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» 2010年11月08日 00時00分 公開

実践! IE:方法改善の技術(8):カイゼン案を効率的に検討するためのチェックリスト (3/3)

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,@IT MONOist]
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6. ECRSの原則(改善の4原則)チェックリスト

 改善を行う場合に、基本となる「排除(Eliminate)・統合(Combine)・交換(Rearrange)・簡素化(Simplify)」の4つの考え方をいい、この考え方の4つの頭文字からECRSと呼ばれています。考え方としては、この、E→C→R→Sの順番に検討をしていきます。

 作業改善などで、工程、作業、動作をなくすことができないか?(排除:Eliminate)、あるいは一緒にできないか?(統合:Combine)、順序を変更できないか?(交換:Rearrange)、単純化できないか?(簡素化:Simplify)という観点から見直していくことを指します。「5W1Hのチェックリスト」などと同様に作業全体を見直し、問題点を見つけ出す際の手掛かりとします。これを「ECRSの原則(改善の4原則)」と呼びます。

(1)排除(Eliminate)

 何のためにその業務を行っているのかをあらためて見直し、その業務はなくせないかと考えます。作業や検査などのうちで排除できるものはないか、いろいろな角度から見てみると、不必要な作業や二度手間を行っていることが意外に多いものです。ほかの検討に先立って、まず「排除(Eliminate)」の可能性を徹底的に検討することが重要です。

 加工や検査の作業系列、作業の内容などから、その排除を考えてみます。対象としては、部門間の情報連絡の不備、作業方法の研究不足、過剰品質などの問題から考えることができます。例えば、前工程と後工程との重複作業、作業の不備から発生する選別や調整作業などがあります。不良などの対策として生まれた暫定作業が定着したものなど、多くの排除可能なものがあるはずです。「その作業や業務自体を止めることはできないか?」ということです。

(2)統合(Combine)

 組み合わせを変えられないか、1カ所に集めた方がよい、まとめてやった方が効率的という業務を一緒にすることによって時間を短縮できないかと考えます。例えば、ある作業と別の作業、また一連の作業を一緒にできないか、などです。

 各工程の時間のアンバランスの修正、作業者の待ち時間の利用、工具、型などの研究から工程の統合を考えます。例えば、機械作業での自動送り時間を利用して、バリ取りやツヤ出し作業を行うなどです。2つの機能を一緒にすることで、まとめて処理できないかと考えてみます。

(3)交換・順序変え(Rearrange)

 まず、仕事や作業の各要素の順序や持ち分を変更したり、入れ替えることによって効率が向上しないかを考えます。

 加工、検査の順序を変えることで、ほかの加工工程の作業量を減少させることができます。例えば、鋳物のバリ取り、下塗り塗装を機械加工の前に持ってくる。材料の寸法選別工程を初工程に持ってくることによって、後工程の作業量の軽減や品質の向上を図ることができる場合もあります。

 同じ機能を果たす別の方法に置き換えてみる方法です。例えば、ギアの製造に、歯切りから焼結に変えるなども含まれます。

(4)簡素化(Simplify)

 作業を単純化できないか。ほとんどの作業は動作研究などによって簡素化することができます。作業を簡単にし、品質、作業時間、作業訓練問題について考えていきます。この簡素化は工程分析でというより、作業分析、動作分析の適用時に行うのがふさわしいといえます。

 もっと簡単にできないかを考えます。例えば、治具にストッパーを付けて、位置決めを単純化するなどです。

7. マイルズの13のテクニック

 最後に紹介するチェックリストは、「マイルズの13のテクニック」です。米General Electricのマイルズ(L. D. Miles)は、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」と、そのために掛ける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上を図る手法――VE(Value Engineering)を開発しました。

 マイルズは、十数年にわたる自身の研究の成果を「VA/VEのテクニック」としてまとめました。その一部が、ここで紹介する「マイルズの13のテクニック」です。

マイルズの13のテクニック
1 「一般的にはこうなっている」では、問題が見えてこない ⇒ 物事は一般化するのではなく、具体化して対処せよ
2 ドンブリ勘定では、問題の正しい把握はできない ⇒ 有用なコスト情報は、努力してすべてを集めよ
3 最善の情報源は「なぜ? なぜ?……」の質問の繰り返しによって得られる ⇒ 集めた情報は、評価して正しい情報だけを使用せよ
4 目の前に現物があると、現状にこだわり過ぎて、根本的な改善が難しい ⇒ 創造的な破壊、創造性の発揮、そして洗練せよ
5 頭を柔軟にして、自由奔放にアイデアを発想する ⇒ 創造的な環境を作り、本物の創造性を発揮せよ
6 障害物は、十中八九、人である ⇒ 活動の阻害要因を明らかにし、これを克服せよ
7 専門家のその分野の問題解決力は、一般者の数倍である ⇒ 専門家を活用し、その分野の専門知識を広げよ
8 「その公差は、なぜ必要か」この答えの中に改善のヒントがある ⇒ 公差はコストの発生源、その働きを明確にせよ
9 専門業者の開発品には、高品質、高性能、低価格のものがある ⇒ 業者の持ってくる有用な機能構成品を取り入れよ
10 新技術、新素材、新製品が次々と世の中に送り出されている ⇒ お金を払って、業者の持つ知恵と知識を活用せよ
11 何でも自社内でやろうとすると、かえってコスト高を招く場合も多い ⇒ 業者の得意な加工工程と専門の設備を活用せよ
12 標準化の推進、標準品の活用は、その気にならないと進まない ⇒ できるだけ標準化を推進し、標準品を活用せよ
13 組織の中で働くすべての人の基本となる心構えである ⇒ 「わたしのお金なら、このように消費するだろうか」という基準を使用せよ

 ◇ ◇ ◇

 以上、改善のための主なチェックリストを紹介しました。

 改善に携わっている人たちや、「IEr. 」を志している人たちには、これらのチェックリスト法は常識ともいえる範囲ですので、ぜひ、実践を通して自分のものにしていただきたいと思います。

 紹介した各チェックリストは、一般的な内容となっていますが、これに自社の経験を加味して、系統的にまとめ上げていったものの方が効果的であることはいうまでもありません。加えて、定期的な見直しによって、環境の変化や進歩に対して柔軟に対応していくことで、チェックリストの欠点を補っていくことも必要です。

 次回は、新たなテーマとして、いま話題のリードタイム短縮にも大いに関係する「運搬改善とレイアウト」について説明します。ご期待ください。


筆者紹介

福田 祐二(ふくた ゆうじ)

MIC綜合事務所所長

(株)日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、および日本IE協会、神奈川県産業技術交流協会、県内外の企業において管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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