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» 2021年10月07日 11時00分 公開

産業向けで導入進む「HD-PLC」、通信の困りごとを解決する“第3の道”を目指す産業用ネットワーク技術解説(1/2 ページ)

パナソニックは電力線を通信線として利用する「HD-PLC」技術を利用した事業の拡大を進めている。HD-PLC事業の取り組みについて紹介する。

[長町基,MONOist]

 新たなケーブル配線や無線通信網を用意することなく既存の電力線で通信を――。パナソニックは電力線を通信線として利用する「HD-PLC」技術を利用した事業の拡大を進めている。

電力線を使う高速通信技術「HD-PLC」

 HD-PLCは電力線に通信信号を載せる高速通信技術である。高周波帯域(2〜30MHz)を使用し、10年以上前に技術的には確立されている。ただ、当時は450kHz以下という低い周波数(低速PLC)利用であったことから、他の電源機器から発生されるノイズの影響を受けて信号がかき消されるなどの障害が起こり、普及につながらなかった。しかし、2005年に法律が改正され、規制緩和により高周波数帯の利用が可能となった。MHz帯が使えるようになったことで、通信速度も高速になり、ノイズの影響を抑えることができ、産業向けでも用途が徐々に広がっている。

photo HD-PLCの概要[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 また、端末機を使い、情報信号をバケツリレーで送るマルチホップ技術を新たに加えたことで、端末機自身が中継器の役割を果たし長距離通信も実現できるようになった。このようにHD-PLCには「配線工事コストを大幅削減でき、工期の短縮につながるという2つの点がメリットとしてある。これは、ほぼ全てのユーザーに当てはまるもので幅広い価値を生み出すことができる」(パナソニック)。

photo マルチホップ技術の概要[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 さらに既に設置されている電線を利用できるために、新たな配線工事などによる躯体の損傷を軽減できたり、無線LAN使用時に起こる通信障害を回避できたりする利点などもある。一方で、通信速度については最大30Mbpsと他のネットワークに比べやや容量は少なく、パナソニックでは「全てのネットワークに置き換えるわけではなく『新たに通信用の有線ケーブルを引くには工事費用が掛かる』や『無線では届かない』など現在の通信環境における困りごとを補完する、第3の通信手段として提案したい。ネットワークの最適化に貢献できる」と提案している。

photo ネットワーク技術の比較[クリックで拡大] 出所:パナソニック

 HD-PLCを使用するには電波法を考慮する必要があるが、アダプターに関しては型式申請をとっているため、ユーザーには直接負担はない。また、使用範囲に関しても2021年6月に規制が緩和され、利用可能な通信範囲が拡大した。以前から認められていた単相交流(100V、200V)に加え、主に工場など大規模施設で利用されている600V以下の三相3線での使用が可能となった。さらに、これまで認められてこなかった船舶における鋼船での利用が認められている。

photo 電波法の規制緩和で利用可能範囲が拡大[クリックで拡大] 出所:パナソニック
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