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» 2015年05月14日 09時00分 公開

「ロボット新戦略」が生産現場にもたらす革新とは?産業用ロボット(2/4 ページ)

[小平紀生/日本ロボット工業会システムエンジニアリング部会長,MONOist]

付加価値総額減少の理由

 では、なぜ製造業では付加価値総額が減少し続けているのでしょうか。最大の要因は中国をはじめとする新興工業国に対する国内生産の国際競争力低下です。国際競争力に関連する1つの切り口として、日本の製造業の海外生産の変化を図3で見てみましょう。


photo 図3:国内製造業と海外日本法人の生産規模比較(クリックで拡大)出典:経産省工業統計、海外事業活動基本調査

 海外日本法人の製造業売上高は、バブル崩壊直前の1990年には26兆円だったのが、2013年には117兆円に拡大しています。海外生産の動機には、大きく分けて「地産地消型」と「製造コスト抑制型」があります。

 地産地消型は、製造コストの削減も目的となりますが、最終消費地で生産するメリットはそれだけではありません。近くで生産することで輸送のムダなどを削減できる他、新たなニーズなども把握することが可能となります。また現地雇用などにつながることで、その地域でのブランド力を拡充できるというメリットもあります。これらを見れば、アジア各国での地産地消型海外生産の拡大はごく自然の流れだといえるかもしれません。この場合、サプライチェーンやバリューチェーンが日本国内からつながり、キーパーツや付帯サービスを日本国内から供給することができれば理想形になります。

 一方、安価な人件費やインフラコスト削減が目的の製造コスト抑制型は、「暫定的な手段」だといわざるを得ません。たとえ安い人件費で生産が立ち上がったとしても、その地域の発展とともにそのメリットは薄れていきます。例えば海外生産の拡大が足踏み状態になった2007年は、中国の製造コストが上がり、コスト面での魅力が薄れ始めた時期です。

 コスト抑制型の海外生産は民生用電気電子製品など、組立を中心とする業種で目立ちましたが、最近の円安で一部では国内回帰の傾向も見られます。いずれにせよ、国内で国際競争力のある生産ができれば、国内で生み出される付加価値も雇用も確保できます。何もかも国内で製造すべきというわけではありませんが、発展途上の製品や高度の技術を要する製品、さらに地産地消型海外生産のキーパーツ生産も含め、キープロダクツは国内生産を維持すべきです。

ロボット新戦略の意味

 製造業にとって、ロボット革命における第1の期待はこの国内生産の国際競争力強化にあるといえます。「ロボット新戦略」のモノづくり分野では「製造業の労働生産性を年間2%を以上向上する」ということが1つの目標値として示されています。ただし、注意しなければならない点があります。それは、ロボット新戦略には、従来の自動化の目的として多く語られる「省力化」や「省人化」という単語が一切出てこないことです。

 ロボットを使った生産性向上の目的は「自動化で人が不要になる」というネガティブなものではなく「生産・製品競争力を高める自動化で付加価値を上げる」という人間にとってポジティブなものと据えたことが革命の一端だとえいるかもしれません。

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