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製造業のデジタル変革は第2幕へ、「モノ+サービス」ビジネスをどう始動させるかMONOist 2019年展望(2/3 ページ)

製造業のデジタル変革への動きは2018年も大きく進展した。しかし、それらは主に工場領域での動きが中心だった。ただ、工場だけで考えていては、デジタル化の価値は限定的なものにとどまる。2019年は製造業のデジタルサービス展開がいよいよ本格化する。

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製造業がサービス化で二の足を踏む4つの理由

 日本の製造業がデジタルサービスビジネスに踏み込めない理由としては、以下の4つの理由があると考えられる。

 1つ目は、体制面や人材面の整備である。製造業のビジネスモデルが「モノ」を作るということに最適化しており、それ以外のビジネスモデルを作るのに、体制面や人材面などですぐに取り組めるものではないということである。特にデジタルサービスを提供するにはデータ基盤や関連システムの整備などが必要となる他、それぞれの製品にも関連する機能を盛り込む必要がある。すぐにはできないというのが現実である。

 2つ目が、ビジネスリスクが大きいという点だ。サービスビジネス構築は、基本的には新ビジネスの構築となるので、ベンチャーなどと同様に失敗が9割、成功が1割という世界となる。さらに第4次産業革命ともいわれる変革期である現在は、正解例が存在しない領域も多く、リスク低減のために参考になる事例が少ない。そのリスクで二の足を踏むケースが多い。

 3つ目が、ビジネスアイデアである。1つ目や2つ目の理由とも関係するが、「モノ」を売るということを主軸に考えてきた製造業は、「モノ」で価値を証明してそれを販売するというビジネスモデル以外の発想が今までにない場合が多く、そのアイデアを生み出す時点で苦戦するケースが多い。さらにそれを思い付いたとしても採算性が取れないという状況が生まれる。これらをどう乗り越えるかということである。

 4つ目が、他社との協力である。第4次産業革命ともいわれる変革の中で、成果を得るためには、1社だけで取り組むことは不可能である。そのために先述したスマートフォンのようなエコシステム作りが必要になるが、従来自前主義を中心としてきた中で、こうした複数企業での協業の枠組み作りが苦手とする企業が多い※)

※)関連記事:半導体露光機で日系メーカーはなぜASMLに敗れたのか

4つの課題を乗り越える兆しが見えた2018年

 ただ、こうした状況も乗り越える動きが見えつつある。1つ顕著な動きとして2018年に注目されたのが、製造業が外部のデジタル人材を積極登用するケースが増えているという点である。

 例えば、日本マイクロソフト会長からパナソニック コネクティッドソリューションズ(CNS)社社長となった樋口泰行氏や、SAPジャパンから入社し現在はパナソニック ビジネスイノベーション本部長を務める馬場渉氏、日本IBMから東芝に入社しデジタイゼーションCTOとなった山本宏氏、シーメンスから東芝のコーポレートデジタル事業責任者となった島田太郎氏、インテルから移りヤマハ発動機フェローになった平野浩介氏など、枚挙にいとまがない状況である。

 これらの人材を加えることで、人材面や外部ネットワーク面での強化を推進する一方、固定化された体制を壊し、デジタル時代に最適な基盤構築を進める動きが進み始めている。

 ビジネスアイデアの面でも「デザイン思考」などを含め、イノベーションを体制として生み出すための取り組みが本格的に進み始めている。各社がオープンイノベーション施設などを設置し、ベンチャー企業などの呼び込みを進めている他、政府や自治体なども独自施設などを用意し、新たなアイデアとそれを求める企業とのマッチングなどを進めている。

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2018年12月にAGCが発表した2020年に新たに建設する研究開発棟。「協創空間」とするという(クリックで拡大) 出典:AGC

 さらに、ビジネスリスクの点でもプラットフォーム間のデータ連携の枠組みなど、リスクを低減する仕組みづくりが徐々に進んでいる。スマートファクトリーの領域にはなるが、経済産業省などが主導し産業用IoT基盤である「FIELD system」「Edgecross」「ADAMOS」のプラットフォーム間連携などの枠組みなども見えてきた。協調領域と競争領域に分ける必要があるが、競争力につながらないデータについては流通させる枠組みが徐々に進みつつある。ユーザーの利点を考えれば、基本的にはベンダーロックインではなく、どの基盤であっても自由に価値を得られる仕組みが求められており、その環境に向けた取り組みが進む見込みである。

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IVIが中心となってまとめた産業用基盤のプラットフォーム間連携の枠組みのプレビュー(クリックでWebサイトへ)

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