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新型コロナからの新車生産の回復に水を差す、半導体不足の影響自動車メーカー生産動向(1/2 ページ)

自動車生産に半導体の供給不足の影響が広まっている。日系乗用車メーカー8社が発表した2021年1月のグローバル生産実績は、トヨタ自動車、日産自動車を除く6社が前年実績を下回った。なかでもSUBARU(スバル)は半導体不足の影響が大きく、前年同月比で3割近い減産を余儀なくされた。

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 自動車生産に半導体の供給不足の影響が広まっている。日系乗用車メーカー8社が発表した2021年1月のグローバル生産実績は、トヨタ自動車、日産自動車を除く6社が前年実績を下回った。なかでもSUBARU(スバル)は半導体不足の影響が大きく、前年同月比で3割近い減産を余儀なくされた。

 ただ、半導体不足の影響による生産調整の規模は各社によってバラつきが大きいのが実情で、結果としてグローバル生産の順位も変動し、2019年11月以来14カ月ぶりに日産がホンダを抜き2位となった他、ダイハツ工業や三菱自動車も順位を上げた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大から着実に回復を続けてきた自動車生産だが、ここにきて半導体の供給不足による影響が表面化し始めており、回復に水を差す格好となっている。さらに足元では福島県沖地震(2021年2月13日発生)によるサプライチェーンへの影響も大きく出ていることから、2月以降は一層厳しい状況も予測される。

2021年1月の国内乗用車メーカーの生産実績
国内 海外 (うち北米) (うち中国) 合計
トヨタ 239,794 501,910 162,614 151,363 741,704
▲ 6.2 9.8 2.3 41.1 4.0
日産 56,169 315,363 98,492 135,777 371,532
▲ 14.7 6.2 ▲ 7.5 31.0 2.4
ホンダ 49,764 301,912 111,778 136,271 351,676
▲ 18.0 ▲ 7.1 ▲ 27.2 27.7 ▲ 8.8
スズキ 77,935 187,350 - - 265,285
▲ 1.5 ▲ 14.7 - - ▲ 11.2
ダイハツ 80,748 47,152 - - 127,900
▲ 3.4 ▲ 14.8 - - ▲ 7.9
マツダ 71,980 39,229 13,197 21,510 111,209
▲ 12.1 ▲ 11.2 ▲ 32.5 26.2 ▲ 11.8
三菱自 38,463 52,282 - 6,987 90,745
▲ 21.0 ▲ 11.5 - 1.2 ▲ 15.8
スバル 38,025 25,578 25,578 - 63,603
▲ 25.4 ▲ 34.1 ▲ 34.1 - ▲ 29.2
合計 652,878 1,470,776 411,659 451,908 2,123,654
※上段は台数、下段は前年比。単位:台、%。北米は、米国、カナダ、メキシコの合計

 世界販売台数では、トヨタが唯一1月として過去最高を記録するなど、回復の力強さを示した。その一方で、国内生産は8社全てが前年割れとなった。海外生産はトヨタ、日産の2社がプラスで、トヨタは1月の過去最高を更新した。地域別では、北米は半導体不足の影響が顕著で大幅減が目立った。中国は2020年1月がCOVID-19感染拡大や春節による稼働日減少などの影響で市場が大きく落ち込んだこともあり、大幅なプラスとなった。東南アジアは、主要生産拠点のタイは回復しているがインドネシアは低調など、依然として国によってバラつきが出ている状況となっている。

 メーカー別に見ると、トヨタの1月のグローバル生産台数は、前年同月比4.0%増の74万1704台と5カ月連続で増加した。海外生産は同9.8%増の50万1910台と5カ月連続のプラスで、1月としての過去最高となった。地域別では、主力市場の北米は半導体不足の影響で生産調整を実施したものの、「RAV4」「セコイア」「シエナ」などの堅調な販売に支えられ同2.3%増と2カ月連続で増加した。

 アジアでは、前年同月比23.3%増と5カ月連続のプラスだった。前年実績が低迷した中国が「カローラ/レビン」「カムリ」「アバロン」など主力モデルの販売好調で同41.1%増と急伸した他、東南アジアの主力拠点であるタイも好調を維持し、インドもプラスを確保した。インドネシアは同32.7%減と依然として大きく減少している他、マレーシアやベトナムも前年割れとなったが、その他の国はプラス転換を果たしており、アジア全体で見ると回復傾向が表れている。欧州は、ハイブリッド車は好調だが各国のロックダウンの影響により同8.7%減と前年割れとなった。

 海外生産が好調な一方、国内生産は前年同月比6.2%減の23万9794台と5カ月ぶりのマイナスだった。国内市場向け「ハリアー」「ヤリス」といった新型車の販売好調や旺盛な輸出需要は続いているものの、トヨタ自動車九州で降雪による稼働調整を実施した他、物流オペレーショントラブルによる部品供給の不具合で一部工場のラインを停止したことが影響し、前年割れとなった。

日産

 日産の1月のグローバル生産は、前年同月比2.4%増の37万1532台と2カ月連続で前年実績を上回った。海外生産は同6.2%増の31万5363台と2カ月連続のプラス。けん引役は最大市場の中国で、春節の影響で低迷した前年実績に加えて「シルフィ」の販売好調などにより同31.0%増と大幅増を記録し、4カ月連続のプラスだった。ただ、海外生産全体で見ると、メキシコが同0.3%増と辛うじてプラスを確保しただけで、米国は同16.7%減、英国は同0.9%減、スペインは同48.0%減と相次いで前年割れとなっており、依然として厳しい事業環境であることは変わっていない。

 国内も冴えない状況が続いている。国内生産は前年同月比14.7%減の5万6169台と24カ月連続のマイナス。2020年5月を底に着々と回復していたが、1月は減少幅が12月比で8.6ポイント悪化する格好となった。なお、日産は半導体不足による生産台数への影響を公表していないが、国内市場の戦略モデルである新型「ノート」を2020年末に発売し、受注も好調ながら、生産ペースは伸び悩んでいる状況だ。

ホンダ

 ホンダでは、半導体不足がトヨタや日産より大きく響いている。国内工場と北米工場で生産調整を実施しており、ホンダの1月のグローバル生産台数は前年同月比8.8%減の35万1676台と5カ月ぶりに前年実績を下回った。このうち国内生産は、同18.0%減の4万9764台と5カ月ぶりのマイナス。半導体不足で「フィット」を減産した他、「N-BOX」や「フリード」などの国内販売が減少した。輸出も同53.9%減と低迷。北米向けが同80.1%減、台数ボリュームの大きな欧州向けも同54.8%減と伸び悩んだ。

 海外生産も、前年同月比7.1%減の30万1912台と5カ月ぶりにマイナスへ転じた。要因は主力市場の北米で、半導体不足による生産調整を実施した結果、同27.2%減の大幅減となり、3カ月ぶりに前年実績を下回った。このうち米国が同29.2%減で7カ月ぶりのマイナスだった。欧州も同37.3%減と2カ月連続で減少した。一方、国別で最多の生産を誇る中国は同27.7%増と8カ月連続で増加。アジアトータルでも同15.0%増と2桁増を記録し、7カ月連続で増加した。

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