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苦節8年、ラベル印刷市場で勝負をかけるOKIデータのカラーLEDラベルプリンタPro1050/Pro1040開発秘話(1/3 ページ)

ビジネスプリンタ市場に続く、次なる成長のステージとして、ラベル印刷市場向けにカラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」「Pro1040」を投入したOKIデータ。同社はなぜ未知の領域であるラベル業界に進出するのか。その狙い、そして苦節8年を費やして完成させたPro1050/Pro1040の特長を製品担当者に聞いた。

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 オフィス環境に欠かせないビジネスプリンタ。ビジネスシーンにおいて、紙文化が完全になくなることはないものの、デジタルへの移行、ペーパレス化の波により、市場の頭打ち感は否めない。

 矢野経済研究所によるプリンタ世界市場に関する調査(2019年)では、新興国での需要増加はあるものの、オフィス向けプリンタの出荷台数は微増にとどまり、今後飛躍的な成長が難しい現状(横ばいが継続)であることが示されている。

 そうした中、ビジネスプリンタ製品を手掛けるメーカー各社はコア技術を武器に、次なる成長のステージを模索しようとしている。

ラベル印刷市場を狙うOKIデータ

 プリンタメーカーの1社、OKIデータでは、これまで培ってきたプリンタ・複合機関連技術、中でも世界初のプリンタ用LEDヘッド開発の実績に基づくコア技術を生かし、産業用途向けに、「世界初」(同社)をうたう幅狭カラーLEDラベルプリンタを開発。ラベル・シール印刷業者の他、製造、製薬、食品、飲料メーカーなどに向けて、カラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」(5色トナーモデル)、「Pro1040」(同4色モデル)の出荷を2019年6月から開始している。

カラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」(5色トナーモデル)
カラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」(5色トナーモデル)[クリックで拡大]

 なぜ、ラベル業界に注目したのか。その狙いについて、OKIデータ インダストリー事業本部 スペシャルティプリント事業部 部長の福島浩之氏は「商業印刷の中で、ラベル印刷の市場は比較的伸びている。また近年、多品種小ロット生産品のラベル印刷ニーズが増え、デジタル化の機運の高まりもそれを後押ししている。そうした需要、市場要求に応える低価格帯プリンタとしてPro1050/Pro1040を展開していきたい考えだ」と語る。

Pro1050/Pro1040でプリントしたラベルの活用サンプル
Pro1050/Pro1040でプリントしたラベルの活用サンプル[クリックで拡大]

 ラベル印刷というとインクジェット方式のプリンタもあるが、トナー方式を採用するPro1050/Pro1040は、インクジェット方式のように目詰まりなどが発生せず、メンテナンスの負荷が小さくて済む。さらに、耐候性、耐水性、変色などに強いこともあり、商品ラベルはもちろんのこと、識別ラベルやGHSラベルといった産業用途での利用にも適しており、多彩なニーズに応えられるとする。

 従来、生産者が印刷業者に商品ラベルの印刷を外注する場合、最小ロットで数千〜1万枚程度というのが一般的で、出荷数の少ないパーソナライズ品や季節/期間限定品、地域限定品といった商材であっても、大量の商品ラベルを在庫としてストックしなければならないという現状があった。一方、自社にラベルプリンタを導入しようにもトナー方式のものになると2000万〜3000万円クラスの高額なハイエンド機種しか存在せず、容易に導入することができなかった。

 これに対し、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトの5色対応モデルであるPro1050の販売価格(税別)は149万8000円、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色対応モデルであるPro1040の販売価格(同)は99万8000円と非常に安価。これであれば価格面で敬遠していた企業にとって、導入の障壁もぐっと下がり、大量のラベル在庫を抱えることなく、内製で最小ロットのラベル印刷が行える。

カラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトの5色に対応する
カラーLEDラベルプリンタ「Pro1050」はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトの5色に対応する[クリックで拡大]

 また、デジタル化の波、そして人手不足の問題から印刷業者が自社の業務装置として、Pro1050/Pro1040を導入するケースも大いに期待できるという。「トナー方式のラベルプリンタは、これまでハイエンド機種の下の価格帯が存在していなかった。この価格帯であれば印刷職人が多い日本の印刷業者も導入しやすい。印刷職人の人手不足問題が先行している欧米では、デジタル化が急がれていることもあり、Pro1050/Pro1040の導入の7〜8割が印刷業者となっている。一方、日本では印刷業者が5割、生産現場が5割といった状況だ」(福島氏)。

苦節8年、製品化までの長く険しい道のり

 現在、生産現場、そして、ラベル印刷の品質に厳しい目を向ける印刷業者が、Pro1050/Pro1040に対して高い関心を寄せるようになってきたというが、ここまでの道のりは長く険しいものだったという。

 OKIデータ内でラベルプリンタの製品企画が持ち上がったのは2011年11月のこと。冒頭の通り、ビジネスプリンタ市場の大きな成長が今後難しくなる中、OKIデータはコア技術であるプリンタ用LEDヘッド技術を生かし、新たな市場で存在感を発揮できる製品開発を模索。その中で、比較的好調なラベル印刷の市場性に着目し、開発をスタートさせた。だが、ビジネスプリンタとラベルプリンタは似て非なるものだ。

 トナー方式のビジネスプリンタでいうと、一般的にレーザー光源を使用したレーザープリンタがある。ポリゴンミラーを使用し、レーザーを走査するものが主流だが、OKIデータのビジネスプリンタはLEDヘッドを光源としている。過去、いくつかのメーカーがLEDヘッドを光源とした製品を展開してきたが、“連続紙(ロール紙)を印刷できるトナー方式のプリンタ”として製品化しているのは、OKIデータのみだという。このコア技術であるプリンタ用LEDヘッドをPro1050/Pro1040でも採用することで、装置の小型化を実現するとともに、高解像度プリントを可能にした。

「Pro1050」に搭載されているプリンタ用LEDヘッド
「Pro1050」に搭載されているプリンタ用LEDヘッド[クリックで拡大]
ロール状の連続紙(ラベル用媒体)を搬送する
ロール状の連続紙(ラベル用媒体)を搬送する[クリックで拡大]

 さらに、ラベルプリンタの場合、ロール状の連続紙を真っすぐ搬送する必要があるが、ここにもビジネスプリンタで培った技術が生かされている。「これまで普通紙をメインとするビジネスプリンタを手掛けてきたが、ラベルプリンタとなると、さまざまな種類のラベル(媒体)、それもロール状の連続紙に対応する必要がある。ビジネスプリンタの開発で紙を真っすぐに搬送するストレートパスの技術を培ってきたが、似たような構成とはいえ中身は全く異なる。製品化まで多くの時間を費やすことになった」と、OKIデータ インダストリー事業本部 スペシャルティプリント事業部 シニアスペシャリストの村上龍也氏は語る。

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