検索
連載

ニューノーマルに必須となる柔軟性、求められる「スモールスタート」ポストコロナの製造業IT戦略(4)(1/2 ページ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載。第4回となる今回は、「ニューノーマル」において必要な姿勢として定着する「スモールスタート」について解説します。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした「withコロナ」のニューノーマル時代において、製造業にどのような変革が必要となるのかを考える本連載

 前回は、コロナ禍による「危機」に対する「長期対応」として必要な「ニューノーマル」でどのような世界になるのかを解説しました。第4回となる今回はこの「ニューノーマル」の世界で必要な姿勢として定着する「スモールスタート」について解説します。

「ノーマル」の在り方が変わる中で求められるもの

企業によっては目の前のことに対応することに精いっぱいで、生き残ることだけに集中し、長期的で大切なイニシアチブは考えられない状況にあるかもしれません。また、他の企業では不確実な未来の世界に対してどのように備えて準備すればよいのか、そしていつノーマルな世界に戻るのかを心配しているかもしれません。しかし、「ノーマル」といっても、この危機がいつまで続くかもはっきり見えないうえ、今までの世界とは全く異なるノーマルになると思われます。

 この言葉は、今から約12年前のリーマンショック時に、ある米国のコンサルティング会社が発していた言葉です。まるで今発せられた言葉であるかのように、現在のコロナ禍の世界でいわれていることのように感じます。

 さて、COVID-19に襲われた2020年前半のパンデミック初期、多くの企業はビジネスの一部または大部分の機能のデジタル化を進めました。自由に外出や移動ができなくなり、特に海外への移動には強い制限が加わっています。国をまたぐ移動は現在も強い制限が続いていますが、こうした状況で顧客向けサービスを円滑に提供するには、リモート対応を行う仕組みが必要です。そのため、歴史的に記録に残るほどデジタル化が進んだ1年となりました。

 一般向け、ビジネス向けそれぞれのあらゆる領域で、従来であれば5年かかるくらいのデジタルシフトがわずか数週間で起こったといえます。コロナ禍により、消費者の行動や希望するインタラクションの方法は大きく変わりました。おそらく、この変化はこれからも続くでしょう。将来コロナ禍が去ったとしても、コロナ禍以前の「ノーマル」とコロナ後の「ノーマル」の姿は全く違うものになると考えます。消費者はデジタル化をベースとしたさまざまなインフラを利用することをやめることはないでしょう。

 このように、そもそもの「ノーマル」の在り方そのものが変化する中で、これまでの方法で需要の回復速度を予測することは難しくなります。また、それぞれの業界や地域、企業によってコロナ禍によるダメージが異なるため、影響度や回復傾向も異なってきます。業界によっては一気に回復して増大した需要に対応するため、サプライチェーンのキャパシティーを増やす必要があるかもしれません。また同時に、キャッシュフローのコントロール、オペレーションコスト、固定費、変動費の管理も必要になるかもしれません。一方で、引き続き需要が低迷し続ける市場もあるかもしれません。このように変化が読めず、さらに急速に起こる状況に柔軟に対応するためには、従来以上の範囲でデータ活用の仕組みと分析が不可欠となります。既存のモデルや分析方法では対応が難しいかもしれません。

ニューノーマル時代の課題解決アプローチ

 これまでの課題解決のアプローチは、まず課題を特定し、それに対してソリューションを導入するやり方でした。

 例えば「バックオフィス業務の効率化」という課題があった場合、その解決方法として「適用できるソリューション」を探し出します。効率化には業務の自動化が有効であり、それを実現するためにRPA(Robotic Process Automation)ソフトウェアを導入することが「適用できるソリューション」だとします。そうすると、次のステップでは世の中に普及しているRPAソフトウェア製品を調べて、それぞれの製品に対して比較・評価をします。

 細かい評価項目を用意して、それぞれの項目に対して点数をつけたり、メリット・デメリットをコメントしたりして評価します。評価が終わったら選定されたソリューションの導入を検討します。導入ベンダー向けに細かい仕様などを明記した提案依頼書(RFP)を出し、ベンダーから提案書を受け取ったり、提案プレゼンを受けたりします。提案の評価項目も抜け漏れがないように詳細な評価項目を用意して、それぞれの基準で評価します。このような一連の長い準備期間を経て、いよいよ導入に入ります。

 導入プロセスは、要件定義から始め、ビジネス側が必要とする業務要件、機能要件、その他非機能要件などの多岐にわたる要件を時間をかけて確認します。要件定義書などのドキュメントを用意し、確認できた内容で合意を取ります。用意された要件定義書を基に開発作業に入ります。開発は要件に基づいて設計文書を用意し、設計文書に抜けや不具合はないか、数回のレビュー作業を行います。設計文書の作成が終わったら、ようやく開発作業に入り、実装します。

 一連の開発作業が終わったら、テスト仕様書に基づき、単体テストを行います。単体機能に問題ないことが確認できると、次はプロセスの一貫性を担保するため、全体の機能に抜け漏れがないかを確認する統合テストを行います。テストのために、ユースケースに従ったテストシナリオとテストデータを準備します。全体の確認が終わりましたら、いよいよユーザーからの受け入れテストに入ります。

 プロジェクトの構想から設計、実装、そして最後にユーザーによるテストというステップが必要なため、最初に要件として依頼を出してから結果を得るまで、規模によって数カ月から数年かかる場合もあります。このような期間が経過してからようやくソリューションが形のあるものになったとしても、内容が当初の要件と異なるものであったり、またこの間にビジネス環境が変化していて、課題や要件そのものが変わってしまっていたりすることも珍しくないのです。

 コロナ禍において、また今後訪れるニューノーマル時代において、このようなプロジェクトの進め方で、変化に柔軟に対応することができるでしょうか。従来型のデジタル技術採用の在り方を大きく変えることが求められていることが分かります。

       | 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る