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総計2300機種もの異品種少量生産、パナソニック佐賀工場が生み出す価値とはスマート工場最前線(2/3 ページ)

パナソニック コネクティッドソリューションズ社(CNS社)の直轄工場である佐賀工場は、2カンパニー、6事業部、17カテゴリーにわたる約2300機種もの生産を行っている。この異品種少量生産が最大の特徴となる佐賀工場は、CNS社がモノづくりソリューションを生み出すための課題発見の場にもなっている。

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「異品種少量生産」のカイゼンを実現する取り組みの数々

 製造業が大目標として目指す、顧客それぞれの要求を満たすマスカスタマイゼーションへの道筋で異品種少量生産は実現して行かなければならない課題だ。とはいえ、異品種少量生産を効率よく実現することは容易ではない。そのため、佐賀工場でもさまざまな取り組みを進めて、異品種少量生産のため日々の改善を図っている。

 例えば、ERPとの連携では、作業を見える化するデジタルアンドンや、データを見える化するトレーサビリティーを導入している。また、生産性を向上するために、低コストで工数を削減できる設備の開発にも取り組んでいる。これらの設備は「簡単なモノであれば数日、複雑なモノでも数週間で組み上げられる」(高橋氏)ということで、その時々の必要に応じて用意できるようになっている。

基幹システムと連携した仕組み生産性向上に向けた独自の設備開発の取り組み 基幹システムと連携した仕組み(左)と生産性向上に向けた独自の設備開発の取り組み(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック
ビス整列機しばらく振動させるとビスが整列した状態に 独自開発した設備の一例となるビス整列機(左)。青いケースにビスを入れてしばらく振動させると(中央)、ビスが整列した状態になる(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 さらに、この異品種少量生産という課題に多くの製造業が取り組んでいることから、佐賀工場はCNS社が製造現場の「“お役立ち”のインテグレーター」になるための実証実験の場にもなっている。

佐賀工場における実証実験
佐賀工場における実証実験(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 2012年に建て替えで建設された佐賀工場のI棟は、パナソニックの国内工場でも最新の建屋となる。主力製品の決済端末やICカードリーダーライターを中心に、実装から手加工、組み立て/調整検査、放送、倉庫の順に、ワンフロア―で一貫生産できる体制を構築している。

佐賀工場I棟のレイアウトコンセプト実装ラインの様子 佐賀工場I棟のレイアウトコンセプト(左)と実装ラインの様子(右)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 一番手前にある実装ラインでは、毎朝行う設備点検作業について、一般的な紙のチェックシートを用いた手法から、タブレット端末と音声アシスト技術を用いた手法に置き換えている。点検時間の短縮は30分から20分とあまり劇的ではないものの「音声アシストによって両手が使えてハンズフリーになり、設備の点検を正しいタクトで正しく確認できるという点で効果が大きい」(佐賀工場の説明員)という。また、実装ラインにはアナログ表示の計器もあるが、この手法であれば音声入力により記録を残せることもメリットになっている。

設備点検作業の様子作業支援ソリューションとして展示 タブレット端末と音声アシスト技術を用いた設備点検作業の様子(左)。作業支援ソリューションとして佐賀工場のショールームにも展示されている(右)。ヘッドセットは骨伝導技術を用いており、騒音の大きい工場内でも音声を確認しやすくなっている(クリックで拡大)

 I棟内のネットワークカメラは、パナソニックが推進している高速電力通信のHD-PLCによって接続されている。約250mの距離を100Vの電力線でつなげており「電力線がLANケーブルの代わりになっている」(佐賀工場の説明員)という。なお、工場内におけるHD-PLCの活用は100Vよりも3相200Vの方が需要が大きいが、現時点では国内での利用は規制されている。I棟では、政府の許可のもとで、3相200VのHD-PLCの実証実験も行っている。

HD-PLCでつなげたネットワークカメラの画面
HD-PLCでつなげたネットワークカメラの映像を大型ディスプレイに表示。ディスプレイの左下にHD-PLCユニットがある(クリックで拡大)

 製品と同梱する説明書のキッティング作業では、3Dカメラを用いた作業の可視化とポカヨケを行っている。液晶ディスプレイに出る指示に従って、モノ(部品)をピックアップしていくことになるが、指示と異なるモノに手を伸ばすと警告表示が出で指示が中断するようになっている。多数のモノを扱う場合、モノの置き場所が立体的に配置する場合もあり得るが、3Dカメラを用いて高さ情報を検知しているので対応可能だという。

説明書のキッティング作業の様子画面の指示に従って作業を行う作業台の上方には3Dカメラ 説明書のキッティング作業の様子(左)。画面の指示に従って作業を行えば作業順番が進んでいく(中央)。作業台の上方には3Dカメラ(インテルの「RealSense」)が設置されている(右)(クリックで拡大)

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