「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

「幸せの量産」に向けて、自動運転からウーブンシティーに広がるトヨタの試み自動運転技術(2/3 ページ)

» 2021年10月05日 06時00分 公開
[長町基MONOist]

トヨタが考えるレベル3以上の自動運転とは

 自動運転技術の開発にはMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)向け車両と、個人所有車(POV、Personally Owned Vehicle)の2つのアプローチ方法がある。MaaSではコストを下げるために、ドライバーが不要な無人運転が求められている。これが、MaaS向けの車両ではレベル3を飛ばしてレベル4から自動運転を目指す理由となっている。

 個人所有車の場合、レベル4を実現するためには現時点で100万円程度の追加コストが必要となるという。これでは搭載できるクルマが限られ、市場で普及させることができず、交通事故を無くすという本来の目的を達成することができない。また、たとえレベル3の自動運転であってもブレーキやステアリングで冗長設計が必要となり、コストが高くなる。そこで、トヨタ自動車はレベル2からスタートして徐々に高度化し、コストの低減を図りながらレベル3以上の自動運転の実現につなげる。

イーパレットはMaaS専用車両として東京オリンピック・パラリンピックの選手村でも走行した[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

 個人所有車の自動運転がレベル2からレベル3以上に高度化する際に難しいのは、システムからドライバーへ運転を交代する方法だ。レベル4の場合、乗員には運転責任がないため眠っていてもよいのだが、走行できる周辺環境条件が限定されている。全ての周辺環境の条件をカバーできればレベル5の自動運転となる。

 レベル3の自動運転も作動できる周辺環境条件が限定されるが、ドライバーはシステムが正常に動いていることを監視する必要があり、眠ることはできない。そのため、初期のレベル3の自動運転は、渋滞時の追従走行など限られた条件にとどまる。この場合は走行速度も遅いため、ドライバーに運転の権限を渡してレベル3からレベル2の自動運転に切り替える十分な時間が取れる。

 トヨタでは新しい機能をレベル2で搭載して、安全を確認できた場合にレベル3に引き上げる。渋滞時追従走行の次は高速走行になるが、まずはレベル2ハンズオフで実行し、時速100km以下と条件をつける。高速の追従走行で難しいのは路上の落下物への対応であり、それを避けるため十分な車間距離が必要だ。こうした問題に対処し、危険が回避できればレベル3の自動運転車として発売することができるとしている。

LSやミライに搭載した周辺監視用センサーの構成[クリックで拡大] 出所:トヨタ自動車

 高精度なカメラなどのセンサーが低コストで搭載でき、早く落下物を検知することができれば、レベル3の条件は広がる。さらに周辺環境条件を絞ってレベル4とすることも可能になると見込む。ただし、奥地氏は「その際も、全ての場合で安全を第一優先とするため、安全が確認できなければ自動運転のレベルがアップグレードすることはない」と強調した。

 人と機械が得意とする役割を共有し、相乗効果を生み出すというのがトヨタの「自働化」であり、これをクルマの安全や自動運転技術にも応用する考えだ。具体的には「限定的なエリアでの低速走行であれば、MaaSでレベル4の自動運転は実現するかもしれないが、手ごろな価格の個人所有車でそれを達成することは非常に難しい。高価なシステムでは市場普及できず、交通事故の削減には寄与することはできない。レベル3のほうがはるかに容易だが、ドライバーがシステムを監視する必要がある。われわれはドライバーにこのような退屈な作業はさせたくないと考えている」(奥地氏)としている。

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