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東レが童夢カーボン・マジック買収、童夢オーナー「売却益でクルマ造りを楽しむ」ぶっちゃけ過ぎだが、カッコいい

東レは、レーシングカーの設計/開発で知られる童夢の100%子会社で、炭素繊維樹脂部品を手掛ける童夢カーボン・マジックと童夢コンポジット・タイランドを買収する。一方、2社を売却する童夢のオーナー林みのる氏は、「鳶(とんび)が鷹を生んだようなまともな童夢カーボン・マジックの未来を東レに託したい。売却益は、70才になるまでの残り3年間で思いっきり自由なクルマ造りを楽しむのに使う」と述べている。

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「やんちゃ」をテーマに走りに徹したスポーツカーのイメージイラスト

 東レは2013年3月18日、レーシングカーの設計/開発で知られる童夢の100%子会社で、炭素繊維樹脂部品を手掛ける童夢カーボン・マジックを買収すると発表した。併せて、童夢のタイ生産子会社で、炭素繊維樹脂部品を製造する童夢コンポジット・タイランドについても、童夢が所有する75%の株式を取得し傘下に収める。東レは、2社を買収することで、炭素繊維樹脂部品の設計技術力を飛躍的に拡充するとともに、東南アジアにおける自動車製造の中心地となっているタイに炭素繊維樹脂部品の生産拠点を確保できる。

 童夢カーボン・マジックは、2013年4月に東レが童夢から全株式を取得した後、社名を「東レ・カーボンマジック株式会社」に変更する。童夢コンポジット・タイランドの社名は、「Carbon Magic (Thailand) Co., Ltd. (カーボンマジック(タイランド)株式会社)」となる。

 童夢カーボン・マジックは、童夢がレーシングカーの設計/開発で培ってきた炭素繊維樹脂部品の技術を基に、1995年に設立された。高い設計技術力、試作提案力、高精度オートクレーブ生産技術が市場から高く評価されており、レーシングカーや自動車用途にとどまらず、幅広い分野に炭素繊維樹脂部品を供給している。例えば、ボブスレー日本代表のソリの開発で知られる「下町ボブスレー」では炭素繊維樹脂製のカウルを担当している(関連記事)。従業員数は65人。

 童夢コンポジット・タイランドは、炭素繊維樹脂部品の量産工場として、タイの大手消費財関連コングロマリットであるSahaグループとの合弁で2005年に設立された。オートクレーブ技術を核に、高品質の製品を競争力あるコストで量産しながら、着実に業容を拡大しているという。従業員数は70人。

売却益で「やんちゃ」なクルマを造る

 買収側である東レの発表文を基にすると以上のような記事になる。一方、売却側の童夢の発表文では、童夢オーナーである林みのる氏が、2社の売却の理由について、「かなり常識はずれなのでご理解いただけるかどうか疑問ですが、まあ、理解を得ることが重要というわけでもありませんので事実だけを述べておきます」と前置きした上で、背景説明を行っている。

 林氏によれば、「もともと童夢カーボン・マジックはル・マンなどのレース資金を捻出することを目的に設立した会社ですが、そのためには企業としての成長/発展が不可欠ですから、童夢には内包せず子会社として切り離した形で健全な育成を心掛けてきました。おかげで事業としては期待以上に成長してきたものの、実際のところ、年間に調達できるレース資金は、童夢から捻出する資金と合わせても2〜3年に1回、ル・マンに参加するのが精いっぱいというレベルでした」という。

 そして、70才になるまでの残り3年間で、どうしてもやりたいことがもう1つだけ残っているとして、「そのためには、もう少し大きな予算が必要なのですが(中略)今までの資金源であった童夢カーボン・マジックを売却し、その売却益を投入して私の最後のお遊びに使い果たそうと考えたわけです」(林氏)。

 このどうしてもやりたいこととは、公道走行可能なスポーツカーの開発である。林氏は、「いずれにしても最後のクルマ造りとなりますから、世間の評価など無視して、私自身が最も乗りたいクルマ、そうですね、ハンドルを握ると街中よりも峠に向かってしまうような『やんちゃ』なクルマを造る」計画である。なお、開発状況については、童夢のWebサイトで順次公開する方針。

「やんちゃ」をテーマに走りに徹したスポーツカーのイメージイラスト
「やんちゃ」をテーマに走りに徹したスポーツカーのイメージイラスト(クリックで拡大) 出典:童夢

 さらに同氏は、自身が没頭してきた童夢におけるレーシングカー設計について、「基本、趣味の同好会ですから『あー、面白かった!』で済みますが」と語る一方で、「そんな童夢とは違って、童夢カーボン・マジックは技術的にも経営的にも立派な企業に育ってくれましたし優れた人材も育っていますから洋々たる将来も期待できます。私も、そんな鳶(とんび)が鷹を生んだようなまともな童夢カーボン・マジックを3年で放り出すのはやや無責任であり、もったいないとも思っていましたので、ここだけは良い形で将来につなぐ手立てを考えていたところ、東レさんとの話が浮上してきたので、童夢カーボン・マジックの未来を託すことにした次第です」と説明している。

 レーシングカー設計を愛してやまない一方で、「この国で、世間から必要ともされないし評価もされない、仕事はほとんど海外に流れる、いつまで経っても持ち出しが続く、その上、金だけはやたら必要な、とても事業とも言い難いようなレーシングカー・コンストラクター」と言ってしまう林氏のコメント全文は、童夢の発表文を確認してもらいたい。

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