日本の自動車産業がとるべき戦略は「返し技」にあり和田憲一郎の電動化新時代!(44)(3/3 ページ)

» 2021年10月13日 06時00分 公開
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 中国がNEV導入の際は、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)を訪問してヒアリングを行ったと仄聞している。日本も同様に調査団を派遣して、米国にシステム構築を学んではいかがであろうか。

図表2:日本版ZEV規制案(試案)-1[クリックで拡大] 出所:日本電動化研究所
図表3:日本版ZEV規制案(試案)-2[クリックで拡大] 出所:日本電動化研究所

(2)グリーン成長戦略達成のアクションプランと要望の明確化

 政府は2035年に新車販売に占める電動車比率100%を目指す中で、上記のように日本版ZEV規制の導入を図るのであれば、各自動車メーカーに達成のためのアクションプランの提出を要望してはどうであろうか。同時に自動車メーカーや、電池メーカー、パワーデバイスメーカー、充電インフラ、水素インフラ業界なども、達成するための政策や規制緩和への要望、2035年までの予算などを明確化することが望ましい。欧米中では、ゼロエミッション化実現のために多額の予算を見込んでいる。

(3)ゲームチェンジャーとしての役割強化

 振り返ると、約30年前にソニーや旭化成などがリチウムイオン電池を開発し、携帯電話などへの搭載とともに電池市場は一気に拡大した。また約12年前には三菱自動車や日産自動車が世界初の量産型EVの製品化に漕ぎつけるなど、革新的な取り組みを行ってきた。しかし、最近はリチウムイオン電池やEVは一部の企業だけが開発、製造できるものではなくなり、資本投入の面では米欧中の後塵を拝している。

 これまでリチウムイオン電池は、中国や韓国などを中心に大量生産してきたが、リチウムイオン電池のエネルギー密度を上げるためには、コバルト、ニッケル、マンガンなどの希少金属が必要となる。しかし世界的にこのような原材料は限りがあることから、資源高騰を招いている。

 日本の自動車産業の再生戦略を考えるとき、いま一度ゲームチェンジャーの役割を担うことが大切ではなかろうか。そして核となるのは、やはり“ポスト・リチウムイオン電池”である。次世代電池を開発して、それを基に新産業を創出することが望ましい。

 ステップとしては、電解液を固体電解質に変えた「全固体電池」の開発を急ぐとともに、さらにその先のポストリチウムイオン電池に期待したい。研究中のリチウム硫黄(Li-S)電池、フッ化物イオン電池、リチウム空気電池などで、重量エネルギー密度が現在の200Wh/kgから400〜600Wh/kgまで実現できると、搭載するe-モビリティの世界が大きく変わる。2030年ごろの実用化を目指しているようであるが、関係者のイノベーションに期待したい。


 最後に、筆者としては再生戦略のキーワードとして以下を挙げたい。「ゼロエミッション化を前提に、世界に先駆けた新技術を開発して勝つ!」

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筆者紹介

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和田憲一郎(わだ けんいちろう)

三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。



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