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IoT時代の安心・安全に組織面の対応が重要となる理由IoT時代の安全組織論(1)(1/2 ページ)

製造業がIoT(モノのインターネット)を活用していく上で課題となっているのが、サイバーセキュリティをはじめとする安心・安全の確保だ。本連載では、安心・安全を確立するための基礎となる「IoT時代の安全組織論」について解説する。第1回は、技術面以上に、なぜ組織面での対応が重要となるのかについて説明する。

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はじめに

 IoT(モノのインターネット))時代の進行とともに、主として制御システムをもつ製造事業者において、制御システムが社内の情報システムと接続したり、インターネットと直接接続したりすることが増えていくと考えられる。そのような変化の中で、製造事業者にとっては、自社の制御システムの安心・安全をどのように確保するのかは大きな経営課題となるだろう。そして、つながる世界であるIoT時代の安心・安全においては、これまで考慮してきた安全(Safety)や、信頼性(Reliability)だけでなく、サイバーセキュリティ(Security)も、これまで以上に重要な要素となると考えられている(図1)。

図1
図1 IT(情報システム)とOT(制御システム)の安心安全の概念の融合。製造業を中心としたIoTの国際的な業界団体であるIIC(Industrial Internet Consortium)のセキュリティフレームワークから抜粋(クリックで拡大)

 世界的なIoT推進の動きの中で、日本の製造業においても、今後、IoTやAI(人工知能)などの最新技術を活用することで、国際的な競争力強化を図ろうという機運が高まっている。ただし、「IoTはじめました」という掛け声だけはよく聞かれるものの、実情はIT部門と製造部門との連携がうまくいかず、なかなか進められていないという話をよく耳にする。幾つかの原因がある中で、技術的な困難さというより、データの機密性の扱いや、外部と接続することによるサイバーセキュリティ上の課題に対して、IT部門と製造部門の認識が合わないことも原因の1つになっている。

 このような状況を踏まえて、本連載では「IoT時代の安全組織論」と題して、組織面に焦点を当てて、IoT時代の安心・安全を確保するには、どのような組織面の対応をすれば良いかについて、幾つかの事例をあげながら解説し、製造業のIoT推進の一助となることを目指す。

なぜIoT時代の安心・安全に組織面の対応が重要となるのか

 そもそも、IoT時代の安心・安全を確保するにあたって、なぜ組織面が重要となるのだろうか。

 これまで、製造事業者が安心・安全について考慮する際には、製造現場のルール策定といった運用面や、制御システムにどのようなソリューションを導入するのかという視点が中心だったのではないかと考える。なぜなら、インターネットとの接続がなく、専用機器や通信プロトコルを用いた制御システムを用いる製造現場においては、外部からのサイバー攻撃についてさほど考慮する必要がなく、それぞれの現場に閉じた対策であっても、リスクを十分減らすことができるだろう。従って、組織面での対策をあまり必要としなかったからである。

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