連載
» 2013年10月25日 11時00分 UPDATE

知財コンサルタントが教える業界事情(15):新市場をつかめ! 勝負を分ける3Dプリンタ特許〔前編〕3Dプリンタの歴史をひもとく (1/3)

モノづくりを大きく変革すると期待を集める「3Dプリンタ」。20年以上前から普及している技術だが、現在急に脚光を浴び始めたのには「特許」の存在があった。知財と企業戦略の専門家が知財面から3Dプリンタを読み解く。

[菅田正夫,MONOist]
知財

 知的財産(知財)を通じて、業界を読み解く連載「知財コンサルタントが教える業界事情」ですが、今回から3回(前編・中編・後編)に渡って、モノづくり革新の象徴として注目を集める3Dプリンタを取り上げます。

 3Dプリンタは、プリンテッドエレクトロニクスとの技術的融合が既に始まり、米国の製造産業強化政策としても取り上げられています。また製造業の変革だけでなく、医療、軍事、食品の各分野でも、さまざまな形で利用される可能性が見いだされています。本稿では、3Dプリンタの知財を切り口に、新たな事業開発や、食糧供給/国家政策などへの影響を紹介します。前編ではまず、3Dプリンタの歴史について解説します。




3Dプリンタとは何か?

米MakerBot社の個人向け3Dプリンタ「Replicator」 米MakerBot社の個人向け3Dプリンタ「Replicator」

 3Dプリンタとは、材料を削る「切削加工」や、金型を用いる「塑性加工」とは異なった、新たなモノづくり手法です。インクジェットプリンタが、インクの連続的点描画で文字や図形を描くのに対し、材料の連続的点描画で立体物を「積層造形」するため、「3D(3次元)プリンタ」と呼ばれています。

 ただ実際には“3D”とはいっても「薄い層を加工しながら積み重ねることにより立体物を造る技術」であり、“2次元半”加工といえるかもしれません。3Dプリンタの定義については「3Dプリンタと3つの誤解」で詳しく紹介していますので、参考にしてもいいでしょう。

特許で振り返る「3Dプリンタ誕生の歴史」

 3Dプリンタは、3次元CAD、プリント技術、生産技術を統合した技術で、その技術的な源流は「光造形法」です。1980年4月に、小玉秀男氏(名古屋市工業試験所)が出願した「特開昭56-144478:立体図形作成装置」が最初であるとされています。しかしながら、この特許の審査請求はされませんでした。そして、翌1981年9月には、論文誌「Review of Scientific Institute」に、小玉氏の特許出願内容に相当する論文が掲載されます。

 翌1982年には、Alan J. Herbert氏(3M)の光造形技術の論文が「J.Appl.Photo.Eng.,8,185 (1982) 」に公表されました。この内容は特許出願されていません。また、翌々年の1984年5月に、丸谷洋二氏(大阪府工業試験所)が「特許1626879/特開昭60-247151:光学的造型法」を出願しました。小玉氏の特許が1ビームであるのに対し、丸谷氏の特許は2ビームで樹脂を硬化している点に違いがあります。

 最初に3Dプリンタの製品化を図った、3D Systemsの創立者であるCherls W. Hulls氏は、1984年8月に、光造形法用いる3Dプリンタ特許「米国特許4,575,330:”Apparatus for production of three-dimensional objects by stereolithography”」(「日本特許1827066/特開昭62-35966:3次元物体を作成する方法と装置」)を出願しました。そして、翌々年の1986年に3D Systemsを創立しました。*)3D Systemsは現在も3Dプリンタの主要ベンダーとして存在感を発揮しています。


3Dプリンタの名称の変遷

 現在3Dプリンタと称される技術の源流が、1980年の小玉特許までさかのぼることができることは上述した通りです。そして1984〜1993年頃までは、「光造形」と称されていました。当初は、光硬化性樹脂を紫外線で硬化させるタイプが主流であったためです。その後、さまざまな技術や装置が開発されたため、しばらくは「付着積層加工」と呼ばれていました。そして1993年以降、日本では「積層造形」という名称で統一されました。

 一方、米国や欧州では「Rapid Prototyping(ラピッドプロトタイピング)」と呼ばれ「迅速に試作品を作る」技術として長い間定着していました。しかし、積層造形技術で、「直接使用できるモノ」や「工業製品」を作る時代になり「Rapid Manufacturing(ラピッドマニュファクチャリング)」とも呼ばれるようになりました。また、技術的には付着積層加工であることから「Additive Fabrication(アディティブファブリケーション)」とも呼ばれています。

 そして、2009年1月のASTM International 国際標準化会議(米国フィラデルフィア開催)で、Rapid PrototypingやRapid Manufacturing と称された積層造形技術の名称統一が議題となりました。技術そのものを表すAdditive Fabrication も名称候補に挙がりましたが、最終的には積層造形技術を「Additive Manufacturing(アディティブマニュファクチャリング)」と称することが決定されました。日本語では「付加製造」です。*)


       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.