ニューラルネットワークの隠れ層の数を増やしていくとどうなるだろうか。一概には言えないが層の数を増やすことで、ニューラルネットワーク内部でより複雑に予測のためのロジックを構築できる可能性が高い。2010年頃は2〜3層程度だったが、2015年はクラウド上に構築することで152層にも達しており、現在はさらに上限は増えているだろう。
この隠れ層の数が多いニューラルネットワークこそ、ディープニューラルネットワーク、いわゆるディープラーニングだ。ディープラーニングとは、機械学習のアルゴリズムの一部であるニューラルネットを発展させた技術なのである。
単純に層の数が増えただけではなく、アルゴリズムそのものの発展もある。例えば、画像のように入力する変数の数が多いデータを扱うための畳み込み(Convolutional)ニューラルネットワークや、自然言語の認識や時系列モデルの予測に使われる再帰型(Recurrent)ニューラルネットワークというように、用途に合わせて層に組み合わせる処理や、層のつながり方を工夫するなどディープラーニングは進化が続いている(図6)。
ここまで紹介してきた機械学習は実際どんなことに利用されているのだろうか。産業界で多い事例として故障予知がある。機器の稼働をモニタリングすることでデータを集積し、機器や部品の寿命前の不具合を予測することで突然のトラブルを未然に回避し、コスト削減や、機会損失を防ぐというメリットが出てきている。インフラとして利用される石油のパイプラインの部品や、世界各地で稼働する冷凍庫・冷蔵庫、また工場内で稼働する作業機械といった重要な装置の故障予知で既に成果は上がってきている。
残念なのはほとんどのケースで、社名や具体的なユースケースの開示を断られてしまっていることだ。激しい企業競争の背景があるためやむを得ないのだろう。しかし確実にIoTそして機械学習の採用は進んでおり、これらの取り組みが企業経営にプラスに働くことを少しでも感じていただければ幸いである。
後編では、機械学習を使った予測について説明する。
西 啓(にし あきら) PTCジャパン 製品技術事業部 IoT/Manufacturing技術本部 シニアIoTプリセールススペシャリスト
2015年9月にPTCジャパンに入社し、現職。日本におけるIoTに導入される機械学習、ARといった新技術の紹介、提案を実践している。さまざまなパートナー企業との関係を構築し、エコシステムによるビジネス拡大を画策中
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