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» 2010年07月13日 11時00分 UPDATE

第21回 設計・製造ソリューション展レポート(3):3次元モデルを余すところなく生かす時代 (1/3)

今回は、CADやCAEのベンダの出展概況や製品を紹介する。各社それぞれ少しずつ異なる「3次元の生かし方」にも注目!

[小林由美,@IT MONOist]

 いまのCAD業界は、モデルを作る時代から、生かす時代にすっかりシフトした。3次元モデリング技術が成熟してきた背景もあるが、今日の製造業がたたきつけられている逆境下で、これまでのモノづくりの在り方そのものを見直さなければ、生き残りは厳しい――そんな市場ニーズもまた一因だ。

 CADのモデルを生かす仕組みについては、デジタルプロトタイプ、PDM、PLM……など、CADベンダ各社でそれぞれ呼び方やコンセプトが異なる。PLMという仕組み1つ取っても、各社で少しずつ、概念が異なる。DMS2010における展示でも、その色が如実に表れていた。今回はそんなCADベンダの企業ブース概況や製品情報を紹介していく。

 記事後半では、外資系ベンダの中で奮闘する、数少ない国産CAEベンダたちのブースにスポットを当ててみた。

日本は、このままでは勝てない

 図研は2010年5月、3次元軽量フォーマットXVLの開発元 ラティス・テクノロジー(以下、ラティス)と資本提携契約を締結。DMS会期中の同年6月24日には、ラティスの技術を活用した同社の基板設計CAD「CR-5000 / Board Designer」用XVL変換ツール「BD-XVL Converter」(無償)も発表した。

 今回の展示やブースのステージプレゼンテーションでも、ラティスの3次元ビューアの仕組みも組み込んだ同社のモノづくり支援サービス「PreSight」や、それが製造業で必要とされる背景について、図研 取締役 営業本部長 上野 泰生氏が同社ブース内ステージセッションで語った。

写真1 写真1 図研ブースのステージセッションで登壇する同社取締役 営業本部長 上野 泰生氏

 「もともと日本はモノづくり(自動車、エレクトロニクス系)の業界で非常に強かったのですが、ここのところは――特にデジタル家電業界においては――中韓メーカーのキャッチアップが速く、長期的に収益を上げることが難しくなっています。これは技術力の問題というより、昨今いわれているのは、マーケティング力の問題です」(上野氏)。

 上野氏は2008年後半のリーマン・ショック以降は、メインターゲットは日本国内や欧米から新興国へシフトしていると述べた。「(日本の企業が)新興国の価値基準を分からないままでビジネスをやってきたことが敗因だと思います。日本企業の多くは海外に拠点を持ち、ビジネスをしてきていますが、各国に合った製品を作っているかといえば、そうでもありません」(上野氏)。

 技術や品質を突き詰めて製品のサイズも小さくする、あるいは便利そうな機能をとにかく1個の製品に詰め込めば、ビジネスが成り立つ時代はとっくに終わってしまった。いまはターゲットとする国の市場が求めるニーズに対して、技術を最適に組み合わせ、的確かつ素早く動けなければ、ビジネスはうまくいかない。高度な技術を使うことが正解とは限らず、ごく平均的な技術でもいいので、市場ニーズにぴったり合った商品やサービスを効率よく作らなければならない。同社が勧める「モジュラーデザイン」とは、それを実現するための1つの設計手法(ただしすべての設計製造に当てはまるわけではないと上野氏は言及する)。同手法では、最適な標準部品や機種の独自部品を組み合わせて設計を計画することで、機種バリエーションを効率的に素早く増やせる。

 この手法で、1つの肝となるのは、機械設計と基板設計のスムーズな連携設計(エレメカ協調設計)だ。従来、メカCADとエレキCAD間のデータ交換が課題とされてきた。同社はその具体策として、エレメカ相互のダイレクトなCADデータ交換や連携が行える「V54EE」「BoardModeler」、Webサービスの「ePartFinder」などを提供してきた。

 「BOM Producer」では、「機構部品か電気部品」「国内向けか海外向けか」で分かれて管理されることが多いBOM(部品表)をCADデータとひも付けながら統合管理し、XVLの3次元ビューアの仕組みも利用しながら、企画、設計、製造、保守などの各部門間の連携をサポートする。

 さらに、同社が開発中の「XVL Studio」(ラティス)の図研オリジナルパッケージ「XVL Studio Z」を利用すれば、使い手を限定するCADデータのハードルがぐっと下がり、より効率的な部門間協調設計が可能になるとのことだ。

世界のPLM事情

 PTCジャパンブースの「ソリューションステージ」では、同社の「Windchill」や「Pro/ENGINEER」の基盤となる概念であるエンタープライズPLMに関するプレゼンテーションを展開した。エンタープライズPLMとは、ERPではない、SCMでもない、はたまたCRMでもない……。それは“第4の基幹システム”であり、モノづくり情報を軸とした経営戦略的な企業情報システムだという。

 同社が収集した過去5年の世界における811件のPLM事例から、日本がいまするべきことを学ぼう。――そんなコンセプトのPTCジャパン ビジネス開発推進室 ディレクター 後藤 智氏によるプレゼンテーションでは、PTCジャパンが各国のPTCオフィスから収集した事例データの分析結果を紹介。アメリカやヨーロッパ、韓国など、それぞれのお国柄によってPLM導入の考えも異なることを示した。

写真2 写真2 PTCジャパン ビジネス開発推進室 ディレクター 後藤 智氏のプレゼンテーション

 例えば、PTC本社があるアメリカについては「モノづくりを捨ててしまった国」と表現。「アジア圏の企業にモノづくりをお願いしないといけないので、マニュアル化とテンプレート化が重要、つまりシステム段階からプラットフォームをどう作り込むかが肝心。ビジネス目線でPLMをとらえている事例が多いです」(後藤氏)。ちなみに、お隣の韓国は、完全なトップダウンで全社統合を目指す傾向。これは、日本では厳しいと後藤氏はいう。

 各国で異なるにしても、それらを総合的に分析したグローバル企業の共通課題は、以下となるという。「この6つは、覚えていってくださいね」と後藤氏。

  1. グローバル規模の設計工程分業 国や地域をまたいで設計データを仕分けする
  2. 部門間コラボ時の設計品質 エレメカソフト連携設計など
  3. データセキュリティの確保 外部パートナー企業とのセキュアな情報共有
  4. 開発プロジェクトのマネジメント 開発進捗(ちょく)をリアルタイムで見える化する
  5. 設計変更のコスト管理 設計製造に絡む全員がコスト情報を共有
  6. システムパフォーマンスの改善 グローバル規模のデータ管理。かつサクサク動くIT環境

 同様に、PLMを展開する際のパターンも、以下のように整理した。

  • 「CADデータ管理(コンカレントエンジニアリングなど)」
  • 「全社統合BOM(製品データ活用促進)」
  • 「プロジェクト間コラボ(リソースの最適化)」「部門間コラボ(エレメカソフト連携)」「企業間コラボ(ODM/OEM)」

 それから、ここ3年ぐらいで出てきたステップとして、後藤氏は「サービス情報活用」を挙げた。「商品が市場に出てから、アフターサービスの情報をどう活用するのか。つまりサービスコンテンツのBOMです。社内のBOMではありません。客先にいった商品のBOMが、サービスマニュアルとともに、どう展開されるのか、ですね」(後藤氏)。

設計&書類を楽々連携

 広いステージが目立ったソリッドワークス・ジャパンのブース。そのステージで催されたプレゼンテーション「Let’s Go Design! 〜設計者の想いをつなぐ〜」では、同社の3次元設計新製品「SolidWorks 2010」シリーズ(CADやCAE、PDM)や、3次元ビューア/ドキュメント作成システム「3DVIA Composer」との連携を架空の設計事例(画像検査装置設計)でデモした。設計変更やエレメカ連携、応力解析、設計と技術文書の連携など多岐にわたる一連の設計作業を行いながら同社製品の便利な機能を紹介した。

写真3 写真3 ソリッドワークス・ジャパンのビッグなステージ

 デモ中の設計物は、サーボ技術やセンサを駆使した最先端の画像検査装置。メカニズムが動作するタイミング、基板の位置制御など、非常に高度な機構設計が要求される……。そんな場面に便利な、CAEの「SolidWorks Simulation 2010」の新機能を紹介した。従来の機構シミュレーションではメカニズムを時間フレームで定義する必要があったが、同製品では動作のトリガやメカニズムの駆動時間など設計者の思考に近い方法で定義できるという。また同製品では機構解析と応力解析の機能統合が進み、機構動作時の応力集中や変形を確認できるとのこと。

写真4 写真4 SolidWorks Simulation 2010による応力解析

 続いて、設計の仕上げとして、環境影響評価ツール「SolidWorks Sustainability 2010」でCO2排気量などのグラフや資料を提示し、これまで設計した部品が環境にどう影響するか評価も行ってみた。

 プレゼンテーションのラストでは、「SolidWorks Enterprise PDM 2010」の便利な機能を紹介。このデモでは、アームの変更、エアシリンダチューブの追加など、こまごまとした修正作業を実際に行ってきたが、 こうした修正については、Enterprise PDMが書類製作の担当者に電子メールで自動通知してくれる。「これなら、大量な書類も設計と並行して簡単にメンテナンスできますね」(ナレーション)――設計者の思いを余すところなくリンクしたところで、プレゼンテーションはおしまい。

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