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中堅中小製造業も海外展開が必須の時代、背後を支えるシステムに何を求める?製造ITニュース

SAPジャパンは中堅中小企業向けの戦略説明会を開催。2017年は大きく導入を伸ばしている状況を紹介し、今後さらに攻勢をかける方針を示した。

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 SAPジャパンは2018年4月10日、中堅中小企業向けの戦略説明会を開催。従来高機能だが高額であることから中堅中小企業にはなかなか受け入れられてこなかったが、さまざまな施策により2017年は大きく導入実績を伸ばした。

海外との関係が生まれた時に優位性を発揮するSAP

 ドイツのSAPは、グローバルERPのベンダーとして数多くの大手企業に採用されているが、中堅中小向けの提案強化を進めており、2017年は9300以上の新規顧客を獲得したという。日本でも従来、大企業向けの高額、高機能なERPシステムのイメージが強く、中小中堅企業向けではあまり受け入れてこられなかった流れがある。しかしここ数年さまざまな取り組みを強化してきたことにより、日本における新規中堅中小企業の顧客数は2倍に拡大することに成功したという。

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SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長 牛田勉氏

 SAPジャパン 常務執行役員 ゼネラルビジネス統括本部 統括本部長 牛田勉氏は「グローバル展開が大きなポイントだ」と述べる。

 「ビジネス構造そのものが大きく変わりつつあり、国内だけで完結するビジネスは中堅中小企業でも少なくなってきている。海外との関係も従来は工場などの拠点を設立するような形が一般的だったが、現地でのパートナーシップを組み合わせるなど、複雑な形となっている。こうした中でグローバルで使用できる業務システムとしてSAPが選ばれる機会が増えた」(牛田氏)

 製品戦略、パートナー戦略、マーケティング戦略のそれぞれで、中堅中小企業向けの施策を充実。従来のERPを中心とした業務用システムだけでなく、営業系の「Hybris」や人事系の「SuccessFactors」などの一連の業務において、中堅中小企業向けの製品を用意。2018年は新たに調達系の「Ariba」でも中堅企業向けの製品を用意し「中堅中小企業の一連の業務を全てカバーできる体制が整った」(牛田氏)とする。その他、パートナー面では個別パートナーの開拓を推進する他、マーケティング面ではAIを活用した効率的な新規開拓などを進めているという。

東京化成工業の場合

 「中堅中小製造業にとってSAPジャパンは高額」という見方も根強く残るが、牛田氏は「決して安い商品ではないのは理解しているが中堅中小企業でも活用を広げることで成果を出している企業も数多く存在する」と強調。事例として、東京化成工業の代表取締役社長 浅川誠一郎氏がSAPのソリューションの価値について紹介した。

 東京化成工業は1894年創業で120年以上の歴史を持つ老舗の化学薬品メーカーである。特に試薬に強く、大学や企業のR&D部門を顧客に持つ。従業員は800人で売上高は百数十億円だという。

 東京化成工業は2003年にグローバル展開の強化を念頭に、SAPのERPである「R/3」を導入。導入費用を抑えるためにカスタマイズをほとんど行わずに導入し、海外展開などで成果を生み出してきた。

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東京化成工業の代表取締役社長 浅川誠一郎氏

 浅川氏は「中堅規模の製造業にとっては大きな投資だったが、当時の課題だった生産遅れや納期遅れなども導入と同時になくなり、在庫の精度も高めることができるなど、大きな成果を手にすることができた。さらに海外拠点との関係強化も進めることができ、中国やインドなどもより早く立ち上げることができた。現在では海外の売上高比率が国内よりも多くなり、システムをベースに企業としての体質変革を実現できた」と意義について述べた。

 ただ、導入にかけた時間が少なくERPパッケージの全機能を導入できたわけではなかった。製造業は調達、試験、製造、物流、小分けなどが一連のチェーンとして機能しているが、これらの一部で他のシステムを活用することになった。結果的に、システム間のつなぎこみのところでカスタマイズが発生する。「分断されたところはR/3の外で開発したり、ライセンスを導入したりしていたが、システムが日に日に複雑化し、メンテナンス費用もR/3以外が大半を占めるほどの規模に拡大してしまっていた。さらにデータ活用についても熟練者でなければ分からない状況に陥った」と課題について述べる。

 こうした状況を解決するため新たに「S/4HANA」の導入を決定。「2016年に米国でのSAPのユーザーイベントに参加した際に現在改修を断念していた課題を解決するソリューションが数多くパッケージ化されていることを知った。これらを生かすことでより効率化を進められると考えた」と浅川氏は導入の理由について述べている。

 現状ではまだ導入を決定した段階だが、今後期待される効果として浅川氏は「データ分析をより効果的に活用したい。数万点にも及ぶ有機化学品を扱うので品質を保持するための管理が大変。利用期限があるためにこの管理を効率的に運用することで、大きなコスト削減効果が見込める」と述べている。

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