「大事なのはIoTではない」自動化と熟練の技による“夢工場”目指すオークマ:MONOist IoT Forum 名古屋2019(前編)(2/2 ページ)
MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパンの産業向け4メディアは2019年7月10日、名古屋市内でセミナー「MONOist IoT Forum 名古屋」を開催した。本稿の前編では、オークマ 専務取締役 領木正人氏による基調講演「IoTが拓く“スマートファクトリー”の展望」の内容をお伝えする。
インダストリー4.0のコンセプトを具現化したDS2
DS2はまず2017年に部品工場が稼働。DS2部品工場の建屋面積は1万1000m2で、小型、中型のCNC旋盤や研削盤を製造する(※)。
(※)関連記事:オークマの“夢工場”はスマート化とロボット化で花開く
DS2の建設に当たり、インダストリー4.0のコンセプトから実現すべきポイントを洗い出したという。領木氏は「超多品種少量生産が要求される工作機械では、インダストリー4.0での理想とされるマスカスタマイゼーションの実現が大きな価値となる。ただ、これを実現するには、自動化、無人化、知能化、工程集約などを実現し生産性向上を達成する必要がある。また生産工程の制御性能を向上させ精度を高める一方で、工場全体の最適化などを実現しなければならない。これらに必要なものとして、われわれが生産し、自らの生産活動にも使用する工作機械のスマートマシン化を実現する他、ロボットやIoTを高度に活用したスマートマニュファクチャリングが必要になる」と考えを述べる。
DS1では1000品目の生産項目となるが、DS2では4000品目の生産項目がある。この状況でDS1と同様に生産性2倍、リードタイム半減を目指した。
「スマートマシン化」では、AIをCNCに搭載し機械診断を実現する「OSP-AI」の活用や、切削、研削に加え、積層造形やレーザー焼き入れ工程を集約する超複合加工機などの導入を進めた。
また「スマートマニュファクチャリング化」では、ロボットやAGV(無人搬送車)、自動物流システムを駆使し、搬送工程のほぼ完全自動化を実現。さらに、DS1では稼働状況などは1日単位での情報把握だったが、DS2ではIoTをより高度に活用することで、1時間単位、1分単位で情報収集し共有できる仕組みを作った。物流管理面では全ての部品にワークIDを装着し、正確に所在を管理できるようにした。これらを管理する新物流管理システムを導入し、加工が完了した部品を加工優先順で次工程に回すようなことが可能となり、生産性改善につなげられるようになったという。
領木氏は「一番大きな効果があったのは、時間単位や分単位での情報共有。軌道修正を高頻度で行えるようになり、圧倒的な効果を生み出すことができた」と手応えについて語る。これらの取り組みにより、24時間・週7日稼働による生産性は1.3倍向上した他、現場の改善活動による機械稼働率は1.35倍に向上したという。総合的な生産効率としては1.75倍向上することができたという。
重要なのは「現場の進化」
これらのさまざまな先進技術を活用する一方で、領木氏は「最も考えなければならないのは、IoTやAIを使おうということではない。どうやって現場を進化させるのかという観点が何よりも重要だ」と強調する。
「TPMなど昔ながらの手法を捨てるわけではない。これらは基本で、4M分析などを行いつつ、情報取得や活用の面でIoTを活用するという考えだ。IoTがなかった時代でもうまくやっていた現場は、IoT活用で理想とされるような動きができていた。そういう現場ではIoTを単純に入れても伸びない。従来うまくできていなかったところは、こうした基本的なことができていなかった部分なので伸びる。それぞれの現場の状況を見極めながら、壁を破っていくということが重要だ」と領木氏は語っている。
(後編に続く)
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