他社エンジンやモーター追加もOK、自由なルールでドリフト競う「D1グランプリ」モータースポーツ超入門(10)(3/3 ページ)

» 2021年10月18日 06時00分 公開
[福岡雄洋MONOist]
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排気系は音量含めて厳密な規定、採点方法はデジタルで

 自由で広い改造を許可しているD1だが、排気系統については環境対応の観点からも厳格に規制している。排気ガスの浄化機能を持つ市販の排気触媒装置の装着が義務付けられる他、排気音量は「いかなる場合(アンチラグによる一時的な音量を含む)においてもトラックサイドで計測される音量が113dB(デシベル)以下とする」ことが規定されている。マシンの騒音測定はコースサイドで競技走行中に音量を測定され、1回でも規定値を超える音量が測定されたマシンはペナルティーの対象となる。

 マシン同士の接触や激しいクラッシュも頻発するだけに、マシンの安全装備も厳密に決められている。中でも消火装置については「いかなる車両姿勢にあっても、たとえ車両が転倒した場合でも作動しなければならない」と規定され、さらに、全ての方向に対して25G以上に耐えられることを求めている。消火器についてはFIA公認の自動消火システム、エンジンルーム用として遠隔起動式消火器の装備が義務付けとなっている。

 D1の採点方法はユニークだ。審判員による判定に加え、「D1オリジナルスコアリングシステム」(DOSS=ドス)を併用した採点を行うからだ。DOSSはGPSと角速度センサーを用いてマシンの車速や角度、角度の安定性、振り返しの鋭さなどを数値化して自動的に採点を行うシステムで、2013年から本格導入された。ドライバーのスキル、マシンの高速化が進む中で、競技の公正、公平性を担保する採点システムとして進化を遂げ続けている。


 かつてD1はチューニングメーカーやショップなどを中心にシリーズを盛り上げてきたが、近年は国内外のタイヤメーカーや新車販売店(ディーラー)も参加するなど、マーケティング活動の場、顧客との関係強化の場としても利用されている。

 そして今、自動車業界が自動運転社会の実現に向けてアクセルを踏み込む中で、クルマを運転する楽しさが失われると不安視する声も高まっている。シリーズ開始から20年を迎えるD1には、自分の手足のようにクルマを自由に操う楽しさ、うれしさ、魅力をダイレクトに伝えられるモータースポーツとして今後も成長していくことが期待されている。

近年はタイヤメーカーやディーラーが参戦するケースも増えている[クリックで拡大] 出所:D1GP

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