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» 2019年06月11日 06時00分 公開

電気自動車:トヨタの超小型EVは「オープン価格で販売」、電池活用まで事業を企画 (1/3)

トヨタ自動車は2019年6月7日、東京都内で会見を開き、電気自動車(EV)の普及戦略を説明した。超小型EVを活用した新たなビジネスモデルの構築や、さまざまなEVの低コストで効率的な開発とグローバル展開、電池の供給体制整備や電池の付加価値を最大限に生かすビジネスモデル構築などに取り組む。

[齊藤由希,MONOist]

 トヨタ自動車は2019年6月7日、東京都内で会見を開き、電気自動車(EV)の普及戦略を説明した。超小型EVを活用した新たなビジネスモデルの構築や、さまざまなEVの低コストで効率的な開発とグローバル展開、電池の供給体制整備や電池の付加価値を最大限に生かすビジネスモデル構築などに取り組む。

2020年代にグローバル展開するEVのモックアップ(クリックして拡大)

 同社は2017年12月に電動車普及のロードマップを発表した。その中では、2020年からEVを本格展開すること、2025年ごろまでに全車種に電動グレードを設定することを盛り込んだ。また2030年にハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を450万台以上、EVと燃料電池車(FCV)を100万台以上販売する目標を掲げていた。2019年時点では、電動車全体の普及ペースは2030年の目標に対し5年程度先行しているという。

 EVのグローバル市場は、2018年に121万台という規模だった。このうち中国が70万7800台、米国が22万8600台、ノルウェーが4万6000台を占める。いずれの国でも免税や減税、購入補助金などの政策に支えられて市場が形成されている。

 今後の本格的なEVの普及に向けて、会見に出席したトヨタ自動車 取締役副社長の寺師茂樹氏は「EVを作って買っていただくという従来の発想にとらわれず、協調の姿勢で取り組む」と語った。EVのビジネスモデルは駆動用バッテリーが鍵となる。耐久性の高い高性能な電池で商品力を向上することを前提に、電池の残存価値を生かした中古車の販売や車載用以外での用途でのリユース、最終的なリサイクルまでを実現する。

トヨタが考えるEVのビジネスモデル。電池の性能向上と回収、残存価値の査定、中古車としての利用や車載用以外での活用がカギを握る(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

超小型EVは「自動車業界初のオープン価格」

 寺師氏はこれまでEVが減点方式で評価されてきたことに触れた。「EVをたくさん売ろうということを考えた時に、従来のエンジン車と比べられた。走行距離が短いことや、給油と比べて充電は時間がかかることなどが減点対象となり、これを改善すれば売れるという議論があった。しかし、毎日長距離を乗るわけではない人、充電時間の長さにはこだわらない人もいる。EVのいいところを加点方式で生かすことを考え、サイズが小さく、移動距離が短くて構わない移動体として見れば、EVが使いやすい場面がある」(同氏)。

 こうした減点方式で見られることが多い市場である日本に向けて、トヨタ自動車は軽自動車よりも小さい車両サイズの超小型EVを開発している。2020年に発売する予定だ。政府も、超小型モビリティに関する法整備や安全基準づくりを進めている。これまで超小型モビリティは走行可能な地域が限られていた。

2020年に販売を予定している超小型EV(クリックして拡大)

 市販予定の超小型EVは、乗車定員2人で走行距離は100km、最高速度は時速60kmだ。買い物などの日常的な移動や、業務での巡回、訪問など近距離移動に限られたモデルとなるが、「小さいからといって割り切るのは許されない。乗用車並みに近づける努力が必須だ。運転支援システムなどの安全装備の採用も考えている。安心感を持ってもらえる車体の強度と、利便性のある室内空間のバランスの取り方は難しい。近距離移動でも強度が頼りないクルマには乗りたくないはずだ。かといって、スペースが限られるのでは使ってもらえない」(トヨタ自動車の説明員)。乗り心地などの観点からインホイールモーターは採用しない考えだ。

 電池の付加価値を活用する新しいビジネスモデルと超小型EVは、トヨタ自動車の中でかかわりが深い。超小型EVは家庭用蓄電池と同等の容量のバッテリーを搭載する。この電池をそのままリユースしたり、新品でも車載用以外で活用したりするという考えだ。「プリウスPHVを例にとると、電池は10年間使った後も75%の性能が残る。これをクルマごと廃棄するのはもったいない。クルマの構造を含めて共有できる人がたくさん集まり、電池をしっかりと使ってくれる仲間が増えれば、地域でEVの強みが出てくる。その極みが超小型EVだ」(トヨタ自動車 トヨタZEVファクトリー チーフエンジニアの豊島浩二氏)。

 超小型EVの販売から廃棄までのさまざまな分野でパートナーと協力する方針で、現在は40の企業や自治体と「思いを共有」しており、「彼らと協力しながらビジネスモデルの確立を目指す」(豊島氏)。このため、超小型EVの価格設定も従来と異なってくる。豊島氏は「自動車業界で初めてのオープン価格となる。ビジネスとクルマがセットだと考えているので、クルマの後ろにあるビジネスで収益が上がるのであれば、超小型EVは道具として安く提供することができる。ビジネスによって価格は変わると考えている」と説明した。

 車道を走らない歩行領域向けの電動モビリティも開発する。立ち乗りで移動するタイプや、電動車いすタイプ、手動の車いすに連結して電動化するタイプもそろえる。電動アシスト付き自転車のような取り外し可能なバッテリーで駆動する。立ち乗りタイプは2020年に、電動車いすタイプと車いす連結タイプは2021年に発売する予定だ。

立ち乗りタイプの電動モビリティ(クリックして拡大)
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