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インフルエンザウイルス感染時の解熱の必要性を細胞レベルで証明医療技術ニュース

東北大学は、インフルエンザウイルス感染時の発熱に相当する、39〜40℃の高温下における呼吸器細胞の生存率を研究。感染時の治療において、解熱の必要性があると細胞レベルで証明した。

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 東北大学は2019年5月21日、インフルエンザウイルス感染時の高熱に相当する39〜40℃の高温下における呼吸器の細胞の生存率を調べ、感染時に解熱する必要性があることを明確にしたと発表した。同大学大学院医学系研究科 教授の山谷睦雄らの研究グループによる成果だ。

 研究では、インフルエンザウイルスに感染させた呼吸器の細胞と感染させていない細胞を、39〜40℃の高温と平熱時に相当する37℃の環境で培養。細胞の傷害性とインフルエンザウイルスの複製について調べた。

 実験の結果、インフルエンザウイルスを感染させていない細胞でも、5日間の高温培養後は37℃の培養下に比べて生存率が低下した。この他、高温による細胞傷害によってインフルエンザウイルスの増殖を抑制すること、高温になっても37℃の培養時と同様に細胞は感染後に傷害を受けることが分かった。

 インフルエンザウイルスに感染した際の発熱には、ウイルスの増殖抑制と免疫反応活性化の役割がある。一方で、長時間の高熱は小児のけいれんや高齢者の脱水の原因となるため、臨床現場では重症化を防ぐ目的で解熱剤が使用されてきた。しかし、高熱が人体に与える影響については科学的に示されておらず、発熱の維持と解熱のどちらが患者にとってより有益なのかはあいまいなままだった。

 今回の研究で、インフルエンザウイルス感染時の治療における解熱の必要性が細胞レベルで証明された。東北大学は、特に高熱による悪影響を受けやすい小児や高齢者などのインフルエンザ患者については、重症化を防ぐ治療促進への貢献が期待できるとしている。

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インフルエンザウイルスに感染した細胞では40℃培養で3日(72時間)後には生存率が低下し、5日(120時間)後にはさらに低下。感染していない細胞でも40℃培養で5日後には生存率が低下した。(クリックで拡大) 出典:東北大学

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