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» 2014年01月20日 10時00分 公開

小寺信良が見たモノづくりの現場(11):日本の“安定した基盤”がモノづくりに与える意味とは? (4/5)

[小寺信良,MONOist]

徹底的な自動化で人件費の課題をクリア

 ここまでの工場は、日本で作る意味があるから作っている、という話である。だが、"まず日本で作ることありき"からスタートした巨大工場もある。宮崎県にある、ソーラーフロンティアのCISパネル製造工場(働くロボットの森――ソーラーフロンティア、量産効率で勝つ21世紀型国内工場の姿)である。

 ソーラーフロンティアでは当初、CISパネルの大量生産にあたり、海外生産も視野に入れていたという。だが日本企業として「日本の経済に貢献しないのはいかがなものか」という経営判断があり、最終的に国内生産に踏み切ることになった。

 もちろん、タイミングも良かった。単一の工場としては世界最大の生産規模を誇る宮崎県国富工場は、もともと日立製作所と富士通が共同で建てた、プラズマパネルの生産工場である。だがご存じのように、プラズマは市場で成功せず、売却先を探していたところであった。早く売りたい工場と、早く建てたいメーカーの思惑が一致し、従業員ごと全て譲り受け、短期間での操業に成功した。

 ここで製造するCISパネルは、他の日本の工場が生き残ってきたポイントである、多品種少量生産とはまったく方向性が異なる。同じサイズの同じ特性のパネル製造を限りなく自動化し、24時間365日動かし続けるというものだ。

どこまでも無人のソーラーフロンティア国富工場 どこまでも無人のソーラーフロンティア国富工場

製造している機械の面倒を見る

 直接製造に関わる人間は、ごくわずかだ。大半の社員はその自動化プロセスを監視し、品質をチェックし、さらなる効率化を加えるために存在する。製造しているというより、製造している機械の面倒を見ているといったほうが正しいかもしれない。同工場の従業員数は800人だが、1日の製造パネル数はおよそ1万6千枚にも及ぶ。この量であれば、日本の人件費がいくら高いといっても問題にならないレベルとなる。

 もちろん、何もかもが最初から全て自動で動くわけではない。複数の製造機械を接続して同期を取り、プロセス間の部材の運搬を行うロボットをプログラミングし、素材の搬入搬出、倉庫管理まで全てが滞りなく動かなければ、完全自動化とはいえない。

 ソーラーパネル製造は、結晶系であればターンキーシステムごと販売する製造機器メーカーもあるが、薄膜化合物系で、しかもカドミウムを含まないCISの製造に成功したのは、ソーラーフロンティアしかない。だから製造ラインも、世界のどこにもないものを最初から作り、運用しているわけである。これが海外拠点でできるかといわれれば、製造工程の秘密保持まで含めると不可能だろう。

 さらに同社は宮城県にも、4つ目となる国内工場の建設(ソーラーフロンティア、東北に新工場を建設――世界最高クラスの生産効率目指す)を決めた。ここでは、国富工場よりもさらに高効率な生産を目指すという。

 ここまで日本での生産にこだわるのは、2012年に制定された固定価格買い取り制度(FIT)により、ソーラーパネルの国内需要が旺盛であるという背景もある。輸送の便、受注から生産までのスピード感、最新パネルの高効率性などを考えれば、メーカーも発電事業者も、国内生産の恩恵は十分に受けられる。ちょうどうまく歯車がかみ合ってる産業といえるだろう。

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