DMS2019 特集
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» 2019年03月04日 13時00分 公開

DMS2019:すごいでっしゃろ感はなくなった3Dプリンタ、久々に来たから感じた空気の変化 (1/3)

3Dプリンタ関連の展示ブースは、これまでは「設計・製造ソリューション展(DMS)」の一部だったが、今回から「次世代3Dプリンタ展」と銘打って独立した展示会として開催。工業デザイナーによる展示会レポートをお届け。

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]

 「設計・製造ソリューション展(DMS)」はモノづくりに関する大規模な展示会だ。同時に開催される機械要素技術展や3D&バーチャルリアリティ展などの展示会を合わせると東京ビッグサイトの展示空間のあらかたを占める規模なので、全部みて回ろうとすると1日では回り切れない。かといって3日間しかない開催期間中に何度も通うほどの時間も取れず、毎年「もう少し見たかったなぁ」と消化不足感の残る展示会でもある。

 ここ数年は都合が合わず参加していなかったが、今回編集部より声をかけていただいたタイミングで時間が取れたこともあり、何年か前にも寄稿したように、3Dプリンタエリアを中心に、担当編集とともに展示会場をのぞいてきた。

会場で配布されるレイアウト図の一部。このうち「次世代3Dプリンタ展」を取材した(クリックで拡大) 出典:リード エグジビション ジャパン

 3Dプリンタ関連の展示ブースは、これまではDMSの一部だったが、今回から「次世代3Dプリンタ展」と銘打って独立した展示会として開催された。とはいっても、DMSや機械要素技術展をはじめとした同時開催の他の展示会は、東西ホールの仕切りを取り払った大きな1つの面積の中で開催され、1つの展示会で全ての会場を見られるため、個人的には展示会としていくつも分ける必要があるのか疑問に感じた。

 主催者の視点で考えてみると、関心分野ごとの入場者数や属性を把握するための方策の1つということもあるのだろうが、「××展示会」ごとに入場手続きをする窓口も分けてあるのは利用者としては勘弁だ……。これは、面倒くさがりの筆者が「どうせ中は1つなんだから、まぁどこでもいいんじゃないの?」と、まずは行きたいブースに一番近い窓口に並んでは「こちらの展示会は、向こうの窓口で」といわれるので、入場するまでが結構ストレスだったりする、というこれまた個人的な部分のせいなのだけど。

 さて、出だしからいきなり文句を垂れる感じで横道に逸れたが、軌道修正して会場を歩いた印象を思い出してみよう。

 3Dプリンタ関連の展示では、数年前は新しいプリンタの紹介であったり、機器の性能向上アピールを前面に出した展示が主体で、その新たな性能により「こんなことができるようになりますよ」といった、未来の可能性を示唆するような訴求が多かった記憶だが、今回は大手ほど「3Dプリンタを活用して、こんなことをやっています」「顧客がこんなことに使っています」といった「今」を事例として紹介しながら、3Dプリンタを活用したイノベーションの相談相手としての存在感を訴求しているブースが多かった印象だった。

3Dプリンタのエコシステムが見えた

 Formlabsのブースでは、P&Gの剃刀製品ブランド「ジレット」による3Dプリントハンドルを組み合わせた、シェーバーのパーソナライゼーション事例が紹介されていた。「Razor Maker」という名称のこのサービスは、Formlabsのサポートで米国市場で既に導入されている。顧客は「Razor Maker」のサイトで3Dプリントで製造できる48種類からハンドル形状を選ぶ、その後素材やカラーを選び、形状によっては文字入れも指定しオーダー完了。2〜3週間程度でカスタマイズされたシェーバーが手元に届くという流れだ。

Razor Makerの展示

 高額、ハイエンドの製品、例えばスーパーカーやハイパーカーといったものの購入シーンにおいては、多くの選択肢の組み合わせでパーソナライゼーション・サービスを、以前から提供している。これは職人技などの製作コストを投入しても吸収できる製品だからこそできたサービスだった。

 パーソナライゼーション、マスカスタマイゼーションのサービスへの需要は、高額、ハイエンドの製品だけにとどまらず、今後裾野が広がっていくと予測しているが、Razor Makerは、いわゆるT字カミソリという安価な製品でのマスカスタマイゼーションを具現化させてみせたことは特徴的だ。パーソナライゼーションやマスカスタマイゼーションのサービスに対する3Dプリント技術の親和性を、生活者が認識する一歩となったのではないだろうか。

 ビジネスの視点で見てみると、ジレット側はシェーバーを『日用品からギフト商品に変える』ことで、購買単価を引き上げることを可能とするアイデアを探していただろうし、Formlabs側も同社が提供している、並列化と自動化によって製造効率を上げる3Dプリンティングの自動化システム「Form Cell」の運用実績を積み重ねていく、といったような両者の意図から生まれた、新しい市場を探るサービスともいえる。

 残念ながら現状「Razor Maker」は、米国内市場のみでの展開とのことだが、他のエリアへの展開も含めこのサービスがどのように育っていくのか、これからが楽しみである。

Formlabs Japanの新井原慶一郎氏(左)と筆者(右)

 Formlabsのブースでは他にも、鋳造用レジンやセラミックといったさまざまな成型材料を使った事例も展示されており、同社が素材開発にも力を入れている様子が伺えた。

 ブースでお話を伺ったFormlabs Japanの新井原慶一郎氏(同社マーケティング部 部長)によると、主力機の「Form2」は日本国内での販売実績が1000台を超えたとのことだ。「展示会できれいなお姉さんをブースに立たせなくても、関心を持った人が多く訪れる」という話もされていたが、ユーザーが増えた分世の中に情報も広がり、要望などのフィードバックや、ユーザーの使用事例の情報も多く集まっていることが伺える。

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