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「“スマホの次”は小型コミュニケーションロボ」ロビ産みの親、高橋氏が考える近未来インタビュー(1/2 ページ)

家庭用ロボット「ロビ」の産みの親、高橋智隆氏は「スマホの次はコミュニケーションロボットだ」という。スマホにおけるiPhoneのような、コミュニケーションロボットの離陸に必要な「キラーハードウェア」は何か。

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 日本全国で6万台が“誕生”した家庭用ロボット「ロビ」や、国際宇宙ステーションに滞在したロボット宇宙飛行士「キロボ」などを手掛けたロボットクリエーター、高橋智隆氏。モノづくりを志して入学した京都大学在学中からロボット製作を始め、2003年にロボ・ガレージを創業、産業用ではない新たなロボット像と向かい合ってから既に10年以上が経過している。

 そして2015年早春。産業用ロボットが広く普及した1980年代の第1次ロボットブーム、ホンダ「ASIMO」やソニー「AIBO」が登場した2000年代の第2次ロボットブームに次いで、「第3次ロボットブーム」とも表現できる波が到来している。「モノづくり」を出発点として、ロボットに関わり続けている高橋氏にとって、この第三次ロボットブームとはどんな意味を持つのか。

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ロボットクリエーター、高橋智隆氏

シリコンバレー発の第三次ブーム

――2014年は「第三次ロボットブーム」など、ロボットに関する話題を耳にすることが増えたと感じますが、現在言われている「ロボットブーム」について、どんな感想をお持ちでしょうか。

高橋氏: 過去にブームと呼ばれた動きに比べると、今回の動きはその盛り上がりがシリコンバレー発であるという点でまず違いがあると思います。ITが成熟して、シリコンバレーの企業が次の“何か”を探し始めたからですね。

 バーチャルなモノに消費者が飽き始め、「モノを持たないこと」をクールだとする感覚への反動で、リアルなモノを所有したいと渇望し始めたのです。そして企業やクリエーターも、バーチャルな製品・作品ではビジネスにならなくなり、ハードウェア開発にチャレンジし始めたという流れが根底にあります。

――リアルなモノへの渇望、その対象として「ロボット」が浮上したということでしょうか。

高橋氏: そうなのですが、ロボットにもいろいろな種類があります。どういったものに可能性があって、どういったものに可能性がないのか、その見極めは必要です。いままでの日本が行ってきたロボットへの取り組みでは、シリコンバレーのITの巨人たちに対抗できるはずがありません。

 新たなロボット像として有望だと思っているジャンルが幾つかあります。教育向けやドローンはある程度の市場を作るでしょうし、ロボットカー(自動運転車)も間違いなく普及するでしょう。ですが、私が本命だと考えているのはコミュニケーションロボットです。

 現在はコミュニケーションデバイスとしてスマートフォンが普及していますが、次のコミュニケーションデバイスとして、小型のヒト型コミュニケーションロボットを1人1台持つ時代が来ると思っています。スマートフォンを機種変更しよう思ってショップに行くと、商品棚の端に人型をした変わり種の端末が座っている、そんなイメージです。

 スマートフォンはここ10年で大きく成長したデバイスですが、一部で失速し始めており、世界中が次のデバイスを探しています。メガネ型についてはGoogle Glassが販売中止となりましたし、腕時計型も今のところ成功していません。本命は、小型のヒト型コミュニケーションロボットだと私は考えています。

――ではなぜスマートフォンがここまで成長し、その次として、小型のヒト型コミュニケーションロボットが本命になるとお考えなのでしょう。

高橋氏: なぜスマートフォンがここまで大きく成功したのかといえば、インタフェースをボタン操作中心から、タッチパネルとモーションセンサーの導入で改善したからです。しかし、同じく期待されていた音声認識は思ったように使ってもらえない。ここにカギがあります。

 一方で私たちは金魚や亀など言葉を全く理解出来ないペットにすら話しかけます。私たちがスマホの音声認識をあまり使わないのは、それが四角い箱だからなのです。だから音声認識を用いる端末に何かしらの命が感じられれば、人は抵抗なく話しかけるはず。それが小型のヒト型であるべき理由です。

 そして、作業用ロボットについて、多くの場合ヒト型であることはむしろ効率が悪い。つまりヒト型の存在意義はほぼコミュニケーションにしか無いのかも知れません。

――これまでにも「コミュニケーション」を掲げたロボットは多く登場しましたが、いずれも定着しませんでした。何が足りなかったのでしょうか。

高橋氏: ひとつはタイミングの問題です。ハードとソフトの進化、生活スタイルの変化など、さまざまな要因があり、いまこそ、コミュニケーションロボットが求められる時代が来ていると感じます。必要な要素技術はほぼ出そろっていますので、あとはそれをどうまとめて製品に仕上げるか、です。

 iPhoneなしでスマートフォン市場が立ち上がったかといえば、答えはノーでしょう。「キラーハードウェア」とも呼べる画期的な製品が出て初めて、コミュニケーションロボットが離陸するのだと思います。

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