AGLやSDLといったオープンソース活用を進めているトヨタ自動車だが、遠藤氏は「オープンソースには幾つかのリスクがある。そのためにはコミュニティーの力を借り、協力したいと考えている」と語った。オープンソースソフトウェアを使う上では特許や著作権などライセンスの扱いが問題になる。
「自動車産業のサプライチェーンは大きい。ほとんど全てのソフトウェアはサプライヤーから出てくる。自動車メーカーが把握できないところでオープンソースが使われてはならない。コンプライアンスを向上するガバナンスシステムが業界全体で不可欠だ」(遠藤氏)とし、OPEN CHAINや、Linux関連の特許をメンバー間でクロスライセンスしてセーフティーゾーンを決める団体、Open Invention Network(OIN)での活動に注力している。
OPEN CHAINはオープンソースソフトウェアのコンプライアンスを達成するために、満たすべき要件や仕様を定義し提供する団体で、トヨタ自動車は自動車メーカーとして初めて参加し、日系企業としては初めてプラチナメンバーになった。OPEN CHAINではガバナンス導入のプログラムや教育カリキュラムが用意されている。これにより、自動車メーカーは管理されていないオープンソースソフトウェアが混入するリスクを低減するとともに、どのようなソフトウェアが自社の製品に採用されているかを把握できるようになる。
2017年末には、アジアに特有の課題を議論するため、ソニーや日立製作所とともにOPEN CHAINの日本のワーキンググループを立ち上げた。26社40人が参加してコンプライアンス教育の在り方を議論しており、その成果はWeb上で公開されている。
OINでトヨタ自動車は、ボードメンバーとして自動車産業がAGLを採用する場合に特有の特許リスクの提起に取り組んでいる。その成果で、2018年夏にOINが定めるLinuxシステムの定義にAGLが加わる見通しだ。自動車業界からのOIN参加者を増やしていくことも遠藤氏は重視する。既に、Daimler(ダイムラー)やフォード、General Motors(GM)、ホンダがOINに参加を表明しており、2018年6月21日にはヤマハ発動機も一員となることが明らかになった。ヤマハ発動機はSDLのパートナーでもある。
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