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OA機器メーカーから自動車業界への転職が増えている理由モノづくり業界転職トレンド(1)(1/2 ページ)

近年、OA機器業界から自動車業界に転職する人が増加している。どのような背景があり、なぜ自動車業界なのか。転職コンサルタントに聞いた。

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 日本におけるOA機器業界は、優良産業、安定産業と言われている。待遇も就労環境も比較的よい企業が多いとされ、就職の人気は高く、離職率は低い。また日本が強い業界の一つでもあり、日本のOA機器の性能は世界的にもレベルが高い。

 近年、そのOA機器業界から自動車業界に転職する人が徐々に増加している。どのような背景があるのか、なぜ自動車業界なのか。自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏に聞いた。

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クイック 人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャーの関寺庸平氏

変化するOA業界

 OA機器業界は、依然として安定産業ではあるものの、ペーパーレスの時代を迎えつつある中で、その成長には変化が見られる。また紙に印刷するプリンターの技術は、各社の切磋琢磨により現在までにほぼ完成されていると言っていいだろう。これからのプリンターは、付加価値やコストカットを中心に進むと考えられる。

 OA機器メーカー各社では、例えばOA機器と業務システムを組み合わせて業務改善の提案をしたり、プリンターなどの技術を活用して医療機器を作ったり、あるいは医療機器などの部品を提供したりと、新たな製品やサービスを広げる取り組みも行われている。

 OA機器業界から自動車業界への転職者が増加している現状について、関寺氏は「安定産業であるOA機器業界からは、今まであまり人が流出しなかったのだが、業界の変化を背景に転職を考える人が徐々に出てきている。近年、自動車業界が人材採用のフィールドを広げてきているため、OA機器で培ってきた高い技術を生かせる転職先として、自動車関連の企業を選ぶOA機器のエンジニアが増えてきているのだと思う」と話す。

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OA機器メーカーから自動車業界への転職者数の推移

自動車業界が採用のフィールドを広げている

 ではなぜ、自動車業界は採用のフィールドを広げているのか。

 もともと自動車の世界には機械系のエンジニアが多く、機械工学、自動車工学、航空宇宙工学など、機械系を学んだ新卒が自動車メーカーに就職するというのが比較的スタンダードであった。また自動車業界は、メーカーを頂点にティア1、ティア2といったピラミッド構造がはっきりしており、品質基準など自動車特有の知見も求められるため、キャリア採用においては業界内で探すという意向が強い傾向もある。

 しかし自動車業界の大きなトレンドの一つである、自動運転や先進安全の技術で必要になっているのは、画像処理や画像認識などどちらかというとソフトウェアや制御技術である。機械系エンジニアが多い業界内では、必要なスキルを持つ人材を確保しにくいという事情があり、業界外からの転職者を採用するケースが増えてきているのだ。

 とりわけOA機器業界には、今後の自動運転につながる技術領域に転用できるスキルを持っているエンジニア多い。印刷するためにモノを捉えて、それを印刷という形で正確に再現するOA機器は、高い精度の画像処理や画像認識が求められる。その技術は、自動運転の実現において重要なセンシング技術として転用することができるのだ。

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