クルマの自己診断機能「OBD2」の用途は“診断”だけじゃないいまさら聞けない 電装部品入門(22)(1/5 ページ)

今やコンピュータの塊と言ってもいいクルマ。それらコンピュータが正常に動作していることを確認するための自己診断機能が「OBD2」だ。整備士などがOBD2から診断情報を取得するコネクタが全ての車両で同じことから、最近ではスマートフォンと組み合わせて他の用途にも利用されるようになっている。

» 2015年11月11日 09時00分 公開

自動車は機械の塊である以上にコンピュータの塊

 自動車は今やコンピュータの塊だといわれています。

 一昔前まで、調子が悪くなった自動車を修理するために求められていたものは、自動車の知識に加えて工具を使用した技術要素(職人領域)が大きかったと思います。

 機械的な工夫を施し、臨機応変に制御を行う構造を見ると感動を覚えるものですが、世の中から求められる排気ガス規制や、それと相反する燃費の向上を両立させるためには、機械的な工夫だけでは到底実現することはできなくなりました。

 最終的に求められる動力や快適性をアウトプットするためには機械的機構が不可欠ですが、それらの機構に「動け」と命令しているのは多数配置されたコンピュータ(ECU)です。

 ECUは各所に設けられたセンサーの情報を基に、あらかじめプログラミングされた作動ルールに従って制御を実施します。

 これらのシステムの中で、動力が著しく低下するとか変な音がするなどの不具合が生じれば誰でも気が付くので問題ないのですが、不具合が生じても気が付かない箇所というのは意外と多く存在します。その代表例が排出ガスの汚染状態です。

 環境保護の観点でさまざまな規制が世界中で施行されていく中、生産された時点だけ規制をクリアしていても意味がありません。

 使用過程で何らかの不具合が発生し、排出ガスが規制を上回ってしまった時点で早急にドライバーに警告を行い、速やかな対処を求めなければいけません。

 そこでまず、各自動車メーカーが求められたのは「自己診断機能の搭載義務化」です。

 設計時点でECUに自己診断機能を持たせることで、ドライバーはもちろん、整備士も気が付かない領域を具体的な閾値(しきいち)でOK/NG判断を常に行い、NGという結果が出た場合にドライバーに警告灯の点灯という方法で知らせることが可能になります。

エンジンチェックランプ エンジンチェックランプ

 この自己診断機能の搭載義務化が行われたタイミングを一般的に「OBD1」と言います。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.