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スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩いまさら聞けないスマートファクトリー(1)(1/4 ページ)

インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。

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はじめに

 インダストリー4.0や第4次産業革命などが日本でも注目を集めるようになってから既に5年以上が経過しています。その中でもスマートファクトリー化は多くの製造業が積極的に取り組んできた領域です。しかし、最近の動きを見ていると、スマートファクトリー化の進捗は“停滞”を感じさせる状況が生まれています。

 それを色濃く感じたのが、経産省などが毎年発行している「2020年版ものづくり白書」の調査データです。「ものづくり白書」では、毎年製造業のデータ活用をテーマに大規模な調査を行っていますが、「製造工程のデータ収集に取り組んでいる」とする企業の比率は2017年度をピークに減少傾向を示しています。また、その他のデータ活用についての調査項目についても横ばいや減少傾向を示しており、“停滞”を示すような内容になっています。

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製造業のデータ活用についての調査結果(クリックで拡大)出典:2020年版ものづくり白書

 しかし、先進企業の事例などを見ると、着実にスマートファクトリー化による成果は広がりを見せています。この状況が何を示しているのかというと、スマートファクトリーに積極的な企業では具体的な成果を次々に生み出しているにもかかわらず、そうではない企業は意欲を下げている“分断”が生まれていると考えます。

 この意欲を下げている”要因として、「スマートファクトリー化が明確な成果に結び付きにくい」ということが挙げられます。MONOistを含むアイティメディアのモノづくり系メディアで2020年6月17日〜7月13日に実施しました「つながる工場・製造業IoT」についての読者調査の結果(※)(総回答数564件)を見ると、「つながる工場」への取り組み状況については63.1%が「取り組んでいる(または取り組む予定)」としていました。しかし、この「取り組んでいる(または取り組む予定)」の回答者に「期待していた価値が十分に得られているか」を聞くと「いいえ」が51.9%となり、半分以上が求める成果を得られていないという状況が示されています。

(※)関連記事:読者調査「『つながる工場』は実践フェーズに移行、課題は『コスト・人材・費用対効果』」

photophoto 「つながる工場」へ取り組む意向は6割以上があるのに対し、期待通りの成果を得られているのはその半分以下という結果となっている(クリックで拡大)出典:Techfactory「『つながる工場』は実践フェーズに移行、課題は『コスト・人材・費用対効果』」

 デジタル技術などを活用し、人の作業負荷を大きく低減するスマートファクトリー化は、労働人口減少が続く日本の製造業にとって必要な動きだと考えますが、そこには「成果を得る」ということがボトルネックとなっているため、改めて「成果を得やすくする」ということと「正しい期待と成果を位置付ける」という点において、モノづくりメディアとして再整理が必要なのではないかと考えました。

 そこで本連載は「いまさら聞けないスマートファクトリー」として、あらためて“あの方たち”に登場いただき、スマートファクトリーでの考え方を再整理し、「期待」と「成果」の位置付けや進め方などを伝えることで、着実にスマートファクトリー化を進めていけるような環境作りに貢献したいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介していくつもりです。

 登場するのは「いまさら聞けない第4次産業革命」でもおなじみの矢面辰次郎氏と、ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究する印出鳥代氏です。

 従業員300人規模(少し成長しました)の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長でIoTビジネス推進室室長である矢面辰二郎氏は、社長の特命を受け同社のデジタル変革に向けてさまざまな取り組みを進めています。もともと生産技術部長だった矢面氏は、スマートファクトリー化などに取り組みつつも、その知見を生かしIoTビジネス推進室室長も兼任し、徐々に成果を残し始めています。

 しかし、最初から力を入れて取り組んできたスマートファクトリー化については、最近停滞感があるようです。あらためてスマートファクトリーとは何で、どういうことを考えて取り組むべきなのでしょうか。それではどうぞ最後までお付き合いください。

本連載の登場人物

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矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)

自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長兼IoTビジネス推進室室長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、どっぷりのめり込む。最近閉塞感にさいなまれている。


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印出 鳥代(いんだす とりよ)

ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。インダストリー4.0などを中心に製造業のデジタル化についてのさまざまな疑問に答えてくれる。サバサバした性格。


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。

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