“千手観音”に必要なのは「新たな安全」工場安全(1/3 ページ)

コネクタメーカーであるハーティングは日本進出30周年を記念し都内で「インダストリー4.0セミナー」を開催。メイン講演の1つに登壇した日本電気制御機器工業会 副会長の藤田俊弘氏(IDEC)は、変種変量生産を求められる状況でのモノづくりの新たな進化とともに、それによって変わる「安全」の価値について述べた。

» 2016年02月09日 15時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 ドイツのコネクタメーカーであるハーティングは2015年12月で日本法人設立30周年を迎えた。これを記念し同社では2016年1月13日に都内でドイツのインダストリー4.0をテーマにセミナーを開催。本稿では、同セミナーで開催された日本電気制御機器工業会(NECA)副会長で、日本ロボット工業会(JARA)理事であるIDEC常務執行役員 技術戦略本部長の藤田俊弘氏の講演「人とロボットの協調環境の進化と第4次産業革命による次世代ものづくり」の内容をお送りする。

モノづくり環境の変化

 ドイツのインダストリー4.0の取り組みなどから、自律的で柔軟な生産体制や生産装置の実現に関心が高まっている。実際にセミナーを主催したハーティングではモジュール型の生産ラインの自社実践である「HAII4YOU Factory」などを紹介。これは、同社の産業用コネクタのカスタマイズ生産を、同一モデルの量産と同様の効率で実現する一種のマスカスタマイゼーションの実践モデルである。ラインの構成情報などは生産設備同士を接続するコネクタでやりとりを行う。同コネクタにはメモリを内蔵し、設備情報や生産稼働情報などを保有。コネクタを組み替えて接続するだけで内蔵情報を基にすぐに生産が再開できるというような将来像を目指しているという※)

※)関連記事:コネクタから実現するインダストリー4.0、ハーティングが自社実践を出展

photo ハノーバーメッセ2015に出展されたハーティングの産業システム統合ファクトリー「HAII4YOU Factory」

 一方、企業の壁を越えて、モジュール化した生産工程を組み合わせたライン構築実現に向けて取り組みを進めている技術イニシアチブ「スマートファクトリーKL」などの動きも紹介。ドイツのフエニックス・コンタクトやハーティング、Festo、Rexroth、PILZ、LAPP KABELなどのそれぞれの生産工程モジュールを組み合わせ、1つの生産ラインとした実践ラインなども各種展示会に出展。生産工程をモジュールとし、さらに異なる企業同士が同じインタフェースで接続できるようにすることで、生産ライン構築における自由度を大きく高めることを目指している※)

関連記事:インダストリー4.0が目指す“一段上”の自動化

 これらの動きに対し藤田氏は「少量多品種製造に対応する柔軟な生産体制を目指す取り組みはIDECでも長く取り組んできた。目指す方向性は同じだ」と述べ、同社での「千手観音モデル」の取り組みについて紹介した。

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