鉄とニッケルでレアアースフリーのモーター用磁石、デンソーが開発中電動システム(1/2 ページ)

デンソーは2021年11月18日、メディア向けに説明会を開き、先端技術研究所の取り組みを紹介した。

» 2021年11月22日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 デンソーは2021年11月18日、メディア向けに説明会を開き、先端技術研究所の取り組みを紹介した。

 先端技術研究所は1991年3月に開所し、2021年で30周年を迎えた。半導体やエレクトロニクス分野をはじめ、音声認識技術などさまざまな領域に取り組んできた。2020年には半導体・エレクトロニクス領域の先行開発をトヨタ自動車との共同出資会社ミライズテクノロジーズに移管したが、AI(人工知能)技術や材料、ソフトウェアなどの分野で2030年代の実用化に向けた“ゼロから1を生み出す研究開発”を担っている。

感情認識から量子コンピュータまで

 説明会では、コックピットやスマートシティー、スマートファクトリーに資するAI技術や、電動化に貢献する材料研究などについて紹介した。

 AI研究領域では、自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)における危険予測や他者との協調、熟練ドライバーのスキルを取り入れた制御の他、交通やロボット動作などの最適化、ドライバーの状態を推定するAIなどのテーマで研究開発を進める。最先端のアルゴリズムを活用する一方で、車載用を前提としたAIの品質保証、車載用半導体に最適なアーキテクチャの提案を重視している。

AIでの研究テーマ[クリックで拡大] 出所:デンソー

 ドライバーが運転に適した状態を保つための感情認識技術はさまざまな自動車メーカーやサプライヤーが開発している。デンソーでは、感情認識技術と香りや光などのアクチュエーションを組み合わせて、ドライバーがイライラしているときは穏やかに、眠気を感じているときは覚醒を促すようなシステムの開発を進めている。リラックスあるいは集中した車内空間をつくることで、交通事故を防ぐ。

 イライラなど平常時と違う感情を認識するに当たっては、顔データから表情を数値化し、7種類に分類して検知する。現在の研究開発は日本国内の顔データがメインだが、米国の研究拠点でも表情データを集めるなど人種や肌の色に関係なくデータ分析を進め始めている。

 顔データを基にした感情認識だけでなく、ドライバーが着用したスマートウォッチや、シートに組み込まれたセンサーとのフュージョンについても検討しているという。

 AI研究領域では、従来の計算技術では解決できない大規模な問題への応用を目指し、量子コンピューティング技術の開発を進めている。実社会(フィジカル空間)で得られる膨大な情報をサイバー空間に集約し、高速に処理することで、課題解決につなげる。

 デンソーは古典コンピュータと量子コンピュータの両方の強みを生かす量子古典ハイブリッドソルバーに取り組んでいる。現在、工場のAGV搬送で先行検証を進めており、今後大規模配送まで領域を拡大する。製品設計など他の分野に量子コンピューティングを展開するためのブラックボックス最適化も進めていく。

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