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» 2008年11月25日 00時00分 公開

機械設計者の視点からPLMのあり方を考えるメカ設計 イベントレポート(4)(1/2 ページ)

ITを導入したことで、設計者の役割を見失っていないだろうか。問題の根本が見えていなければ、便利なITも意味がない

[小林由美,@IT MONOist]

 高いITツールを導入したのに、「明らかに使っていない機能が多い」「自動処理が余計なおせっかいばかりする」「手書きでやった方が楽」「休んでいる同僚の作った設計データの最新版が分からない」といったふうに、イライラすることはないだろうか。

 導入を決めた人あるいは会社を責めても、何も解決しない。また他社のシステムに乗り換えても、もっと高価なシステムを導入しても状況は変わらないかもしれない。

 本レポートでは、設計会社のコンサルタントと、ITベンダのコンサルタントと両方の視点での問題考察を紹介する。

自分たちの仕事、整理整頓できていますか――設計開発のコンサルティング現場から

 ウィッツェル 取締役兼副社長 宮島 聡司氏は、かつてソニーに在籍し、米国にて現地設計計画の立ち上げを担当した。宮島氏の実体験や設計現場が直面している現実を踏まえながら、日本の設計現場が抱える問題を示した。

 R&Dマネジメント革新センタによるアンケート調査によれば、現在の設計・開発現場では、品質よりも納期の方が優先されてきているという。ここ10年ぐらいにおいて、開発期間短縮のために、例えば3次元CAD、コンカレントエンジニアリング(PLMやPDM)、フロントローディング、ナレッジマネジメント、などいろいろな手法やITツールを導入するといった動きがあった。納期短縮を優先するあまりに、品質が低下している傾向にあるのではないか、と宮島氏はいうのだ。

 まず「皆さんの現場でもITツールの導入をしていると思いますが、その効果をきちんと刈り取れているのか、疑問ではありませんか?」と宮島氏は問う。

ウィッツェル 取締役兼副社長 宮島 聡司氏

 製品のライフサイクルは、どんどん短くなってきている。それでも当然、品質は求められる。おまけに、開発品目もどんどん増える。そこに対処していくには、3次元CADやPLM、ERPといったITソリューションの活用が有効である。

 しかし、とにかく導入すればすべてが解決、などと考えてはいないだろうか。単に業界で流行っているからといって、導入したのではないだろうか。宮島氏は設計・開発現場に問う。

 それに、設計・開発にまつわるITツールも日々、急速に進化している。そんな中、設計者に求められるスキルも変化している。これにどう対応していったらいいのだろう。果たして、これからもついていけるのだろうか。

 そのうえ、人材教育の問題もある。製造現場や開発現場では、人員がアウトソーシングされることが多い。社内の設計者は派遣技術者やサプライヤに指示を出すことが仕事になってしまう――いわゆる“手配師化”してしまっている。それに、人がどんどん入れ替わるので、過去、社内で築いてきたマインドやノウハウが継承されない。そこへ配属される新人も、仕事が覚えづらい。

 加えて、最近は理系離れという言葉が叫ばれ久しい。それに、団塊世代の熟練技術者が現役から次々と退いていっている。製造業界そのものが、全体的に人材不足である現実がある。いま、技術者が非常に育ちにくい環境になってきた。またそれらも大いに起因し、設計品質が低下しているのではないかと宮島氏はいう。

 人が十分に足らないと、作業効率は低下する。目の前の業務に追い立てられると、効率化を図ろうと検討する余裕が、時間的にも気持ち的にもなくなっていく。その結果、設計データ、作業、人員など、さまざまな方面の管理が煩雑になってしまう。そのうえ、1プロジェクトが終わるごとに人員が入れ替わるのだから、さらに状態は混沌(こんとん)へと向かっていく。整理整頓はものづくりにおける作業の基本であるが、それに逆行してしまっている。作業効率低下のスパイラルである。

 宮島氏は20数年のキャリアの中で、設計現場のITツールの歴史における大きな流れのあった時代――2次元CADの導入期と3次元CADの導入期――を経験してきた1人でもある。いずれの時代にも共通していたのは、設計プロセスを見直すと同時に、「設計の役割とは何」「トレーサーの役割とは何」という業務の役割分担をもう一回よく考え、プロセスを改善したという部分だと宮島氏は話した。

 例えば2次元CADの導入期では、トレーサーと設計者の仕事のあり方を考えていった。2次元CADのシステムを使い、形状を作るのは設計者、寸法を入れるのはトレーサーというように、業務の分担を行えるようにした。3次元CADの導入期では、ベテランエンジニアと新人エンジニアとのモデリング領域の分担を明確に行った。

 それぞれの担当者がするべき作業に注力できるようにして効率を上げるようにIT導入することが重要であり、実際、宮島氏もそういう施策により実績をあげてきた。統合管理システムやPLMの普及期であるいまも、それと同様なことがいえるということだ。

 非効率スパイラルを食い止めるには、まず一旦立ち止まり、設計業務とは何なのかを冷静に見直してみる。それが無理ならば、定期的に現場の状況を少しづつ把握することから始めてみる。できる限り自分たちの置かれている環境を具体的に冷静に把握するようにし、とにかく整理整頓する。できれば、データ化して、問題を可視化しておく。またその際には、他部署や社外のコンサルタントの視点も交えてみることも大事だという。

 そのうえで、自分たちにとって本当に最適なCADやPLMを選定していくことが大事であるという。そうすれば、時代のいかなる変化にも、ITツールの急速な進化にもしっかりとついていける環境が築けるだろうと宮島氏は述べた。

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