「設備保全」の5つの方式は機能や使用条件に合ったものを選択すべし生産性向上のもう一つのキモは、設備管理の徹底にあり(2)(2/4 ページ)

» 2022年01月19日 10時00分 公開

1.4 事後保全(BM:Breakdown Maintenance)

 例えば、病気になったりけがをしたりした場合に病院に行くのと同じように、機械設備が壊れたり故障したりした時点で修理や部品交換などをするというやり方です。病気やけがの内容によっては命とりになったり、傷跡が残ってしまったりと、以前と同じような健康体に戻れない場合もあります。機械設備の場合でも同様に、致命的な故障となるケースもあります。しかし、設備故障の重要度が低い場合であるとか、機械設備の購入価格の安いもの、代替品の入手が容易であるものなどは、この方法が多く採用されます。

 また、事後保全は、一般的に機械設備の休止損失が小さい場合に、故障してから修理する方法です。機械設備の修理作業の発生は突発的で事前に計画を立てにくいケースが多いので、機械設備の修理要員、修理に必要な材料や部品類、器材の手配などが効率的ではないとも考えられますが、保全費用の総合的な経済性から考えると有利な場合も多くあります。

 事後保全では故障から修理完了までの保全性が評価尺度となります。機械設備の状態を監視し、劣化の兆候を把握することにより、その劣化状況に合わせて、その都度、保守を実施するという状態基準保全を行います。その結果として、効果的な事後保全は、修理時間の短縮につなげることができます。

1.5 予防保全(PM:Preventive Maintenance)

 例えば、定期健康診断や予防注射を受けて病気を未然に防ぎ、または早期に何らかの病気の前兆を発見して、健康を維持していく考え方を設備管理にとり入れたものです。従って、必要なデータの集積、情報の蓄積、設備点検の方法や適切な処置の方法、経過の確認などの詳細を具体的に検討していかなければなりません。

 以上のことから、予防保全は機械設備の突発的な故障停止を防ぐ目的で、経済的な時間間隔で部品やユニットの交換などを計画的に行う保全方式をいいます。予防保全は、機械設備の規模や寿命などによって、年ごと、期ごと、月ごと、週ごとなどの間隔で、機械設備の定期点検修理やオーバーホールなどを行います。予防保全も、あまりにも慎重な態度になり過ぎると保全回数が過剰となって経済的ではなくなってしまいます。前項の事後保全も含めて総合的に検討した結果により、予防保全策として設定されるというのが一般的な考え方です。

 予防保全は、機械設備が故障する前に機械設備の状態にかかわらず、適切な時期に定期的に保全を実施するもので、時間基準保全ともいわれますが、いわゆる定期保全によって設備の性能を維持していきます。効果的な予防保全は、設備故障の件数を減少させることができます。

1.6 生産保全(広義)(PM:Productive Maintenance)

 設備保全は、故障すれば修理するという考え方から、修理時期をどのように確認し、いつ修理するのかといった、より計画的に故障の可能性をチェックする考え方が主流となってきました。ここまで述べてきたことを要約すると、機械設備の保全目的は、言うまでもなく生産性の向上にあります。そのためには以下のことが必要です。

  • 機械設備の故障をなくす(信頼性)
  • 故障による機械設備の休止時間を短縮する(保全性)
  • できるだけコストをかけないようにする(経済性)

 そして、広義の生産保全には次の3種類があります。

(1)改良保全(CM:Corrective Maintenance)

 病気になって、その苦しみを知った人は、二度と病気にならないように用心したり、体力をつけたりすることに努めようとします。この場合と同じように、設備でも故障しないように改造あるいは改善するとか、性能を向上したいという要求に応ずるのがこの改良保全です。

 しかし、これを行うには、故障の原因はもちろん、機械設備の実態について詳しく知るとともに、各種のデータも必要となってきます。改良保全は、事後保全、予防保全をそれぞれ継続して行うことによって、各種のデータもそろい、必然的に方針が出てくるものです。例えば、機械設備に故障が発生したとき、その原因を分析して再び故障が起こらないように、機械設備自体を改良したり根本的に改善したりする保全方式をいいます。この場合、機械設備の改善は保全面だけではなく、生産性向上の側面についても併せて検討します。

 以上のように改良保全は、機械設備の故障の原因を究明して、故障が起こらないように改善し、設備の性能を向上させるものです。改良保全を徹底させれば設備故障による機械設備の停止は減少させることができますが、多額の保全費用を費やしてしまうという欠点があります。従って、故障による停止の損失が大きい機械設備に対しての改良保全は有効ではありますが、故障しても生産上の損失が少ない設備に対してはむしろ不経済であり、事後保全で十分であるといえます。

(2)保全予防(MP:Maintenance Prevention)

 改良保全の考え方を一歩前進させた機械設備の保全方式です。新規の機械設備の計画や、設計、製作のときに設備保全に関する情報や技術を考慮し、信頼性、保全性、経済性などについて、より高い水準の機械設備を設計し、保全に費やす費用や劣化損失をできるだけ最少にするという保全方式です。

 例えば、新しい設備の購入計画の時点から、設備保全を必要としない機械設備や保全の簡単な機械設備にしておこうという考え方の保全方式です。具体的には、自動給油装置、防塵(じん)装置などをあらかじめ取り付けておく、部分的な取り換えが簡単な機械設備にしておくなどの方法も、この一例といえます。

(3)生産保全(狭義のPM:Production Maintenance)

 設備の計画、設計、製作、さらには機械設備の運転や保全に至るまでの設備の一生涯について、設備自体のコストや設備の運転維持に必要な全ての維持管理費と設備の劣化損失との合計金額を引き下げることによって、生産性を高めようとする保全方式です。

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