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製造現場における画像処理【前編】製造現場で役立つ「画像処理技術」入門(5)(2/2 ページ)

製造現場における画像処理技術とは何か? その特徴や導入時のポイントなどをきちんと理解し、生産性向上に役立てていきましょう。連載第5回のテーマは「製造現場における画像処理」についてです。具体的に画像処理が製造現場で効果的に利用されている実例を紹介します。

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大きなモノの高精密製造のニーズ

 高精密製造は、半導体のような小さな対象物だけとは限りません。例えば、スマートフォンやタブレット端末に搭載されている液晶パネルは、大型化とともに高精細化が進んでおり、これまでの製造技術では安定した品質を維持することが難しくなってきています。半導体よりも大きな対象物ではありますが、ピクセル密度は450ppiを超えるようになり、半導体に肉薄する精密さが要求されています。

 例えば、偏光板と液晶モジュールの位置を計測し、ステージを動かして液晶モジュールを偏光板と同じ位置に合わせて、貼り合わせる工程を考えてみましょう。1台のカメラで、液晶モジュールと偏光板の全体を観測するような計測方法では、画素当たりの実寸寸法が大きくなり過ぎてしまい、高精度を確保することが難しくなります。そこで図1のように、ガラスのコーナーの小さな位置決めマークを2台のカメラで観測することで画素解像度を維持するのです。

2台のカメラで1つのワークの2部位を観測
図1 2台のカメラで1つのワークの2部位を観測

 ただ、このような複数カメラを用いた位置決めの場合、精度を得るのが難しかったりもします。計算上では、カメラの画素解像度とカメラの距離、液晶モジュールの2つの位置決めマークの検出位置から“液晶モジュールの2次元的な位置”を算出することができます。しかし、これにはカメラの距離や2つのカメラの画素が平行になるように設置されていること、カメラは液晶モジュールと偏光板に対して垂直に設置されていることなど、物理的なカメラの設置環境が理想通りであることが大前提となります。つまり、現実の環境と理想的な環境とのギャップが、そのままプロセス精度の低下につながってしまうということです。この差異を小さくしようと機械調整を始めると、ミクロンレベルでの調整が要求されるため、多大な工数と時間を要します。

 また、このアプリケーションの場合、正確に座標を計測できるだけではプロセス精度は上がりません。偏光板と液晶モジュールが2次元的に同じ座標に搬送できて、初めてズレなく貼り合わせることが可能になります。つまり、“ステージなどの搬送系による誤差も加味しなければ、高精密なプロセス精度を得ることはできない”ということです。画像処理で機械制御の誤差も吸収していく、そのような画像処理が必要とされているのです。

 例えば、コグネックス社では、このような位置決めソリューションとして「AlignPlus」というステージ制御も包括した画像処理アライメントシステムを提供しています。AlignPlusは、ただ画像計測を行うだけではなく、複数カメラを用いたワークの位置決めアプリケーションに特化したシステムです。独自の制御技術を盛り込んだチューニング機能により、カメラの取り付け状態やステージの動きの機差を高精度に観測・補正し、さらに、ステージの各軸モーター移動量までを自動計算できます。

AlignPlusのチューニング機能で補正するあらゆる誤差要因
図2 「AlignPlus」のチューニング機能で補正するあらゆる誤差要因 ※画像クリックで拡大表示


 今回はここまでとなります。画像処理の性能が、装置のコストや製造能力を大きく左右するという点をご理解頂けましたでしょうか。次回は、ガイダンスではないアプリケーションの事例を紹介していきます。(次回に続く)


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