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産業機器向け無線フィールドバスを二分する「WirelessHART」と「ISA100.11a」IoT観測所(49)(2/3 ページ)

産業機器に用いられているフィールドバスのうち、無線対応の規格では「WirelessHART」と「ISA100.11a」が市場を分け合っている。市場に浸透した理由を含めて、これら2つの規格について解説する。

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無線の「WirelessHART」で「HART」を置き換え

 HARTにはリビジョンが幾つかあり、広く利用され始めたのはリビジョン5からだ。現在利用されているHARTデバイスの99%以上がこのリビジョン5ベースといわれている。そこからデジタル通信機能を強化したのがリビジョン6(バーストメッセージもこのリビジョン6で追加された)で、これに無線機能の拡充を図ったのがリビジョン7となる。

 リビジョン6をベースにTCP/IPとの融合を図ったのが「HART-IP」(図2)、そしてHART-IPをベースにイーサネットの代わりにIEEE 802.15.4を利用したのがWirelessHARTというわけだ。ただ、さすがに無線ともなると、遅延とかエラー対策などが必要となるため、タイムスタンプや同期サンプリング、Time/Condition Based Alarm、Exception Reportなどの機能が新たに追加されたのがリビジョン6とリビジョン7の主要な違いである。

図2
図2 さすがにアナログ通信に関しては従来のHARTでしか利用できないが、デジタルに関してはそのままイーサネット化が可能になった。プロトコルとしてはイーサネットとTCP/IPの上に、HART Application Layerが載る形となる

 IEEE 802.15.4を利用するとなると、当然インターネットの接続にはゲートウェイが必要であるが、そもそも図2でも分かるように、HART-IPの時点ですでにゲートウェイが必須だから、これはあまり問題にならない。また、WirelessHARTはあくまでデジタル通信のみで、アナログ通信はもちろん不可能であるが、これもHART-IPと同じである。接続方法はスター、メッシュ、マルチホップのいずれもサポートしており、自己修復機能も搭載されているために障害などに強いというメリットもある。2010年にはIEC 62591として標準規格化されており、特定のメーカーの独自規格では無くなっていることもメリットに挙げられよう。

 ただし、WirelessHARTの最大強みは、既に300あまりの企業が4000万台以上(2016年の数字)のHART対応機器を市場に送り出しており、その結果としてHARTプロトコル(とこれを採用した機器)が既に広く利用されているという事実だ。こうなると、昔導入したHART対応機器が壊れたので交換しようというときに、昔はHARTのリビジョン5対応機器(ただしデジタル接続)だったのを、同等の機能を持つWirelessHART対応機器に交換するといったシナリオが非常に有効になてくる。

 特に屋外の場合は配線の劣化も激しいから、機器と一緒に配線のやり直しも……というシーンで、WirelessHARTだと「電源だけ供給できれば大丈夫」(ものによってはバッテリー駆動なので電源供給も不要)というのは、導入する側にとってはコスト削減に大きく貢献するわけで、導入のメリットが非常に大きい。また、既に多くの企業がHART対応機器を量産しており、このネットワークを無線化するだけなので、利用できる製品が現実問題として多数あるというのもメリットに挙げられるだろう。

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