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政府の新型コロナ緊急経済対策、製造業はどんな支援を受けられるのか製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

日本政府が緊急事態宣言と合わせて発表した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」は事業規模で総額約108兆円に上る。同経済対策において、製造業はどのような支援を受けられるのだろうか。

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強靱な経済構造の構築

 「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」と「雇用の維持と事業の継続」を「緊急支援フェーズ」とすれば、残りの3つの柱は「V字回復フェーズ」に当たる。「次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復」については、国内の人の流れと街の賑わいを作り出し、消費需要を大胆に喚起することが目的となっており、観光・運輸業、飲食業、イベント・エンターテインメント事業を主な対象とした施策が並んでいる。

 製造業にとってより関わりが深いのは「強靱な経済構造の構築」だろう。緊急経済対策の発表文では以下のように述べており、COVID-19によるピンチをチャンスに変えて、将来の感染症に対して強靱な経済構造を構築し、中長期的に持続的な成長軌道を確実にさせたい考えだ。

 世界経済が甚大な影響を受けている中にあっても、保護主義に陥ることなく、TPP11、日EU・EPA及び日米貿易協定等を通じ、自由貿易を推進し、国内産業の高付加価値化を進めることが重要である。感染症の拡大の影響により寸断し、ダメージを受けたサプライチェーンについて、経済安全保障の観点から、生産拠点の国内回帰や多元化を強力に支援するとともに、事態収束後に再び継続的に外需の取込みを図るべく、海外展開企業の事業の円滑化や農林水産物・食品の輸出力の維持・強化に取り組む。また、今回の事態の中で進んだ、あるいはニーズが顕在化したテレワークや遠隔教育、遠隔診療・服薬指導等リモート化の取組を加速し、我が国のデジタル・トランスフォーメーションを一気に進めるとともに、脱炭素社会への移行も推進する。

 その代表的な施策となるのが「サプライチェーン改革」だ。国内製造業のサプライチェーンは、中国や東南アジアをはじめとするグローバルのサプライチェーン連携によって成り立っている。COVID-19の感染拡大によって、マスクなどの衛生用品を含めた日本のサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことを踏まえて、複数年にわたる取り組みによって、国内回帰や多元化を通じた強固なサプライチェーンの構築を支援するとしている。

 具体的な政策としては経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」が挙げられる。一国への依存度が高い製品・部素材について、生産拠点の国内回帰などを補助する内容で、補助率は中小企業などが3分の2、大企業が2分の1、補助対象経費は建物・設備の導入費となっている。

「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の事業イメージ
「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の事業イメージ(クリックで拡大) 出典:経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

 また、経済産業省の「海外サプライチェーン多元化等支援事業」でも、日本への製品・部素材の供給を目的とする海外製造拠点の複線化などに向けた取り組みを支援する。補助対象は、日本企業によるASEAN諸国への設備投資、実証事業、事業実施可能性調査などで、補助率は中小企業等グループが4分の3、中小企業が3分の2、大企業が2分の1、となっている。

「海外サプライチェーン多元化等支援事業」のイメージ図
「海外サプライチェーン多元化等支援事業」のイメージ図(クリックで拡大) 出典:経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

 これらの施策は、国内製造業のサプライチェーンにおける中国依存からの脱却を目指すものといえるだろう。

 他にも、マスクやアルコール消毒液、防護服、人工呼吸器、人工肺など国民が健康な生活を営む上で重要な製品等の国内への生産拠点等整備の補助率の引き上げ(中小企業が4分の3、大企業が3分の2)、海外依存度が高い医薬品原薬などの国内製造拠点の整備支援(補助率2分の1)なども施策として用意されている。

 なお、経済産業省は今回の緊急経済対策に合わせて「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」という文書を公開している。経済産業省関連の各施策の連絡先についてはこの文書を確認してほしい。

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