連載
» 2012年01月16日 13時50分 UPDATE

甚さんの「技術者は材料選択から勝負に出ろ!」(8):もっと高めろコスト意識! これだけ覚えろ材料特性! (1/3)

今回は、前回の振り返りを兼ねて集中購買による低コスト化について前半で、“目利き力”ポイントの「材料の強度」について後半で解説する。

[國井良昌/國井技術士設計事務所(Active Design Office),@IT MONOist]

当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君


日本の技術者は、ノーテンキ? 〜コスト意識の実情〜

 國井技術士設計事務所のWebページやMONOistは、日本の外のアジア圏で結構読まれているようです。アジア圏には日本語が読める人も結構いますが、Webサービスの機械翻訳などを利用して翻訳して読んでいる人もいます。

 そんな中の1人から、当事務所宛てにメールが届きました。「“甚さん”シリーズの大ファン」だという韓国の巨大企業に勤務する女性技術者からです。そこに書いてあった質問が、実は、前回の内容に関する重要事項とつながるのです。

 そういうわけで、今回はまず、そのメールを紹介しましょう。以下は、英語で届いたメールを当事務所のアシスタントが訳してくれたものです。

國井先生へ

 甚さんシリーズは、私の社内でも人気です。

 早速ですが、甚さんの第7回の記事に関連する質問です。

 『さらに、企業では競争に勝ち抜くための低コスト化を狙って「集中購買」という活動をしています。材料の「標準化」のことです』とありました。先輩から言葉では聞いていますが、どのくらい安くなるのでしょうか?

 実は、私は電気回路(主に電源回路)の設計を担当していますが、シールドボックスの板金やコネクタの標準化や共通化のコスト低減効果に疑問を感じています。ご指導ください。よろしくお願いします。

 当事務所では、「超・低コスト化設計法」をコンサルテーションのメニューにしているのですが、韓国、中国、香港、台湾――これらの国の巨大企業から「低コスト化」に関する質問が毎月10〜15件、当事務所のWebページを通して入ってきます。一方、日本企業からの「低コスト化」に関する質問は、なんとゼロ件!

 サムスン電子(韓国)、LG電子(韓国)、現代自動車(韓国)、ハイアール(中国)、奇美(台湾:Chi−Meiと読む。世界最大級の液晶パネルメーカー)など、高品質で低コスト化を実現し、日本企業に追い付き、そして、追い越しました。さらに、「円高」です。このような状況にもかかわらず、日本企業からの低コスト化に関する質問がゼロ件なのです。当事務所が「頼りにならない……」ことも含め、その理由はいずれお伝えしましょう。

 先ほどの質問に回答するために、第7回を振り返りましょう。

 表1は、ある日本企業の事例です。自社で使用する材料の材質とサイズを制限し、「集中購買」や「大量納入」による材料の量産効果、つまり、低コスト化に期待しているのです。今や、どこの企業でも実施している材料の標準化活動です。

yk_jinzai07_05.jpg 表1 ある日本企業における標準材料の選択表
甚

企業規模によらず、「標準材料選択表」がない企業は相当やばいぞ! 低コスト化の意識が全くないという証(あかし)だ!


良

げっ! 甚さん! 本当ですか? うちの会社にはありませんけど。どっ、どうしたらいいんですか?


甚怒

さっさと転職しろ!


 前回も同じようなシーンがありました。「転職」は甚さん流のジョークだと思うのですが、これが一企業の中の発言だとしたら“かなりまずい”と、筆者は思います。

 それでは、集中購買の効果を材料の視点から見てみましょう(図1)。

yk_jinzai08_01.jpg 図1 定尺材料の集中購買に関する量産効果(「ついてきなぁ! 材料選択の『目利き力』で設計力アップ」日刊工業新聞社刊より)

 図1は、ちょっと自慢させていただきたいデータなのです。なぜかといえば、材料の集中購買でどのくらい低コスト化が図られるか、恐らく“日本で初めて”、いや“世界で初めて”公開される「目で見る集中購買の効果データ」と推定しているからです。

 当事務所は、隣国のEV開発時にコンサルテーションを実施しましたが、このデータは、「超・低コスト化手法」による1つの成果です。ただし、いろいろな機密事項もありますので、φ5〜20の軸用材料(定尺材料:以下、注)に限定した「量産効果」としました。

筆者注:定尺(ていしゃく)に関しては第7回を参照

良

げっ! 甚さん! 学校の講義では、「ロット倍率」も「量産効果」も、そんな単語は出てきませんでした。教えてください。


甚

そうかぁ、仕方がねぇ! どちらかといえば、学問よりも実務知識だからなぁ。特に、日本の学校では、C(コスト)のカリキュラムは皆無だしなぁ。


量産効果

 それではまず、良君も知らなかった「量産効果」を理解しましょう。

 量産効果とは、簡単に言えばスーパーマーケットなどで1つのリンゴを買うよりも、一袋5個入りのリンゴの方が単価は安くなるのと同じ考えです。前者のリンゴが150円、後者は5個で500円という場合です。

甚

オメェのかぁちゃんや、エリカちゃんなら分かるはずだ。その訳は、経済意識が高いからだ! オメェはどうだ。正直に言え!


良

なるほど! 「まとめ買い」にちょっと似ていますね。「まとめ買い」は安くなると、エリカちゃんも言っていました。次は、ロット数やロット倍率を教えてください。


甚

経済意識に乏しい自分をうまーくごまかしやがったな。


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