向性を共有する

 ここまで見てきたように、「日本経済の現状」を平均給与などの主要な経済指標で見ると、1990年代には最先進国の一角にありましたが、今では「凡庸な先進国」にまで後退しています。

 「変化のポイント」として、連載の第5回第6回では、日本は「物価」が停滞していて、長期的に見ると「為替」が円高に推移しているという点について紹介しました。その中で、1990年代に国際的な「物価水準」の極めて高い時期があり、国内の物価停滞と共に、徐々に低下していく「相対的デフレ期」とも呼べる状況であることが分かりました。日本は1990年代の経済が強く物価の高い国から、長い停滞を経て現在は凡庸で中程度の物価の国へと立ち位置を変化させたということになります。

 また、第7回でも触れた通り、「貿易」については、日本は輸出も輸入も先進国の中では極めて少ない水準で「内需型経済」であることを確認しました。その背景には「日本型グローバリズム」とも呼べるような、流出に偏った日本特有の経済のグローバル化も影響していることが分かりました。

 さて、今回はこれらの前提を踏まえ「内需型」への影響が大きい人口の問題を取り上げたいと考えています。日本は「少子高齢化」が進み、人口が減っていくと予想されています。日本の経済停滞の主因を、この少子高齢化や人口減少に求める意見も多いようです。この「人口の変化」についてファクトを共有していきたいと思います。

人口が緩やかに減少する日本

 日本の経済が停滞するのは「少子高齢化により人口減少が目に見えており、市場が拡大しないから当然だ」という意見も多いようです。まずは、日本の人口について、現在はどのような状況なのか、ファクトから見ていきましょう。

 図1が日本の人口の推移です。2018年までは実績値、2019年以降は推定値となります。緑色が20歳未満の若年人口、青が20〜64歳の生産年齢人口、赤が65歳以上の高齢人口を示します。

photo 図1 日本の人口推移(クリックで拡大)出典:「OECD統計データ」を基に筆者が作成

 日本の総人口は2008年をピークとして、既に減少局面に入っています。内訳を見てみると、若年人口が減少し、高齢人口が増加していることが分かります。2019年以降は、高齢人口は一定水準で推移し、若年人口と生産年齢人口が徐々に減少していくと推定されています。現在のところ日本の総人口は1億2600万人程度ですが、2050年には1億人前後まで減少すると考えられています。

 表1に具体的な数値をまとめてみました。

photo 表1 日本の人口(クリックで拡大)出典:「OECD統計データ」を基に筆者が作成

 2018年に65歳以上の高齢人口は28.1%ですが、2050年には37.7%にまで増大していると見られます。一方で、生産年齢人口は、55.0%から47.8%に変化するという推定です。今後は約30年かけて総人口が2割減る見通しとなっていますが、その内訳を見れば少子高齢化がさらに進むことになります。

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