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» 2019年06月13日 06時00分 公開

イノベーションのレシピ:生産現場とベンチャーが直接対話、日産のオープンイノベーションは工場から (1/3)

日産自動車とINCJは2019年6月12日、日産自動車 横浜工場(横浜市)において、社内向けの「ベンチャー企業展示会」を開催した。横浜工場にはパワートレインの生産技術開発本部が在籍する。現場に立つメンバーが直接会話しながらシーズとニーズをすり合わせるため、ベンチャー企業7社を横浜工場に招いた。2018年に続いて2回目の開催となる。

[齊藤由希,MONOist]
INCJ 代表取締役会長兼CEOで、日産自動車 取締役の志賀俊之氏(クリックして拡大)

 日産自動車とINCJは2019年6月12日、日産自動車 横浜工場(横浜市)において、社内向けの「ベンチャー企業展示会」を開催した。横浜工場にはパワートレインの生産技術開発本部が在籍する。現場に立つメンバーが直接会話しながらシーズとニーズをすり合わせるため、ベンチャー企業7社を横浜工場に招いた。2018年に続いて2回目の開催となる。

 参加したのはINCJが選定した光コム(計測技術)、イノフィス(パワーアシストスーツ)、ABEJA(人工知能技術)、Ridge-i(人工知能技術)、HALVO(廃液処理)と、日産自動車が招いたTobii Technology(視線検知技術)、ATOUN(パワーアシストスーツ)だ。このうち光コムとイノフィス、ABEJAは2回目の出展となり、これまでの日産自動車との協業の進展もアピールした。

現場のオープンイノベーションは現場でやろう

 ベンチャー企業と大企業が出会う場としては、さまざまな企業が出展、来場する大規模な展示会があるが、具体的な協業やビジネスにつなげるのは難しい。その理由としては、展示会に行ったエンジニアが現場で困っていることやニーズを把握しているとは限らないという点や、展示会のブースでめぼしいベンチャー企業に出会っても親密になるまで時間がかかるという点がある。また、業務との兼ね合いで展示会に出向くのが難しい社員もいる。

 社内向けのベンチャー企業展示会は、現場を知るエンジニアがベンチャー企業と直接話し、ベンチャー企業に製造業の課題をダイレクトに伝えるために始めた。横浜工場の敷地内にある事務棟の一角を会場に、技術員や技能員が業務の合間に自由に立ち寄れるように1日がかりで開いた。

 参加した生産技術開発本部のメンバーに対しては、オープンイノベーションの価値や、ベンチャー企業の中に生産技術の課題を解決するアプローチがあることをベンチャー企業展示会を通して知ってもらい、自分の部署に持ち帰って検討させる狙いがある。

現場の関心を喚起

日産自動車の村田和彦氏(クリックして拡大)

 「現場の開発は現場でやろうという体制」(日産自動車 常務執行役員でパワートレイン生産技術開発本部長の村田和彦氏)を受けて、前回の内覧会には現場に役立つ技術を探す技術員や技能員が関心を寄せた。外の展示会になかなか行けない中でベンチャー企業の技術を生で見られたことが好評だったという。

 今回の開催は、前回の出展を受けて実際に日産自動車の社内で動いている案件があることをアピールし、「こういうものって成果があるんだね、と思ってもらうようにした」(村田氏)。

 オープンイノベーションに関して、「自前主義からの脱却」「外部の技術を活用して開発を加速」といったことは広くいわれている。INCJ 代表取締役会長兼CEOで、日産自動車 取締役の志賀俊之氏はパワートレイン生産技術開発本部にとってのオープンイノベーションの重要性について次のように説明した。

 「開発、販売、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)など、自動車メーカーの得意分野だけではやっていけない状況にある。生産現場も同じだ。知恵と改善で効率を上げているというプライドがあり、そのための教育も受けている。しかし、可変圧縮比エンジンにはミクロン単位の精度の加工が不可欠で、その精度に対応した計測技術が求められるように、従来の改善の延長線上にない技術が必要になっている」(志賀氏)

 出展企業は、INCJと日産自動車の双方の事務局が工場の現場の声を拾いながら選定した。前年は初回で手探りだったこともあり、「社内にヒットしたところもあれば、現場にとって優先順位が高くない分野もあった。今回は事務局同士で相当すり合わせて選んだ」(村田氏)。

 参加企業が手掛ける技術はさまざまだ。「(用途や効果が明確な)即効性のあるイノベーションと、(導入や実装に向けて)中長期的な開発が必要なものと両方が出展した。まずはすぐ効果が見える技術を取り入れて、オープンイノベーションの効果を実感してもらいたいという狙いがあった。それを、中長期的なオープンイノベーションにつなげる引き金にしたい」(村田氏)。

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