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鉛バッテリーはリチウムイオン電池より電動車両に向く?電気自動車(2/4 ページ)

自動車の電源として単電池で使われている鉛バッテリー。しかしバッテリーフォークリフトのような電動車両では、複数の鉛バッテリーを用いた組電池システムとして利用されている。パナソニックが、コマツのバッテリーフォークリフト用に新開発した「EV鉛蓄電池 組電池システム」は、電動車両への適用をさらに拡大し得る製品だ。

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長寿命&急速充電を実現した新開発の鉛バッテリー

 2015年9月から特定特殊自動車排出ガス規制(オフロード法)が本格化することを受け、各フォークリフトメーカーは排気ガスが出るエンジン式から、鉛バッテリーを使うバッテリー式への移行を進めていた。排出ガスゼロなどの長所があるバッテリーフォークリフトだが、稼働時間が短く、メンテナンス(補水)が必要など、克服すべき課題が山積みだった。

従来のバッテリーフォークリフトは鉛バッテリー組電池への補水が必要だった
従来のバッテリーフォークリフトは鉛バッテリー組電池への補水が必要だった。組電池を構成する単電池全てに補水しなければならず、その頻度も2週間に1回という場合もあるという(クリックで拡大)出典:パナソニック

 そこでパナソニックは、バッテリーフォークリフトに最適な新型の鉛バッテリーとその組電池システムの開発に着手。急速充電への対応や、コスト削減、メンテナンス/制御システムの簡略化に向けた研究が進められた。その結果誕生したのが、EV鉛蓄電池 組電池システムである。単電池を36個組み合わせたもので、コマツが2014年4月に発売した新型バッテリーフォークリフト「FE25-1」に採用されている。

バッテリーフォークリフト用の鉛バッテリー組電池システムの開発課題(クリックで拡大) 出典:パナソニック
 EV鉛蓄電池 組電池システムに使用されている単電池
EV鉛蓄電池 組電池システムに使用されている単電池。密閉型のシール鉛だ(クリックで拡大)

 急速充電を実現するため、新たに極板加工技術を用いて細密格子の開発が行われた。これによって、極板の格子と活物質の接触面積が倍増して導電性が向上し、急速充電が可能になった。例えば、1時間の急速補充電によって電池容量の最大80%まで回復させられるという。

(左)急速充電を実現するため採用した極板の細密格子の技術概要。(右)発表会で展示された細密格子の実物(画像右)(クリックで拡大)出典:パナソニック

 急速補充電が可能になると、バッテリーフォークリフトの運用も変わってくる。従来の鉛バッテリー組電池システムを搭載するバッテリーフォークリフトの場合、6時間ほど連続稼働した後、夜間に普通充電で充電していた。しかし、急速補充電が可能であれば、昼休みの1時間に急速補充電することで、1日当たりの稼働時間を10時間まで伸ばすことができる。さらに、4時間ごとに急速補充電を1時間行うサイクルで利用すれば、24時間職場でも運用できるという。実際に、パナソニックストレージバッテリーの工場でこのような運用を行ったところ、4年間問題なく使用できたという。

急速補充電の使用例
急速補充電の使用例(クリックで拡大)出典:パナソニック

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