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» 2018年10月29日 10時00分 公開

車両デザイン:リアルタイムがデザインを変える、RTXが再創造するビジュアライゼーション

CGが物理的に正しい光の表現を手に入れた。恩恵を受けるのは映画やゲームの世界だけではない。デジタルとVRを活用したモノづくりから、「バーチャルショールーム」のような新しいマーケティング戦略まで、自動車についても大きな変化が生まれる。そのためには、CADデータと最新のCG技術を組み合わせて活用することが不可欠だ。CGI(Computer Generated Imagery)のグローバルマーケットリーダーであるドイツのMackevision(マケビジョン)に話を聞いた。

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 「リアルタイムレイトレーシング」が、身近で手軽なものになり始めている。

 レイトレーシングはCG上に光の反射や透過を正確に再現し、目やカメラで物体を捉えるのと同じように見せるための技術だ。CGを見慣れた人々には不完全な視覚効果ではニセモノとして見えてしまうため、物理的に正しく光や影を表現できるレイトレーシングはCGにおいて重要となる。しかし、計算処理の負荷が重く、これまでは大規模なレンダリングサーバを使用する必要があった。

 それが、デスクトップのワークステーションでリアルタイムに実現できるようになったのは、NVIDIAが2018年8月に発表した第8世代のGPUアーキテクチャ「Turing(チューリング)」と、これを搭載したGPUボードの新製品「Quadro RTX 8000/6000/5000」によるものだ。

Quadro RTXは3つのモデルが用意されている 出典:NVIDIA

 NVIDIA CEOのジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は「TuringはNVIDIAにとって、コンピュータグラフィックスにおけるこの10年でもっとも重要なイノベーションだ。リアルタイムレイトレーシングの登場はCG業界にとって聖杯ともいうべきものになる」と述べている。

 RTXは、レイトレーシングの処理向けに新開発したハードウェア「RTコア」と、AI(人工知能)によるグラフィックス処理を行う「Tensorコア」を組み合わせることで、レイトレーシングのリアルタイム化を実現。処理性能は旧世代GPUアーキテクチャの6倍まで向上した。レイトレーシング、AI、GPUの全てが進化したことで処理速度の向上に貢献している。

 また、データ転送速度が毎秒最大100GBのNVLinkによってRTXを2枚セットで利用することもできる。RTコアは、Windows向けのOptiXやDXR、Linux向けのVulcanのAPIを通じてアプリケーションから使うことが可能で、独自に開発することは不要だ。

 リアルタイムレイトレーシングがインパクトを与えるのは、ゲームや映画などのエンターテインメント業界にとどまらない。自動車に関して言えば、「リアルなCGが必要なのは、新車のカタログを作る時だけ」という考えも捨てた方がいい。2019年半ばから、3D CADでもリアルタイムレイトレーシングを使えるようRTXのサポートが始まる。最新のCG技術で自動車のデザイン工程も大きく変わっていく。

リアルタイムレイトレーシング、ディープラーニング、ハードウェアの進化により、グラフィックスの在り方を変える 出典:NVIDIA

データドリブン・シングルソース・プロダクション

 CGI(Computer Generated Imagery)のグローバルマーケットリーダーであるドイツのMackevision(マケビジョン)も、リアルタイムレイトレーシングに大きな期待を寄せる企業の1つだ。同社はエミー賞を受賞した海外ドラマ「ゲームオブスローンズ」などで視覚効果(VFX)を手掛ける。同作品はファンタジー小説が原作で、中世ヨーロッパのような世界観を表現するためにCGが多用されている。また、これまで20年以上にわたり3Dビジュアライゼーションの分野でも独自のソリューションを開発してきておりMercedes-Benz(メルセデスベンツ)、BMW、Land Rover(ランドローバー)、Audi(アウディ)、Fiat Chrysler(フィアットクライスラー)、Hyundai(現代自動車)などの自動車メーカーを顧客に持つ。

 Mackevisionは、データに基づく3Dビジュアライゼーションや視覚効果(VFX)を用いたクオリティーの高い映像、映画制作を行っている。そして、(1)3Dコンテンツ制作(2)ビジュアライゼーション分野におけるデジタルツイン戦略策定(3)人の心を打つようなユーザーエクスペリエンス(4)エンタープライズソリューションとのインテグレーション(5)人を引き付けるブランドストーリーの制作など幅広いサービスを提供する。こうした特色について、Mackevisionの日本法人であるMACKEVISION Japanでマネージングディレクターを務めるエリック・ヴォーガス氏は「データドリブン・シングルソース・プロダクション」と表現する。

データドリブン・シングルソース・プロダクションは、膨大な製品仕様、販売仕様に関するデータを集約し、さまざまな用途に活用できるようにする 出典:Mackevision

 自動車メーカーを例にとると、自動車メーカーでは、コンセプト開発からデザイン、設計、マーケティング、営業、アフターセールスまでのバリューチェーン全体を通し、さまざまなデータが、それぞれ関連性を持ちながら、日々更新されており、ビジュアライゼーションにおいても、こうしたデータの複雑さに対応していかなければならない。Mackevisionでは、「CoBa(Configuration Backbone)」という独自のソリューションを用いて、自動車メーカーをサポートしている。

 Mackevisionでは、データドリブン・シングルソース・プロダクションという基本概念をもち、一元的に管理されたデータから各タッチポイントやチャネル、メディアにビジュアルアセットを提供していくことで、グローバルで一貫した製品やブランドの演出を可能にしていくことを目指しており、競合他社とは一線を画したサービスの提供を行っている。

 先述したCoBa(Configuration Backbone)は、もともとMackevisionが自動車メーカーからコンテンツ制作の効率化を図るために自社用ツールとして開発されたものだ。特に自動車業界のコンフィギュレーションの膨大さは他の業種には類を見ない。長年の自動車メーカーへの支援によって培われてきたノウハウやツール群こそが、Mackevisionの競争力の源泉の1つとなっている。また、世界トップレベルのVFXプロフェッショナルチームを擁するMackevisionでは、ハリウッド級の映像作品やコンテンツ制作が可能だ。

NVIDIAの最新テクノロジーに対する期待

 リアルタイムレイトレーシングに代表されるCG技術の進化は、自動車の設計開発において“リアリティーのある美しい画像を生成する”という以上の意味がある。設計データから実物に限りなく近いビジュアライゼーションを行えるということは、デジタルツインの実現につながるからだ。デジタルツインと物理的な世界の情報を集めて、サイバー空間上に物理世界を全て再現する概念を意味する。デザインや設計のレビューから、顧客による車の購入検討まで、一貫してデジタルツインで行えるようになる。

 ヴォーガス氏は、「デジタルで作り込んだデザインを実物で確認するためにクレイモデルは必要だが、CGと設計データの連携が進めば、開発の80%まではデジタルで進められる」と語る。デジタルツインと自動車のデザインに関する好例の1つは、VRを活用したデザインレビューだ。MackevisionもNVIDIAによるVRシステム「Holodeck」や超高速処理を行う新たなリアルタイムレイトレーシングテクノロジーに注目している。このテクノロジーによって、国境を越えて離れた場所にいるデザイナー同士が、VRを使って世界で同時にデザインレビューを行うこともできるからだ。日本の自動車メーカーでも、日産自動車がデザイン部門でVR活用を加速させ、トヨタ自動車も既にHolodeckの試用をしており、各社が積極的に取り組み始めているようだ。

 こうしたニーズも見通して、RTXはVR用のヘッドマウントディスプレイと1本のケーブルで直接つなげることが可能なVirtualLinkを搭載した。プレスラインによる外板の陰影などをVRで確認するには、物理的に光を正しく表現するレイトレーシングが不可欠だ。また、デザインを修正したり、他のバージョンとすぐに見比べたりする作業では、RTXのリアルタイム処理が欠かせない。

自動運転技術のシミュレーションへのCG技術の適用

 ビジュアライゼーションにおけるデジタルツインは、自動車のデザイン工程や販売支援だけではなく、自動運転技術の開発まで広がり始めた。Mackevisionは、Robert Bosch(ボッシュ)に対して、CGをフル活用したシミュレーションで自動運転車向けの環境認識センサーの開発協力を行っている。

 障害物など自車の周辺環境を認識するためのセンサーを開発するには、さまざまな走行環境における走行データが必要だ。現実の世界では、昼夜、天候、走行速度など条件を変えながら走行データを収集するには膨大な時間がかかるが、最新のCGテクノロジーを使えば、走行条件を変更したり、センサーにとってクリティカルな状況をよりリアルに再現したりすることが、以前に比べてはるかに効率的に実現できる。そして、GPUによる物理的に正確な環境の再現するテクノロジーは、シミュレーションの世界でも十分に生かされている。ボッシュでは、シミュレーションで検知性能を作り込んだ後でセンサーの実機を試作し、量産までの期間を大幅に短縮することを狙っている。

 Mackevisionは、ドイツ自動車工業会(VDA、Verb and der Automobilindustrie)とも連携し、自動運転開発のシミュレーションにおいて、今後CG技術がどのようか活用できるか議論を始めている。また、Mackevisionは、シミュレーションに必要なCG制作もサポートしていく予定だ。自動運転車の信頼性を確保するには、何百万km、何千万kmという走行テストを重ねることが求められるが、公道走行では歩行者や他の車両と事故が起きる可能性が切り離せないため、シミュレーションの活用が急務となっているだろう。

 現在は、レンダリングやレイトレーシング処理の主流はCPUであるが、米国ハリウッドなど映画業界では、すでにGPUによるレンダリングが取り入れられ始めている。すでに観客は映像作品に対して目が肥えてしまっており、従来以上に高度なレンダリングが必要になるのは必然である。そして、RTXはムーアの法則を超え、処理速度は従来比で40%以上の高速化に成功したといわれており、その性能が高度なレンダリングの基盤になっているのだ。

 Mackevisionも、すでにGPUによるレンダリングの準備は整いつつあり、XRエクスペリエンスやリアルタイムソリューションの開発に関するGPUレンダリングのノウハウも蓄積し始めている。

日本事業強化、親会社であるアクセンチュアとも積極的に協力

MACKEVISION Japanでマネージングディレクターを務めるエリック・ヴォーガス氏。アクセンチュア・インタラクティブ・スタジオ東京にて撮影

 Mackevisionは、2017年10月に日本法人を設立し、日本におけるビジネスも本格的に開始しており、国内のサポート体制も強化する計画だ。ヴォーガス氏は「日本のお客さまに、データに基づくビジュアライゼーションソリューションや、魅力的なコンテンツなど、当社のサービスをご提供できることを心より楽しみにしております」と述べている。

 2018年2月、Accenture(アクセンチュア)はMackevisionの買収が完了したことを発表した。デジタル・エージェンシー組織であるアクセンチュア インタラクティブのデジタルサービスポートフォリオに、最先端のビジュアライゼーションが加わったことで、アクセンチュア インタラクティブは、次世代カスタマーエクスペリエンスの創出や、工業製品向け拡張現実アプリケーション(XRエクスペリエンスやリアルタイムソリューション)の提供体制を強化した。

 今後、Mackevisionは、アクセンチュア インタラクティブグループの一員として、自動車メーカーだけでなく、今後ますますパーソナライズされることが求められるような製品や分野に対して、アクセンチュア インタラクティブと協力し合いながら、ビジネスを拡大していく。

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提供:エヌビディア合同会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2018年12月5日