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インタビュー

2018年の製造業IoTは“プラットフォーム”元年に――ウフル専務八子氏特集「Connect 2018」(2/2 ページ)

IoT関連のサービス構築やコンサルティングなどで大きな存在感を発揮しているウフル。そのウフルで専務執行役員を務める八子知礼氏は、IoT関連の識者として知られ、国内企業のIoT活用について提言してきた。そこで八子氏に、国内における製造業のIoT活用の状況や、今後取り組むべき方策について聞いた。

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2017年はエッジ元年、2018年はプラットフォーム元年に

MONOist 製造業のIoT活用という観点から、2018年はどうなると見ていますか。

八子氏 IoT元年となった2016年は、まずはデータをクラウドに上げるというイメージだった。これに対して2017年は、エッジコンピューティングの重要性が認識されたことで、エッジ元年といえるかもしれない。そして、2018年はプラットフォーム元年になるとみている。クラウドとエッジで処理して、プラットフォームでつなぐ。そして、2019〜2020年には境目がなくなっていく。あっち側とこっち側がなくなって、コンバージェンス、ユビキタスになる。

 ここでいう「プラットフォーム元年」のプラットフォームは、ITとしてのプラットフォームではない。エッジからさまざまな情報が得られるとともに、従来のエンタープライズ系の情報もまとまった産業別のプラットフォームだ。特定用途別プラットフォームと言い換えてもいい。

MONOist その特定用途別プラットフォームでは何ができるのでしょうか。

八子氏 IoTでプラットフォームというと、GEの「PREDIX」やPTCの「ThingWorx」、通信でもソラコムなど、もう大きなプラットフォームがあるからやる必要がないという意見が出てくる。だが、そういった今あるITとしてのプラットフォームを使ったとしても、集めたデータを整備する必要がある以上、自身のプラットフォームを持たざるを得なくなる。

 現在、欧州の船舶業界や設備産業に製品を納入する場合には、その製品がコネクテッドな機能を持っていなければ調達から外すという流れになっている。この次は、製品にコネクテッドな機能がある以上、整備や補充のためにデータも出せるようにしてほしいという方向に行くだろう。こういった状況が進むのであれば、あらかじめ収集したデータを整備してプラットフォームにしておき、APIを用意しておいて使ってもらえばいいい。きちんと整備してAPIを提供すれば、有料のビジネスになるはずだ。

 その可能性に気付いてもうけることを考えているからこそ、貪欲に取り組みを進めている人達がいる。データがあるなら、なぜメニュー化しないのか。なぜそれを使わないのか。国内の製造業で顕著な傾向だが、既に集めているデータが売り物になると考えてもいない。「品質関連のデータを外に出したらダメだ」とか思っている人が多い。

ブロックチェーンと5GでAIはエッジ分散処理になる、

MONOist IoTと同様にAI(人工知能)にも注目が集まっています。しかしAIについても日本は遅れているとよく言われます。

八子氏 日本がAIで遅れているとは思わないが、ビジネスになっていない。グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)は、オープンなAPIでAIを使えるようにしている。いろんなデバイスやシステムに組み込めるし、誰でも使える。そこからビジネスが広がっている。

 一方で、日本のAIは万人が使える形になっていない。Preferred NetworksやABEJAなどの専業企業のAIは、技術が低いわけではないが、大きな企業と組んでのアライアンスの中で使われている。

 AIは、AI単体ではもうからないのではないか。だから今後はエッジ分散処理になっていく。エッジコンピューティングとメッシュネットワークをきちんと組み合わせられれば、クラウド内で行うのとほぼ同じAIの計算処理が可能になる。つまり、クラウドと同じようなモデルでAIを運用できるようになる。ここで問題になるのはメッシュネットワークに参加するための信頼性だが、これはブロックチェーンが担えばよい。

 現在は、AIの運用についてエッジかクラウドかという議論があるが、2020年には5Gが出てくるのでエッジ分散処理の方向へ自然と進んでいくだろう。

もうPoCだけでは済まされない

MONOist ウフルとして2018年はどういった施策を考えていますか。

八子氏 機能拡充して有償化したenebularは、商用化レベルのセキュアな環境でIoTに取り組めるので、ぜひとも多くの人に試してほしい。そのためにトライアルキット的なもの提供も検討している。

 IoT活用については、商用利用を意識した取り組みをやるべきだ。もう、PoC(概念実証)だけでは済まされない。集まったデータをどう使って、何を達成しようとしているのかを決めるべきだ。そうすれば、足りないデータも見えてきて、それを集めるというサイクルになる。

特集:「Connect 2018」

 「IoT」に代表されるように、今やITであらゆる物事が「つながる」ようになりました。全ての物事がつながる今、企業はITに対するスタンスやビジネスに対する考え方を大きく変える必要があります。他の企業とどう協力するかという戦略も、成長に必要不可欠だといえるでしょう。

 本特集では、ベンダーやユーザー企業、ITやOTなど、さまざまな垣根を超え、全ての物事がつながる「未来」の姿を企業のトップに聞いていきます。

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