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スマート工場化で起こり得る課題、カシオがタイ工場で得たもの(前編)スマート工場最前線(1/3 ページ)

カシオ計算機では、主力生産拠点の1つであるタイ工場で新たな自動化生産ラインを稼働し、スマート工場化に向けた歩みを開始した。タイ工場が担う役割とは何か。現地での現状と苦労について前後編で紹介する。

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 工場の生産性向上に向けたスマート工場化への取り組みが活発化している。しかし、スマート工場化で成果を得るためには、現場でのさまざまな試行錯誤が求められる。国内であればライン設計と工場が一緒になってこうした障害を乗り越えられるが、海外であればそうもいかない。その中で、2017年に新たにタイで自動化ラインを稼働させ、生産性向上を実現している工場がある。カシオ計算機の主力工場の1つであるタイ工場である。

 カシオ計算機はなぜ、スマート工場化への取り組みを本格化したのか。またどのような工夫で自動化を実現しているのだろうか。カシオ計算機のタイ工場における自動化への取り組みとスマート工場化への道のりについて紹介する。前編ではカシオ(タイランド)の概要と、自動化を進める背景について、後編では具体的に自動化ラインで取り組んだことについて紹介する。

≫後編はこちら

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カシオ タイ工場の第1工場の外観(クリックで拡大)

洪水を乗り越えて生産量を大きく拡大へ

 カシオ計算機のタイ工場であるカシオ(タイランド)は1987年に設立されている(前身となるAsahi Electronics タイランド)。1991年にカシオ計算機向けの置時計の生産を開始したことから、カシオ計算機との関係が生まれた。1997年にはカシオ計算機が株式の40%を取得。1998年に腕時計の生産を開始し2000年には100%子会社化された。その後、部品成型など生産品目や工程を拡充し、順調に生産量の拡充を進めてきた。

 しかし、2011年にタイの大洪水に遭遇する。当時は、タイ中部パトゥムタニ県のナワナコン工業団地に工場を構えていたが、2〜3mの洪水が押し寄せ工場は水に沈んだ。金型は避難させたというが、製造装置などにも被害を受け、すぐには生産再開ができない状況となった。そこで、新たにナコンラチャーシーマ県(コラート)に移転し、2012年には生産を再開。時計製品だけでなく新たに2014年からは関数電卓や電子辞書などの生産も開始し、生産数量を順調に再拡大してきた。

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カシオ(タイランド)社長の臺場秀治氏

 現在のカシオ タイ工場の総面積は13万6300m2で、成形や基板実装、メタル製造などを行う第1工場、時計組み立てを行う第2工場、関数電卓や電子辞書の組み立てを行う第3工場の3つの工場で構成されている。従業員数は2017年3月時点で2653人で、カシオ計算機における戦略工場の1つとなっている。

 カシオ(タイランド)社長の臺場秀治氏は「洪水の影響から移転、生産の再立ち上げまでは大変だった。ただ、その後順調に再拡大することができた。関数電卓などの生産に加え、2016年にはメタル部品加工製造も開始し、生産品目や工程の拡大を進められている」と述べている。

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