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» 2010年07月21日 00時00分 公開

実践! IE:方法改善の技術(6):動作経済の原則1:身体部位の使用についての原則 (4/4)

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,@IT MONOist]
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〔原則8〕動作の順序は、作業に自然のリズムとスムーズな動きを持たせるように作業設計をすること。

 通常は反復動作の速度によってリズムが取られて、作業の継続が容易になります。このことは、作業者の動作に対する意識が減少し、心的な疲労度が軽減されることになります。このように動作にリズムを持たせることは、可能な限り動作の困難性を除去することになり、動作要素の組み合わせを適切に進めることによって可能となります。

 動作中、微妙なためらいやつまずきによって、リズムを壊すことになる場合があります。このようなことが発生すれば、その要因を追究し、分析して、工夫・改善するように努めます。通常、作業者自身によって、独自のリズムを持っていることが多く、管理者によって設計された新しい動作系列に対して強く抵抗を受けることもあります。従来の作業習慣に対して、強く固執することが考えられますが、新しい動作系列への変更に努力することによって、その実現の可能性も出てきます。リズムは、作業者の円滑な自然的な動作に不可欠なものであって、作業はできるだけ容易で、自然なリズムを持つようにすべきであるという原則です。リズムの解釈には次の2通りがあります。

 第1は、歩行や呼吸における意味のリズムで、「規則的反復動作」を指すリズムです。第2は、たとえ「規則的反復動作」であっても、均一な速度で行う腕の円運動などは、均一であり過ぎるためにリズムがないとするもので、いわば心理的リズムを生み出すためには、動作の中に周期的な変化が必要であるとするものです。例えば、円運動が楕(だ)円運動に変わるとか、円運動であっても一部の動作速度が速くなり、それに従って拍節感(ある一定の時間単位に基づいて構成されるアクセントの周期的反復)を覚えることができれば、それはリズムであるという解釈です。作業者に最も少ない努力と疲労で作業が遂行できるのは、後者の意味の心理的リズムです。さらに、自然のリズムとは、各個人の最も疲れの少ない、人それぞれの固有のリズムのことを指します。

 この原則は、動作の順序を適正にしてリズムを付けることともいわれています。人には、それぞれ自分の固有の調子(リズム)を持っていて、作業がそれに合うと動作は円滑に続けられ疲労感が生じなくなってきます。これは、動作の速さとその系列の組み方によって出てきます。このような状態にすると、気持ちよく仕事もはかどることになります。これを狙ったのがこの原則で、つまり調子よくやれるように手順を決めていくことです。特に、この原則に対する道具というものはありません。

〔原則9〕手や目以外でできることを、手や目で行わないようにすること。

 これは、「手の方だけについていえば、足またはそのほかの身体部位でもできるような仕事は、ほかになすべき仕事がある限りは手で行ってはならない」ということです。すなわち、手は最も便利な身体部位です。もし、手が空いていれば手を使うべきですが、ほとんどの時間は、手は忙しく使われているのが普通ですので、全体の作業時間は、手の作業時間といっても過言ではありません。そのため、手の作業時間が短縮できなければ、全体の作業時間が削減できません。そこで、なるべく足などを使って、例えば、ペダルなどの道具を使って操作して手の仕事を減らしてやるべきです。この原則に対して使う道具は、足踏み装置(フットペタル・スイッチなど)などがあります。

 いままで指摘されていませんでしたが、目は手よりもさらに忙しく、目が図面や指示書などを見ているために、一番重要な手が遊んでしまうことがよく起こっています。そこで、録音媒体などによって、必要な指示を耳から入れてやれば、それだけ時間が削減できるだけでなく間違いも少なく、頭の疲れも軽減されます。この点も今後、大いに活用できる改善案の1つでしょう。

〔原則10〕対照的に両手動作を行う場合に、目と手との調整が必要なときは、その同時動作の行われる点をできるだけ近づけなければならない。

 これも目線移動の関係で、片手が何かをするときに目でよく見ていなければならないとすると、そのときに両手が離れていると、他方の手は片方の手の動作が終了するまで待って、目がこちらに移ってからでなければ動作が開始できません。そこで、一度に両手の動作や、その対象がよく見えるように、両手を近づけて同時に動作ができるよう配置を工夫しなければなりません。これに対する特別の道具はありませんが、視界内に部品や工具を配置しておくことも一例です。実験の結果、おおむね60cm以内に配置しておけば、目線を移動することなく作業を完了することができます。また、できるだけ位置を中央に集めたりするのは、この考え方に基づくものです。

3. 動作の数を減らして動作の結合を図る

 動作経済の原則「身体部位の使用についての原則」は、具体的には、動作の数を減らして動作の結合を図ることが動作改善の主たる方法です。動作改善を進めるとき、おのおのの動作についての目的を明らかにすることから始めます。動作の目的に対して、不要であると考えられる動作を除去し、最少・最適な身体部位を活用して、最短距離で動作が実施できるように考えることが大切です。そのとき、目的に対して、真に必要な動作あるいは作業だけで遂行されているかどうかを再度見直していきます。ちなみに、「目的を明らかにして、その目的に対して不要な物や事を除去する」は、ムダ排除を行う際の一般的な法則です。

 部品や材料、工具類についての置き方が良好かどうか、機械設備の改善がなされているかどうか、現在、必要とされている動作の数を減らしたりして、動作を結合したり、検討を加えてみる必要があるのではないでしょうか。

 このように、動作経済の原則「身体部位の使用についての原則」と照合して、内容的に検討を加えて、効率的な動作の方法を確立するために、工夫、改善を行うことは、とても重要な動作改善のプロセスであるといえます。動作分析を行い、その結果に基づいて適切な診断を実施することにより、生産面での成果に結び付けることが可能となります。丁寧にアプローチしていくことにより、飛躍的な生産性向上を達成することができます。ぜひ、チャレンジしてみてください。

◇ ◇ ◇

 次回は、「動作経済の原則」の残りの2つの原則、「作業場所の配置についての原則」「設備・工具の設計についての原則」について説明します。ご期待ください!!


筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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