多くの買収で揺れ動いたCAD周りの10年、今後はユーザー側が買収に乗り出すかCAD/PLMの10年史(1/4 ページ)

MONOistが開設した2007年以降、CADやPLMなどの設計製造システムを提供する大手ベンダーによる意欲的な買収が行われてきた。今後は、CAD/PLM、EDA、大手ユーザーという垣根を超えた企業買収が起こる可能性があるだろう。

» 2017年09月13日 13時00分 公開
[庄司孝MONOist]

 この10年をふりかえってみると、CAD/PLM業界においては、あいかわらず数多くの企業買収が行われてきた。CAD/PLMベンダーにとっては、新しい技術を獲得しようとする時、あるいは新しい事業領域に進出しようとするときには、企業買収により、それを実現するのが常であるからだ。一方で、企業買収は顧客の囲い込みにもつながる。企業買収は、既存の顧客を確保するとともに、さらには有力な顧客を取り込むための戦略でもある。

1.同業他社を買収した例

 CAD/PLMベンダーにとって、事業の拡大、競争力の強化をはかるとき、よく行われるのが同業他社の買収である。歴史的に見れば、フランスダッソー・システムズによる米ソリッドワークスの買収、米PTCによる米コンピュータビジョンの買収、米ユニグラフィックス・ソリューション(現シーメンス)によるSDRCの買収などが、その端的な例であり、こういった大手CAD/PLMベンダー同士の買収は、業界および顧客に大きな影響を与えてきた。

 この10年間においては、2007年に行われたPTCによるドイツコクリエイト・ソフトウェア社の買収が最大のものであった。コクリエイト・ソフトウェアは、当時の年間売上高は約8千万ドルであり、世界各国に5000社以上の顧客を有していた。PTCにとっては、売上高および顧客数の拡大につながったといえよう(関連記事:「耳を疑った」CADベンダ競合同士のまさかの合併)。

今はない、CoCreateのロゴ

 また、コクリエイト・ソフトウェアの買収により、PTCはダイナミック・モデリングというモデリング技術を手に入れている。PTCはフィーチャベース、パラメトリックドリブンという、ダイナミック・モデリングと相反する技術を開発したベンダーであったから、この買収は、業界および顧客を大いに驚かせた。コクリエイト・ソフトウェアのOneSpace Designerは、その後、Creo Elements/Directとなり提供されている。

「CoCreate Personal Edition」が前身である、「Creo Elements/Direct Modeling Express」

 ダッソー・システムズは、PLMという概念を提唱したベンダーであるが、その実現において、数多くの同業他社の買収を行ってきた。この10年間においても、2007年に英ICEMを買収。CATIAブランドに統合している。ICEMはスタイリング、高品質サーフェスモデリング、レンダリング・ソリューションのリーディング・プロバイダーであり、自動車業界においては、圧倒的なシェアを持っていた。

 2008年には、解析最適化ソリューションの米エンジニアス・ソフトウェアを買収し、SIMULIAブランドに統合。2010年に組み込みシステム開発ソリューションのフランスジーンソフトを買収し、CATIAブランドに統合。2013年にはトポロジー最適化ソフトウェア「TOSCA」を開発したドイツFE-DESIGNを買収し、SIMULIAブランドに統合など、数多くの買収を行ってきている(関連記事:CAEエキスパートが見て・感じた! CAEの最新技術動向&ユーザー事例)。

Abaqus、TOSCAを使用したオートバイのスイングアームの形状最適化(イタリア、プロテサ サポネリ氏) Image Courtesy:Roberto Saponeli, Proesa SPA & UNIMORE, Topology optimization of motorcycle swing arm under service loads using Abqus and Tosca, 2015 SIMULIA Community Conference.
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