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» 2008年08月05日 11時00分 公開

カムシャフトを2本にするか、1本にするかいまさら聞けない エンジン設計入門(7)(3/3 ページ)

[カーライフプロデューサー テル,MONOist]
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DOHCの特徴

 DOHCだとカムシャフトは2本です。カムシャフトが1本のSOHCに比べて重量的に不利なように感じます。しかし、それぞれのカムシャフトをバルブの真上にレイアウトできるので、SOHCに必要となるロッカーアームなどの動力伝達部品が不要*1となり、部品単体での重量では大きな差はありません。*1 小さなロッカーアームが付いている場合もあります(「スイングアーム形式」と呼びます)。

 しかし部品構成で見るとそうではありません。カムシャフトが2本であることから必然的にシリンダヘッドなどのエンジン上部が大型化することになり、若干の重量増となります。またSOHCに比べると、走行性能などに大きく影響する「エンジン重心」を低くしにくくなります。

 一般的にDOHCが高性能であるというイメージがありますが、その理由は「カムシャフトが2本あること」というより、「燃焼室の形状やバルブ角度などの設計自由度が高くなること」だといえます。

 DOHCだと、スパークプラグを燃焼室の中心にレイアウトできます。つまり“圧縮行程において混合気を燃焼室の中心に集める”という理想的なレイアウトが可能なため、燃焼面で非常に有利ということになります。またインテーク側とエキゾースト側を個別に管理できるので、可変機構を採用する際には有利です。

SOHCの特徴

 SOHCは、1本のカムシャフトでロッカーアームを介してバルブを駆動します。そのため、カムシャフトはほとんど、シリンダヘッドの中心に置かれます。つまりスパークプラグを燃焼室の真ん中かつ垂直に配置することが困難となり、燃焼室の形状に制限ができるので燃焼効率としてはDOHCよりも劣ります。

 それと同じ考え方で、バルブ角度の自由度が低く、それなりに角度を付けようとするとロッカーアームを長くする必要があります。ロッカーアームを長くすると「しなり」が発生するので、カムシャフトの動力をバルブに伝える力が逃げてしまいます。バルブ開閉の精度はエンジン性能に大きく影響するため、それが大きなデメリットとなります。そうとなると、DOHCのように理想的なバルブ角度を設定することは難しくなります。「ロッカーアームを長くしてバルブ角度を大きく取る」か「あえてバルブ角度を小さく取ってロッカーアームを短くするか」という選択が必要となってきます。

 これらを踏まえると、DOHCに比べ、エンジンを高回転・高出力にすることが難しくなります。

回転抵抗の低減と燃費

 ここまで説明すると、DOHCの方が断然有利なように思えてきますが、燃費面を重視すると、SOHCには大きなメリットがあるのです。

 それは、カムシャフト1本分の「回転抵抗の差」です。カムシャフトに設けられたカム山は“バルブスプリングの圧縮”という大きな抵抗を受けることになり、DOHCに比べてカムシャフトが1本少ないSOHCはその分回転抵抗が少なくなります。

 燃費重視で考えるなら、エンジン自体を高回転・高出力にする必要性はほとんどない、つまりDOHCでなくても十分だといえます。

 SOHCでは理想的な燃焼を行うためのレイアウトが難しくなりますが、それを補うことができるほどに、“回転抵抗の低減”は大きなメリットだといえます。回転抵抗の低減は、燃費に大きく寄与します。燃料費が高騰しているいま、SOHCを搭載しているコンパクトカーが市場で多く見られるようになりました。

 ほかには、DOHCに比べて部品点数が少なくなるため、エンジン本体が軽量小型になり、量産時のコストなども低く抑えられ、かつエンジンの重心を低くすることが可能となります。

エンジンが小型だとエンジンルームの容積を小さくでき、かつその分で室内容積を拡大できます。日常の道具としてのクルマにとって、これは大きなメリットだといえますね。

 車の基本コンセプトやボディーサイズ、エンジンに求める性能の種類によってDOHCかSOHCを選択する必要があります。さらに可変機構の有無などでも基本レイアウトが大きく変わります。つまり、さまざまな観点で最適なカムシャフトを選択することが重要となるわけです。



 次回は「タイミングベルト、タイミングチェーン」について詳しく解説する予定です。お楽しみに! (次回へ続く)

Profile

カーライフプロデューサー テル

1981年生まれ。自動車整備専門学校を卒業後、二輪サービスマニュアル作成、完成検査員(テストドライバー)、スポーツカーのスペシャル整備チーフメカニックを経て、現在は難問修理や車輌検証、技術伝承などに特化した業務に就いている。学生時代から鈴鹿8時間耐久ロードレースのメカニックとして参戦もしている。Webサイト「カーライフサポートネット」では、自動車の維持費削減を目標にメールマガジン「マイカーを持つ人におくる、☆脱しろうと☆ のススメ」との連動により自動車の基礎知識やメンテナンス方法などを幅広く公開している。



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